※妄想のお話です。
ようやく☺️💚
一話を短くするのってちょっと物足りないというか
終わりどころが気に食わない…長くしたい…🙄←
「xx企画の原稿、入稿で~す。」
「おっつかれ~翔ちゃ~~ん!」
「だーかーらー、俺、先輩。君、後輩。わかる?」
「俺ェ、日本語ワッカリマセェーン★」
「今すぐ星に帰れこの宇宙人!」
「翔ちゃんひどすぎるんですけど~!?」
一個下の大学の後輩、雅紀。
まさか同じ会社で働くとは思ってなかったけど、元々仲は良くて。
働くっつっても俺は編集で雅紀は専属モデル。
ファッション専門誌ではないうちの雑誌を選んだのは、俺がいるからとかいう可愛らしい後輩全開の理由ではなく、
「雑誌の名前の『Miyabi』って、雅紀の雅って字だから!」とのこと。
編集長は「確かに!」つって笑いながらその場で採用、デビューにして表紙を飾り業界で伝説となった程気に入られている。
その経緯は何度聞いてもよくわからないし、雅紀に雅(みやび)さを感じたことは一瞬たりともない。
で、何故か社内に入り浸って助手業務もこなしている。
だから一応会社でも後輩ってわけだ。
俺自身敬語とか気にしないけど、同僚に目を付けられるのはこいつだから毎度叱る。
なのに全然直んねぇし、むしろ周りからそういうとこ含め愛されてるから、
最近はもはや漫才の入りみたいな感覚で一通りこのやりとりをこなしてるだけだ。
「ねーねーそれよりどうなの?Sakuraちゃんは!」
「先生な!!…まだわかんね。でも、順調っぽい。」
大野さんとは逐一喫茶シオンや電話で打ち合わせをし、細かい調整を入れながら進めてもらっている。
とは言え月刊誌だから入稿までまだどういう出来上がりになるかは分からない。
「え~そうなんだ!美人系?可愛い系?」
「そりゃ両h…いやっ、何の確認だよ!!」
しかも女だと思ってるみたいだけど男だし!
言わねぇけど!
「くふふ、い~な~俺も何か企画持ちたい~!」
雅紀は本業がモデルなわけだし、基本的に雑用を手伝ってもらっている。
とは言え明るく努力家の雅紀のおかげで企画の幅はぐんと増えていて、助手の域は超えてると個人的に思ってっけど。
それに売上を上げるため、雅紀のコーナーを拡張したいとも思っている。
…だから…
「…おあつらえ向きにちょっと考えてたことがあってさ。上手くいくかわかんねぇけど、お前も来ない?それ次第ではお前の担当の仕事になると思うよ。」
「…へっ??」
俺は胸ポケットから名刺入れを取り出し、電話の受話器を上げた。
「おー翔くん!久しぶり!」
とある定食屋。
に、どうもそぐわない男が片手を上げる。
ていうか…翔くん?
いつからその呼び方になった??
「先日はどうも。ご無沙汰しております。突然連絡してしまい申し訳ございません。」
「やだなぁそんな他人行儀な仲じゃないでしょ~またまた~(笑)」
言うてちょっと話しただけだろが。
と思いながらもコホンと咳ばらいをひとつ。
「弊社の専属モデルの相葉です。もし企画がまとまれば相葉がモデルとさせて頂く予定です。」
「あっ、あの、初めまして!あいばまさきですっ。」
「あはは、何かめっちゃ緊張してる(笑)tortugaの代表、松本です。よろしくお願いします。」
tortugaというブランドはこの半年でファッション業界に大きな影響を与えたいわば斬新な革命者だ。
攻守に例えるなら圧倒的に攻撃的なそのデザインは海外の上級者をうならせた。
癖が強く、簡単に着こなせるようなデザインはかなり少ない。
それ故日本ではどうもいまひとつ人気に欠ける。
更にどこかの雑誌と契約してる訳でもないから、名前は有名でも流通は出来ていない。
とにかく一般受けしていないのだ。
その点、雅紀はうってつけだった。
手足がスラッと長く日本人離れしていて、普段から「どこで買ったんだよそれ」みたいな服を器用に組み合わせおしゃれな着方を提案できる。
雅紀の着こなし提案のコーナーはかなり人気だ。
勿論俺みたいな保守的な奴は絶対取り入れられないようなレベルの組み合わせばっかだけど。
「俺、とるとぅーがの服、全部変な形とか面白い色で大好きで!お高いから全然買えなかったんだけど、もし翔ちゃん…
へいしゃの雑誌で取り扱いさせてもらえるなら、一点とーにゅーから入ることを提案しようと思っておりましてっ!」
何だろう、雅紀が言うとひらがなに聞こえてしまうこの魔法は。
…もう一人いたな。そんな可愛らしい魔法が使える人。
「ほぉ、一点投入?」
ところどころ失礼な発言してるけど、松本さんは気にすることなく食い気味に雅紀の持ってきた資料を覗き込む。
「そう!俺みたいにお金なくてちょっと手が出しづらいな~みたいな若い層には、このTシャツを一点投入!他はやす~いのとか皆が絶対持ってるのとかでまとめれば…」
雅紀が持参した服達の切り絵を、着せ替え人形のように組み合わせていく。
因みにこの切り絵は絵の上手い同僚を連れ回して描いてもらったものだし、台紙を作ったのは俺だ。
「…こんな感じ!こうやったら学生さんとかでも、手が出せるかなって!」
雅紀が作り上げた二次元の着せ替え人形は、奇抜な服を無難にまとめ上げている。
…これなら、俺でも着れるかも…?
しかも総額がかなり安い。
「…なるほどね。面白いかも。」
松本さんが感心してうなる。
「他にも~、とるとぅーがは網タイツみたいな服があるから~」
網タイツみたいな服ってディスってるだけにしか聞こえませんけど大丈夫ですか雅紀さん。
「こうやって着てみるとか!」
「…は~!相葉くんセンスいいね!すげぇ。作っといてなんだけどこれ俺も着れなかったんだよね(笑)」
そんなことある?え?
自分で作っといて着こなせないの??
「他にも例えば~」
センスの奇抜な二人がキャッキャと盛り上がる中、俺は定食の肉じゃがを口に運ぶ。
大野さんは肉じゃがが好きだって言ってたから、つい頼んでしまった。
先日の打ち合わせの時、雑談でさりげなく聞いたネタ。
オムライスとかカレーとかも好きらしいし…やっぱり趣味は合うようだ。
しかも作るのも得意らしい。
また……
いや、『初めて』作ってもらえないかな。
彼の手料理はいつも美味いけど
肉じゃがは俺にとって思い出の味だ。