それでも僕はまた君に恋をする4 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

 

古い時代のこと全然わからなくて口調とか一人称とか二人称とか調べまくった、知識ないって辛い。

衆道ってやつは武士同士での恋愛の言葉みたいですね?

いやよくわかんないんだけど…

なんか同性愛は室町から記録があるとか徳川綱吉は有名でとか色々出てきたけど読んでも右から左で…

は~…やっぱわたし現代しか興味ないわ…。←

 

ていうか長い…?

回想で終わると辛いかなと思って…失礼しました…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

物心ついた時から前世の記憶が少しずつ蘇るようになっていった。

 

夢で見たり、ふと白昼夢のように思い出したり。

 

それらはいつだって唐突で、最初こそ戸惑ったが懐かしさと切なさを伴った。

 

そしてどうにも出来ない彼への恋心が積もっていった。

 

ちっぽけな胸に収まる筈のない狂おしい程の愛おしさは未だにパンクすることなく膨らみ続けていて、

 

人間ってやつはどこまでも欲深く、人を想う気持ちに限界などないのだとまざまざと思い知らされている。

 

 

 

俺の一番古い記憶は『旗本』の俺と『豆腐屋』の息子の彼だ。

 

徳川家がこの世を統治していた時代のこと。

 

齢が12の時、2つ年下の彼は俺の住む町に越してきた。

 

名前や年齢なんてものは時代によってそれぞれ違うけれど、彼とはいつだって引き寄せられて、互いに恋に落ちることとなる。

 

…なんて、その時は思いもよらなかったけど。


 

親と一緒に豆腐を打っていた姿を見た最初の印象は、

 

綺麗

 

だった。

 

一目見て他の人とは違う何かを感じ取った。

 

目が合った時、彼の瞳も同じようにキラリと輝いたように見えて。

 

一瞬、この世界が二人を残して時が止まったかのような気分になった。

 

ああ、彼と出会うために生まれてきたんだなと錯覚してしまう程の出会いだった。

 

 

ある日近所の悪ガキが彼をいじめていた時に助けたのがきっかけで、ぐっと仲良くなった。

 

年齢が近く、性格は似てなくとも何かと気が合う俺らは毎日時間を共にした。

 

年下なのにたまに達観したようなことを口にしたり、大人びた瞳で優しく俺を見つめたり、ふとした横顔があまりに寂しく切なく見えたり…。

 

そうかと思えば子どものように蕩けそうな笑顔を向けてくれたり面白おかしい発言をしたりして、俺の気持ちは急速に彼で満たされていった。

 

 

「あんな身分の低い家のせがれ放っとけ。」

 

「どうせ住む世界が違うんだから関わるんじゃないよ。ご近所に何て噂されるか分かったもんじゃない。」

 

当時の両親にそう言われてたけど、俺はこっそり彼と会い続けた。

 

この感情が、唯一無二の『恋心』なのだと

 

そう俺が気付いたのは親から将来の縁談について聞かされた時だった。

 

──嫌だ。

 

──彼に会いたい。

 

──これからも彼と生きたい。

 

──彼としか生きていたくない…。

 

どれだけそう主張しても、当時親が相手を決めるのは当たり前で。

 

家柄で判断されるのも当たり前で。

 

その当然の理不尽さが、俺には到底納得出来るものではなかった。

 

更には、現代もだが…性別が同じということも大きなハードルの一つだった。

 

後継ぎが産めないなんて、身分どうこうの前に話にもならない。

 

両親はとにかく俺の気持ちが彼から離れることを望んでいた。

 

そしてそれは、俺にとってありえないことだった。

 

 

「拙者と一緒に逃げよう。」

 

何度、いや、大げさでなく何百回そう言ったかわからない。

 

当時の俺は駆け落ちなんて言葉は知らなかったけど、本気で二人で生きていこうとしていた。

 

母の反物と父の一等の刀を盗み質屋に入れれば暫くは金に困らないし、

 

彼は野草や料理に詳しかったからどうにかなると必死で説得した。

 

親と縁を切った親戚筋が北にあるから、一旦そこを目指そう、とも。

 

こっそりと文も出して根回しまでしていた。

 

だけど彼は一度も首を縦に振らなかった。

 

「…無理だよ…。武士の子でしょ。立派なお嫁さんもらえって言われてるんでしょ…?」

 

「馬鹿を申すな!拙者は絶対に嫁なんかとらぬ!」

 

「駄目。…そういう、決まり事なんだ。運命(さだめ)ってやつさ。

おいら達は…どんだけ想い合ってても、時が来たら終わるんだ。だから天命に身を任せるしかないんだ。」

 

「何故そのようなことを申す…!拙者はお主を本気で慕って…!」

 

「…お願い。…どうしてわかってくれない?もう言わないで?頼むよ…。

御前さんのことをどうしようもなく慕ってるから…だからおいらは…。……おいら達は……。」

 

 

彼はどの時代だって頑固で。

 

好きだ、までは言ってくれるのに、どれだけ説得したって絶対に俺と逃げる道は選んでくれなかった。

 

そして更に残酷なことに、決定的な別れの言葉を最後まで言ってはくれなかった。

 

想い合っていても結ばれない恋。

 

永遠に続く平行線。

 

せめて、嫌いだと突き放してくれればいいのに。

 

いっそ彼が他の誰かを好きになってその人と結ばれたら、諦めがつくかもしれないのに。

 

そんな風に思ってしまった時もあった。

 

結局はいつもあなたへの尽きぬ想いを募らせて終わるだけだったけど。

 

どうあったって、俺はあなたから逃げられない。

 

 

あの時代で。

 

俺は彼の言う通り、親の見合いで無理矢理嫁をとらされることになった。

 

どれだけ反対しても、逃げても、相手に嫌われようとしても…すべて失敗に終わって。

 

いよいよもう家を捨てるという強行突破の選択肢が本格的に姿を現していた時だった。

 

 

──何度生まれ変わっても忘れやしない、祝言の3日前。

 

 

「ちっ…父上!お願いしますっ…お願いっ…!!!」

 

「離せ!わしはわしの仕事があるのだ!!」

 

「お願いしますっ…どうか…!!どうか、どうかあいつだけは…!!!」

 

年甲斐もなく泣きじゃくりながら足にしがみついていたけど、

 

渦中の彼は優しく微笑んだ。

 

「いいんだ。こういう『運命』なんだよ、きっと。…信じてくれてありがとう。もし生まれ変わったら…今度こそ…。」

 

「黙れ!己に喋る権利はない!!この大罪人がっ!!」

 

「いっ…」

 

「父上!!!!!!!!!」

 

 

『彼』は

 

 

一家で火付けの大罪を働いたという『デマ』のせいで

 

 

 

国に

 

…父に殺 された。

 

 

 

その放火したとされる日、俺は彼とこっそり会っていた。

 

だけど俺がいくらデマだと言ったところで

 

頭の固い大人たちの前では笑ってしまうくらい無力だった。

 

現場に乗り込んでいくことも叶わず

 

父の「無事に刑は執行されたから安心しろ」という心無い言葉だけで

 

 

俺は、彼を失った。

 

 

真実は数日後捕まった真犯人によって分かったが

 

そんなもん、もう後の祭りだ。

 

「汚名が返上出来て良かったじゃねぇか」

 

彼の腕に痣を作る程強く握っていた父上はそう笑った。

 

 

そん時思った。

 

 

ああ、もういいやって。

 

俺の隣に彼がいない。

 

 

いや

 

この世界に彼がいない。

 

 

もうそれでじゅうぶんだった。

 

 

「なっ…あなた!?何をなさって…!」

 

なったばかりの妻には悪いことをしたと今でも思う。

 

「…悪い…。御前には何の非もない。悪いのは…『運命』だ。」

 

俺も

 

間もなく腹を切って彼の後を追った。

 

たくさんの人間に世話になったはずなのに、

 

その生を終えるのに、何のためらいもなかった。

 

 

そして次の生で

 

また彼と出会って、悲しい恋の連鎖が始まったんだ。

 

 

キラキラした無垢な優しい笑顔と

 

──お初にお目にかかります

 

とびきり残酷な挨拶で。

 

 

 

 

 

「──ロミオとジュリエットみたい」

 

「えっ?」

 

驚いて顔を上げると、ふにゃりと大野さんが笑う。

 

「…なのにしようと思って。テーマ。」

 

「あ、ああ。なるほど。」

 

っぶねぇ、打ち合わせ中なのに色々思い出してしまっていた。

 

 

大野智。

 

26歳、俺の一個上。

 

『今回のあなた』は、大人気の物書きだ。

 

ジャンルは問わず、小説も書きゃコラムや人生相談、詩なんかも…

 

絵についても女性の好むようなイラストも描きゃ画家のようなこともしてるし、とにかく多彩。

 

今回はイラスト付きのエッセイをうちの雑誌で連載をしてもらえることになった。

 

社内で謎多きエッセイストに目を付けたのは俺で、

 

大野さんの方も数多の誘いがあったにも関わらずうちと契約をしてくれることになったのは

 

恐らく彼がどの時代でも言っていた『運命』とやらなのだろう。

 

俺らは、どうやったって、どんな形であったって引き寄せられ惹かれてしまうのだから。

 

「そうですね、ではロミオとジュリエットの世界観で…ちょっと切ない感じですかね?」

 

エッセイに挿絵を毎度つけてもらうんだけど、その絵のテイストを決めなくてはならない。

 

ロミオとジュリエットってことは、そういう方向性だろうと思っての発言だ。

 

 

「切ない…?」

 

 

きょとんと眠そうな目を向けられる。

 

前々世の時、教師だった俺が生徒だったあなたに何度か叱ったんだよ。

 

ちゃんと起きなさい、って。

 

そしたらあなたはこう笑ったんだ。

 

僕は生まれつきこんな目なんです、って。

 

知ってるよ、って。

 

生まれつきどころか前世も前々世もだよ、なんて

 

そう言いたいのをぐっとこらえてたんだよ。

 

 

「この話、切ないんですか?」

 

のんびりとした口調で聞かれて拍子抜けする。

 

「…悲恋の代表格なのでは?」

 

シェイクスピアの四大悲劇には入っていないけれど。

 

ロミオとジュリエットと言えばどう考えたって悲劇。

 

「駆け落ちするはずの二人が、運命のいたずらによってすれ違って、ジュリエットが死んだと勘違いしてロミオが自殺してしまう…。

そしてジュリエットはそれを知り後を追う。想いは遂げられなかったじゃないですか。

残ってしまったジュリエットは…とても…辛く、悲しい思いをしたと思います。」

 

 

俺ならわかる。

 

ううん、俺にしかわからない。きっと。

 

絶望。

 

大切な人を失い、真っ暗闇に突然突き落とされる感覚を俺は知っている。

 

 

「ん~。言い方ムズいんだけど」

 

言葉を選ぶように、大野さんがぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。

 

「確かに、二人とも死んじゃうけど…想いは遂げられたんじゃないの?」

 

「…何故?」

 

「生きてることが重要なんじゃなくて。向き合うことが重要っちゅーか。」

 

大野さんが目の前のカップの持ち手を真っすぐ向ける。

 

そして正面に座る俺のカップも、今度は反対向きに…大野さんのカップの取っ手と向き合うように持ち手を回す。

 

「『終わり』が悲しくても。『向き合ってることがお互い分かってる』って幸せだと思うんだ。

二人は自分たちで自分たちの行く道を決めた。

それがどれだけ困難だったとしても、二人で決めたんだよ。

ほんで、失敗しちゃったけど…」

 

大野さんが、飲み終わった自身のカップを優しく横向きに倒す。

 

「片方…ロミオが死 んで、それにすぐ気付いてもう片方のジュリエットが同じように死 ぬ。」

 

同じように俺のカップも…倒しかけて、中身が残っていることに気付いてもとに戻す。

 

「…ジュリエット、生き返っちゃったけど(笑)

愛されてるじゃん、先に本当に死 んだ方…ええと、ロミオか。

だって死 んで尚ついてきてくれてるんだもん。人生投げだして。

きっとさ、いつか…天国に行った後にでもロミオも気付いてくれると思うの。一緒になってくれたこと。

だって…『向き合ってる』でしょう?それって、肉体がなくなった後でもそうでしょう?

だから二人の想いはいつかは伝わるし、寂しくないんじゃないかなって。

すれ違っちゃったね、って、笑える時が…きっと来ると思うんだ。それが例え、命が終わった後だとしても。」

 

大野さんがカップの持ち手をそっと近づける。

 

心と心をそうするように。

 

 

…気付いてくれていたんだろうか。

 

過去の俺がすべてあなたを追っていることに。

 

『あなた』は。

 

 

「お互いがお互いのために自分の命を放り出す位に好きなんて、ろまんちっくじゃん。両想いの最終系、でしょ?」

 

大野さんが愛おしそうに寄り添うカップを見て微笑む。

 

…ロマンチック。

 

もし俺のように辛い記憶があるなら、絶対にそんな言葉を口にできない。

 

だって、来世で会っても

 

絶対に同じことの繰り返しなのだから。

 

二人の想いが添い遂げることは、ない。

 

それをロマンチックだなんて。

 

「…死んだらそこまでですよ。来世でもし会ったって、きっと気付かない。ベニクラゲでもない限りね。」

 

んふふ、と大野さんが笑う。

 

「それでも」

 

大野さんの瞳はゆっくりと窓の外へ向かう。

 

鳥が真っ青な空に見えない弧を描いている。

 

 

「…それでも…。きっと、恋に落ちるよ。」

 

 

ふわりと優しい笑顔が咲く。

 

目が一瞬だけ合うんだけど、すぐ逸らされるそれ。

 

──君の瞳が綺麗すぎて、目が合うのが恥ずかしいんだもん。

 

いつの時代だったかそう言われて

 

おもいきり抱きしめたことを思い出す。

 

体温だって、あの時の香りだって、陽の光だって。

 

全部、俺の経験として残ってるのに

 

 

あなたには、無い。

 

 

だから…もう傷付きたく、ない。

 

 

なのに

 

何度だって恋に落ちたその笑顔と

 

『恋に落ちるよ』という言葉が、まるで俺らのことみたいで

 

俺の幾度となく諦めたはずの心は、またどうしようもなくあなたで満たされてしまうんだ。