気が付いたことの記録。
私には「見張られているのが怖い」と思うトラウマがあるようだ。
実は、クララのアパートの隣の部屋はしばらく空き家だったのだが、最近誰か引っ越してきた、どうやら男性らしいという以外情報はない。
なにぶん、家賃の安いぼろアパートなので、けっこう音が響く。
その生活音からして、隣の男性が、なぜか24時間ずっと家にいるようなのである。
平日、休日おかまいなくである。
たまに出かけるようだが、1、2時間で帰ってくる。
ということは、つまりクララの生活音も隣に筒抜けということ。
多分お互い思っているはずである。
「隣の人、なんで平日の昼間なのに家にいるの? キモチワルっ!」
隣の人が引っ越してきてから、クララの心休まる場所がなくなった。
テレビの音は小さく、
タンスはそっと開け、(開けたものの、音がするのが怖くて閉められなくなることもしばしば)
そっと移動する。
逆に隣の音(足音とか、扉を開ける音とか)がすると「ビクッ」
となる生活を送っている。
さらに加えてもう一つ、
会社の産業医から生活の記録表を付けるように指示された。
これはうつ病等で休職している人がよくつけていることは知っていた。
何時に起床して、なんじに食事をして、どこに出かけて……ということを記録することで生活のリズムが整ってきているかなどを把握するのだ。
が、正直クララはつけたくない。
産業医からは「そんなに難しく考えることはないですよ。一日の終わりにちょっとつけるだけでいいんですから」と言われた。
小さな記録でも、毎日つけなくてはいけないというのは、クララの特性からして相当ハードルが高い。
だが、本当の問題はそこではなく、
自分が何時に起きて、何時に食べて、どこへ行ったか……それを24時間記録して誰かに開示しなくてはならないと事実が恐怖で絶望的な気分になった。
毎日を好きなように生きるのと、
毎日を好きなように生きていい、ただし、記録して開示すること。
では、まったく違う生活になると思う。
この心理を利用したのがレコーディングダイエットだろう。
家計簿をつけると無駄遣いしなくなるというのも同様。
その「監視」を生活すべてに置いてつけられている感覚がして。
重い気持ちで、会社の面談から帰ってきた。
鎖でつながれた気分だった。
もちろん、私の休職中も他の社員は働いているわけで、私も休職している以上、早く復帰するために最大限努力せねばならず、生活を記録するくらいのことを拒否できる立場でないことは重々わかっている。
それでも、なんだかものすごく気分が重くて、
隣の音に脅えながら、部屋で1人考えていたら、ふと気が付いた。
私は
「見張られている」ことにトラウマがあるらしい、と。
他人の目を異常に意識してしまう。
よく
「あなたが思うほど、みんなあなたを見てない」と言うが、
私に言わせれば、
「かといって、まったく見てないわけでもない」
目立たない行動をしていればとくにみられることもないかもしれないが、
おかしな行動をすれば間違いなくみられる。
だからおかしな行動はしないようにする。
発達障害の特性なのか、他人の顔や名前や服装を覚えられない私に言わせると、
「他人はけっこう見ている!」
会社の噂話を聞いていると、あの人は服が〇種類しかないの、鞄を変えたの、「よく見てるな~!」と感心するし、少し恐ろしくなる。
私にとって他人の目とは「私がおかしな行動をしないか見張る目」なのである。
元をたどれば、多分母親に行きつく。
母親の監視が、他の母親と比べて常軌を逸していたかは定かではないが、
母親の目線が私には辛かったらしい。
常に見張っておいて、悪い所があれば指摘し、
いいところがあれば、それも指摘し、さらに上の課題を課す。
そんな風に思っていたらしい。
前回のレイさんのヒーリングで、改めて「人生の中で印象に残っていることはなんですか?」と聞かれて、
浮かんだエピソードをいくつか話した中に、人生で一度だけ家出をした話があった。
大学生の頃、私は朝が苦手で、大学生は朝から授業がない日もあるし、あってもある程度ならサボっても単位は取れたので、いつも昼過ぎまで寝ていた。
正確には、家族みんなが起きる時間に起きることができず、
毎朝、起きるタイミングを逃し、
「娘の望ましくない行動に怒り心頭」の母親に脅えるあまり部屋からでてこれなくなる日が多かった。
母親の中では、「朝は全員そろって朝食を取り(理想としては朝食前にランニングなど一仕事はさむともっとよい)気持ちよく一日を始めるべきであり、1人だけダラダラ寝ているのはみっともなくありえない」
らしかった。
私も起きられればよかったのだが、なぜか起きることができなかった。
なので、母親が毎日不機嫌で、父親に
「自分が言っても聞かないから、お父さんから叱ってくれ」と頼んだところ、父は私を擁護したらしく、
両親の仲が険悪になり、プチ家庭内別居状態になってしまった。
すべての原因が私にあり、
私さえいなければこの家庭は幸せであると思った私は家を出た。
……お金がなくて、すぐに戻ったけど(ふがいない)
このエピソードからなにがわかるかと言うと、
私は小さい頃から生活態度がだらしなかったということ。
そんな私を母が許せなかったということ。
私がいろんな人に「頑張っている」と言われても、信じきれないのもこの辺に原因があるのかもしれない。
そもそも朝も起きれないような人間のどこが「頑張っている」のか理解できない。
だから生活時間を記録して開示しろなんて言われた日には、
「ちゃんとした生活でないと、怒られる」と脅えてしまうのだ。
隣の音に脅えるのは、母親の生活音に脅えていた名残だろう。
(母親がいなくなった途端、体が軽くなって部屋から出てくるので、それを「感じが悪い」とさらに怒られていた)
いつも緊張していると感じる理由もここら辺にあるのかもしれない。
思えば、
私は心の底から、「安心できる」と思えたことがあまりないのかもしれない。
そして「自由」も、レイさんのヒーリングのテーマに出てくることがあるのだが、クララは自由がよくわからない。
「でも結局制限された自由で、おかしな行動をしたらすぐに剥奪されるんでしょ?」と思っている。
学校の「自由時間」や「自由研究」なんて実際にはちっとも自由じゃない。
自由とは息をするように空気が読める人間にだけ与えられるものだと思っている。
「誰にも干渉されない」
「誰にも怒られない」
「誰も見てない」
時間と空間が欲しいなと、ふと思った。
それにしても、私は独身の1人暮らしで、
結婚している人やましてや子供がいる人は『1人の時間』なんてない人も多く、
(クララの両親も1人の時間がほとんどない人生だった)
辛くないのかなと思う。
乳児を抱えた奥さんが旦那さんがいる時間に「自販機に行ってくる」といってほんの数分の『1人の時間』を味わう、ってエピソードがネットに上がっていたけど、「辛そうだな」と思った。
つくづく、結婚無理だな~と思うクララなのである。