御来場下さった全ての皆様、本当にありがとうございました。
最後まで公演が続けられたのは、お客様のおかげです。感謝で爆発しそうです(*´ω`*)
お手紙や感想などで
「所長が見ていた景色ってどんな景色?」
という質問があったので、説明しようと思います(*´ω`*)
皆大嫌い所長さん!
サイコ野郎なのか?極悪人なのか?
そもそも何考えてんだかわかんない!!と思われたお客様もたくさんいると思いますゆえ、説明しやしょう。
まず、台本上に書かれてる台詞から、所長のなんとなぁくの目的を探ってみます。
とりあえずパッと見で使えそうな、所長の台詞たちを並べてみます。
「君の真っ直ぐなところ好きだったよ」
「ここでは私は所長で、お前の上司だ」
「博士の事は私が誰よりよく知っている」
「私の目的はファーゼスト人を売りさばくこと」
「君たちにとって愛とは一体なんだ?教えてくれ、実に興味深いことなんだ」
「ファーゼスト人には愛は無いと思ってた」
「それもひとつの愛の形だろ?」
「殺すのか?私を」
「リブートだ」
次に、所長の周りの人たちの使えそうな台詞を並べます。
「所長に言われたようにモグラを殺せばよかったのか?(アニ)」
「今はそんなこと関係ない(博士)」
「愛の形はひとつじゃないはずよ(博士)」
さぁ、並べてみると不思議ですね。
所長、愛と博士の話ばっかりしとる!!
今回の所長、基本的に嘘つきという設定にしました。
大袈裟に言えば、脚本に書かれてる台詞全てに裏があると設定したわけです。
例えば
「好きだった」には「今でも好き」
「博士のことを誰よりわかってる」には「わからなくなった」
「目的はファーゼスト人を売りさばくこと」には「目的は別にファーゼスト人を売りさばくことではない」
というように、思ってる事と出てくる言葉が全然違う人って事ですね。
何故そうしたかというと、脚本上、所長の言葉が全部本当だとすると、すごく巨大でシンプルなキャラクターになってしまう気がしたからです。
それも悪くないのですが、
「愛と人間と人間ではない人間に近い生命」
が中心にある物語なので、今回は複雑で、ミニマムで、人間っぽい人物像にしたかったんだと思います。
『思ってる事と出てくる言葉が違う』
というのは、ザ・人間って感じですよね。
好きな人に素直になれない。
嫌いな上司に作り笑いする。
本音で接する人間が少ない。
こんな感じのよくいる普通の「人間」です。
一旦まとめると
所長はファーゼスト人を売るのが最終目的ではなく、未だに博士に執着し続けてる、愛の話ばかりする人。
という感じになります。
お、うっすら人物像が見えて来ましたね。
次に、所長に起こる出来事を並べます。
ファーゼスト人の脱走、博士の裏切り
博士の出奔
ファーゼスト人との会話
博士帰還
自爆
これも博士まみれです。
さぁ、今度は箇条書き?で、所長ストーリーを書いてみます。
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所長と博士は昔いい仲だった事があり、モグラを殺せと命じたあたりから不仲になり決別。
ファーゼスト人脱走に際して、博士の裏切りに気付くが、脅すことしか出来ず、博士はいなくなる。
職員から報告を受け、博士の関与を確信、博士がファーゼスト人の為に自分の元を離れた事に気付く。
その後ファーゼスト人に八つ当たり。
煽って煽って煽りまくる。
この辺りから、本当の目的が研究からズレ始め、博士、及び愛についての執着に変わる。
「愛とは一体なんだ?」
はファーゼスト人に対する唯一の、本心からの言葉。
ドクターを脅した際に、フレートが命懸けで仲間を守る姿を見て、愛に近いものを感じる。
同じくドクターを脅した際に
「妹をこれ以上苦しめたくなかったから毒殺しようとした」
というドクターの言葉を受け、言葉では反発しながらも、その愛の形を認める。
既に博士にバレているファーゼスト人移送日をズラさす決行した理由は、そのタイミングで博士が来る事がわかっていたから。
この時点で所長の目的は
「博士に殺して貰うこと。それが博士から自分への愛の証拠である」
に、変わっている。
博士が研究所からいなくなる前までの目的は
「ファーゼスト研究と販売」
いなくなった後は
「愛とは何か知りたい」
博士が戻って来る時には
「殺してほしい(愛してほしい)」
と、劇中で目的が三段階に変化しているということですね。
一旦は博士に銃を向けられるが、博士はアニの説得により銃を降ろす。
殺してもらえない=博士からの愛を完全に失ったと自覚
「あーあ、馬鹿馬鹿しい」
という言葉の裏には
「僕は全てを失った」
という意味があります。
全ての可能性を失い、所長はファーゼスト人を人質にとり、ファーゼスト人を撃ち殺します。
ファーゼスト人はそれぞれに死ぬ間際、哀しくも美しい愛の形を見せます。
死して愛を手に入れたファーゼスト人を憎みながら、所長は自爆の道を選びます。
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と、ここまでが僕が勝手に作った所長ストーリーです、、、が!!!ここからです。
今回のスターダストインフェルノというシリーズは
"同じ世界を繰り返しながら、運命に立ち向かう"
という大きな設定があります。
「リブートだ」
という台詞、所長が繰り返しに気づいているのか?
それとも輪廻的な意味でのリブートなのか?
僕は"気づいている"という設定にしました。
せっかくリブートという台詞を言うのだから、ただ言うのではなく、何か中身が必要だと考えたからです。
アミという大きなパソコンがあるとして、常に不変であるプログラム=人間。
可変プログラム=ファーゼスト人。
だと仮定して、お客様(スペクテイター)はそのパソコンのモニターを見ているとしましょう。
不変プログラムである以上、博士の愛を手に入れられる事はありませんが、何度も違うルートを通りながらリブートを繰り返している所長。
つまりラストシーン、皆が起爆コード解除をしてる様を見つめる所長は
「この景色、これで何度目だろう」
とか、そういった事を考えています。
心理的には、可変プログラムであるファーゼスト人に対する憧れと絶望感という感じですね。
これに外見的要素、例えば立ち振る舞いや手クセ、リアクションをやり過ぎないギリギリくらいにキャラクタライズして、中身はミニマムで人間っぽい、外見はキャラクターっぽい、台詞は全体は自然っぽいけど、
部分的に演説的、という構造にしました。
あと普段あまり悪役をやらないので、一切同情できないような、徹底的に悪い人をやってみたかったので、「常に相手の嫌がる事をする」というテーマでやってました。
嫌な言い方、嫌な距離感、嫌なボリューム。
見て欲しいであろうタイミングでは、相手を見ない、
見て欲しくないときはじっくり見る、相手が強く出たら受け流し、弱さを見せたら徹底的に追い込む。
絶対笑っちゃいけない時に笑い、普段は全く笑わない。
という、自分が「こういう人周りにいたらすごく嫌だなぁ」と思う人物像です。
この人、大嫌いだわぁって思ってもらえてたらいいな(*´ω`*)
いやー、思ったより長くなりましたが、これが所長の作り方です。
ですが、作品と役はお客さんのものですから、僕がどう考えて作ったのかは関係ありません(*´ω`*)
直接観て、感じて下さったものが所長の人物像です。
サイコ野郎でも良いですし、わけわかんない人でも全然OKです!!(*´ω`*)
個人的には、博士に撃たれて死ぬルートがあれば良かったなぁ。。
所長以外誰も死ななくてみんなハッピー。
あ、でもそれだと博士が嫌な気持ちになっちゃいますね。。
僕はシリーズ完結編のみの参加でしたが、千秋楽のハルカとエマのシーンは奇跡の様なシーンでした。
岡くんなのかハルカなのか、しばまりちゃんなのかエマなのか、役者と役が現実と虚構を行ったり来たりしてる感じで、1年間積み重ねたキャラクターや、辛かった事、楽しかったこと、全部溢れている様でした。
「これが、愛。やっとわかった」
という台詞で嗚咽が出そうになりました。
岡くんはスタダスを愛してたんだなぁって。
きっとあのシーンは、お客さんにも届いてると思うなぁ。。
だってあれは確実に本物の気持ちだもの。
良いシーンだったなぁ。。
こんな奇跡みたいな瞬間があるから、舞台っていいなって思います。
涙腺ぶっ壊れおじさんの涙腺は完全に崩壊したぜ!!笑
というわけで、長々読んで下さった皆様、ありがとうございます。