私の修業時代 第28話 はじめての休日
あらすじ
1987年昭和62年に高校を卒業した私は、横浜の調理師学校へ入学し、スペイン料理店でアルバイトをしながら少しずつ新生活になれて来た頃には就職活動。不採用になったりいろいろ経験し無事に就職先も決定したのでした。
そして入社式の日を迎え、
新入社員の面々と共に成長していくのでした。
ホテルに就職して初めての休日。
横浜駅西口にある元バイト先のスペイン料理店に伺いました。
スペイン料理店のコックの土岐さんもオフの日で、待ち合わせてスペイン料理店のディナーと洒落込みました。就職祝いに奢ってもらったんですが。
土岐さんとはバイトを辞めてからも、たまに連絡をさせてもらったり、お宅にお邪魔したりしていました。
食事をしながらサテライトホテルでベーカー部門に所属してる事を話しました。
焼成や仕込みの計量や下準備を自分はやってて、
他の新人の草刈さんや伊南さんがケーキの仕上げをチーフと一緒にしてどんどん上達しているように見え、、、そんな相談のような近況を話したのでした。
土岐さんは、
『お菓子のいちばん大事なのは、生地だと思うぞ。
スポンジや生地自体が失敗したら取り返しがつかねえだろ?
料理も肉や魚の火加減が命だ。焦がしたらどんなにソースや飾りでも誤魔化せねぇよ。
クリームを絞ったり飾りは失敗したらやり直す事が出来るじゃん。でも焼いた生地はやり直せねぇべ? 』
『トミタカよぉ〜、ケーキの仕上げはいつでも練習できるぞ、仕上げはセンスだからな。』
『センスっすか?、はぁ…。』と私。
『土岐さん、随分お菓子の事に詳しいッスねぇ?』聞くと今は、菓子職人の女性とお付き合いしてるらしいんですよね。どおりで詳しい訳です。
久しぶりに来た元バイト先のスペイン料理店。サテライトホテルのベーカーへの道も、方向的に間違ってない?ようで心も胃袋も満たされました。
お店のスタッフや従業員からは、
『就職おめでとうーー!』
『どう?サテライト頑張ってる?』
『お前は太々しいトコが有るから、謙虚にやれよ!』
『サテライトに就職したの!?学校の近く!遊びに行くよ〜』など、皆んなに激励され有り難いものです。たった1年間でしたが共に働いた仲間達。
実を言うと、
大分の水産高校から一緒の時期に3人が上京しました。
1人は首都圏の大手スパーの鮮魚部門に就職。もう1人は関東北部の地方百貨店のこれも鮮魚部門。
あとの1人は調理師専門学校に入学した私。
お互い上京前は『一緒に会って遊ぼうぜ』と励ましあったんですが、、いざ上京して連絡をしても皆んなそれぞれ忙しく1度も会うことも無かったんですよね…。まあまあ仲の良い友だちかと思ってましたけど。
その後二人とは連絡すら取ってなくて、、
『友達とは、そんなものか…』と思っていましたから。
横浜に来て一年が経ち、
やっと自分の居場所を、やりたい事や仲間を見つけたような、そんな確信?が少しずつ芽生えてきました。
この頃はまだ菓子の世界には腰かけのつもりでしたが。。