ファースト・ラビット2 | Commentarii de AKB Ameba版

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AKBとかその周辺とか

words

   傷つくたび/大人になるよ

   涙流して/胸痛めて

   それでも夢をあきらめない

   最初のうさぎになろう

 目をつぶると光景が浮かぶ。

 広い草むらを一心不乱に走り続ける子うさぎ。

 それを狙う飢えた狼や鷹、銃を構えた猟師の存在を知ってか知らずか、子うさぎは駆ける。

 先頭を走る「ファースト・ラビット」とは、最初に犠牲となるうさぎでもある。流れるだろう血は、夢を見る代償。

 かわいらしい振付と裏腹に、この曲からは残酷な匂いが微かに漂う。

 それは決して楽しいことだけではないであろう世界を一心に走り続ける彼女たちへの、秋元先聖先生からの教え。

 それでも、最後まで走れ。飛べ。駆けろ。

 

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 抽選、まさかの3巡。

 3年前、4巡で呼ばれたときは駆け出しそうになってお兄さんに止められたんだっけ。下手最前に座って、渡辺と見つめ合った(と思ってる)夜だった。

 注意されないように逸る足をぐっとこらえて、がらがらのシアターに入る。

 

 上手最前。

 目の前には鉄のバーとカーテンだけ。

 すげえ。やっぱりこの景色はすげえ(ああ、3年前にはこのバーはなく、最前の椅子はもう少し前だった、何て嫌みなことは言いますまい)。

 

 目の前の幕が開き、マシンガンのようなビートが胸をぶち抜き、はじまった

   PARTY!

 それからの2時間。やっぱり人生最短の2時間でありました。 

 

 Only today。

 なんか琴線に触れるんだよなあこの曲。いろんな場面が頭に浮かぶ。大画面で見たリクアワのTeam 4。不遇だったTeam BII。奇しくも前回下手最前に座ったときにもセットリストに入っていた。あの時は不意にこみ上げるものがあって、思わず泣いちゃったんだよなあ。今回はまさかなあ...

 ってやっぱりじわっと涙ぐんでくるから不思議。最前+Only todayの組み合わせは鬼門と憶えておきましょう。

 

 前回はほとんど名前も分からなかったので、今回は全員の姓とアー写だけは憶えて行きました。おかげで個体識別がかなり効く。

 浅井稲垣梅本黒須佐藤庄司鈴木田口田屋。

 長友播磨本間前田道枝武藤安田山内山根。

 安定して可愛い浅井。まるで首の長いお人形のような本間。べっぴんだがKSGK臭のする田口。ちょっと西野を彷彿とさせる田屋。ちょっと相笠を彷彿とさせる通枝。

 やっぱり写真よりみんなずっとずっと魅力的だ。しかも目の前。これは補正がかなりかかってるぞ。

 額から飛び散る汗のしずくまで目の当たりした日にゃ、細かいこたどうでもいいんだよ、って事になりますよ。

 

 だから「スカひら」のひらりが足りないとか、「ガラス」でスカートの巻き付きが決まってないとか、そうゆうことは言わない。

 あと研究生なんだから恥ずかしがらずに自己紹介でちゃんとキャッチフレーズやれとか、もっとヲタを信じて前置きなしでふってこいとか言うのも止めときます。

 

 それよっかすごいの見ちゃった。

 

 僕前回何を見てたんだろう。

 生意気にも、

 こういう時は誰かを見る、のではなく焦点を深くする感じで、全体を見る。幸いステージのセンターがほぼ全て見られる位置だ。視界の中に見るべきメンバーがいればセンサーが反応するはず。

 Team 8の時は、M1、PARTY!の初っぱなで「誰だありゃあのポニテは?」ってのが横道だった。誰を見よう、と迷う間もなく、視線を奪っていった。

 

 うーん。

 そういうメンバーは、どうやらいなさそう。

 だって。「いなさそう」じゃねえよ。節穴かお前の目は。

 

 山内瑞葵を見ろよ。 

 

 いや、ホント前回どこを見てたんだろう。すごい子いたじゃん。

 立ち見2列めだったから?

 そんなの言い訳にならない。

 

 いや、何かを感じてはいたんだって。一応初見で目に付いたメンバーで、

 後半おろおろしていたら、にっこり微笑んでくれてほっとした。

 とだけ書いているんだから。今となっては何が言いたかったのか、自分でもわからん。わからんが、何かを感じてはいたんだって。

 

 今日は場所がよかった。最前で、かつ上手は彼女のポジションのようだった。

 後半、「小池」は山根を見てたんだよ。トロンとしてちょくちょく釣ってくるずんちゃん。でもちょいちょい目に飛び込んでくるんだよ何かが。コミカルな動きの端々に引っかかる何かが。

 で、「制服」から「涙売り」ではもう目が完全に奪われていた。

 

 動きのダイナミックさ。

 止まった姿の真っ直ぐさ。

 次の動作に移るまで、ぎりぎりまで動かずにいるその余裕。

 過剰なジャンプと制止。しなやかな筋肉への信頼感。

 

 そしてその表情。

 「涙売り」の薄暗闇の中で、彼女は笑った。

 「涙売り」の深い深い絶望のさなか、笑っている彼女を確かに見た。

 

 何度か書いたけれど「涙売りの少女」とは、少女売春のメタファー。

 Dark sideの極北のような曲である。

 自分を「売る」ことでしか真っ暗闇から逃れることのできない少女を、山内は一瞬であるが笑顔で表現した。絶望を表す冷たい笑顔。

 

 目が合った気がした。 

 

 直感的にわかった。時間にしたらほんの数分だった。

 これを、この場所でこうやって見ることは、もう恐らく二度とないことを。

 息がかかるほどこんなに近くで、まなざしを交わしながら彼女を見ることは決してないだろう。

 その数分、心臓を掴まれていた。

 

 田野ほど完成はされていない。西野ほど無邪気ではない。石田ほどエレガントではない。横道ほど切実ではない。都築ほどクレイジーではない。

 (あと茉夏ほどかわいくはない)。

 でも何か間違いなく別の何かだった。

 

 この人をもっと見たい。「UZA」とか「Beginner」とか。

 と思ったらもうあるんでやんの。まあみんな思うことは一緒だわね。

 

 でそれら見て思った。やっぱこいつらかわいくない。

 とくに16期の「や行」。

 

 ああ、やっぱりそこに行かなきゃ会えない人が今でもそこにはいっぱいいるんだねえ。