それでも僕はまた君に恋をする8 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

ごめん、明日無理かもしれない…
多忙です…( ;∀;)














「はい、そこでこっち向いて。斜め上見れる?」

「はーい★」

カシャ、カシャ、とシャッター音が響く。

…と、順調に撮影が進んでいく中、二宮くんが突然カメラを置いた。


「…その笑顔、イラナイ。」

「え?」

雅紀が驚いた顔で瞬きする。

「いい。無理矢理笑顔になんなくていいから。」

「あっ…すみません、笑顔わざとっぽかったですか?」

「ううん。けど…今はアンタに笑顔は必要ない。」

二宮くんの指示に雅紀が困惑してるけど、松本さんは完全に一任しているようだ。

満足そうに見守っている。

「…こんな感じ?」

雅紀がいつも張り付けていた笑顔を消して、憂いを帯びた表情に変える。

「…うん…。いいね。それでいこ。」

二宮くんがそのまま撮り続け、ほっと安堵の息を漏らす。


「…二宮くん、何かすごいですね。若いのに…ベテランみたい。」

雅紀には笑顔。

そういう印象が周りにも読者にもあったと思うのに。

影、みたいなものが引き出された途端、ガラリとイメージが変わってしまった。

出来上がりがすごく楽しみだ。

「ほんと、いい拾い物したよ(笑)」

松本さんが笑いながらそう言い、「相葉くんもね」と付け足す。

多分だけど、世辞じゃない。

「あの通り明るいだけが取り柄みたいな奴ですけど。しごいてやってください。」

「とんでもない。なかなか持てない取り柄だよ。こちらこそよろしくお願い申し上げます。」

ちゃんとここぞって時は低姿勢なんだよな、本当。

トップブランドになりつつある社長とは思えない。

…違うか。だからこそのし上がってるんだ。

「あ、そういや翔くん、この後いい?」

「この後って…飯ってことですか?」

「そう。飲みがてら。ちょっと提案…っていうかお願いがあってさ。」

…お願い?
 


 
「えっ…、Sakura先生、ですか?」

松本さん行きつけの酒場は安くて早いのが売りらしい。

寺の息子で、社長で、安い酒場と定食屋が好きで…知れば知る程不思議な人だ。

「うん。ずっと気になってた先生でさ。今月号のMiyabi見て驚いたよ。」

笑いながら酒を飲む松本さんはやっぱりどこか画になる。

この人こそモデル向いてんじゃねぇかって思うけど…

まぁ経営者がモデルっていうのも不思議な話か。

「ていうか無礼講!敬語やめてよ、俺嫌いなの。」

…そうは言われてもなぁ…。

…まぁ、酒の場だし…仕方ない。

「…Sakura先生に聞いてみないとだけど。松本さんは…」

「呼び捨てでいいって!名前でもいいけど!」

ほんのり頬が赤い。酒に弱いのだろうか。

「じゃぁ…松本はさ、何でSakura先生とがいいの?」

単純に興味だった。

俺はただ認知度でSakura先生に打診した。

まぁ…運命によるものも大きかったと思うんだけど、無意識に惹かれたから。

けどtortugaは知名度はあるし、前衛的なデザインが売りなのに優しくふわりとしているのにピリ辛なSakura先生のイメージと合致するとはあまり思わない。


「──青いんだよね。」

「青??」


Sakura先生のカバーは名の通り桜色が多い。

だからこそ女性だと勘違いしている人がほとんどだろう。

「どういうこと?」

「それが、俺にもよくわかんないけど。俺昔から青色と相性いいんだよ。仕事もそれで上手くいってたからさ。」

…答えになってねぇ。

「その…青い、って思うから、Sakura先生がいいわけ?桜色じゃなく?」

「ふ、あはははは!翔くんおもれぇ!(笑)」

バシバシと背中を叩かれる。

え、何が面白かった?

意味わかんねぇ、何に爆笑?


「翔くんてさぁ、好きな子いる?」

話変わりすぎじゃないっすかシャチョーさん。 

もう完全酔ってるよな?

目とろんとしてません??

「…どうなんだろ。俺…もうよくわかんなくて。」


大野さんに抱く感情。

これは愛情なのだろうか。

それとも、『彼』への積もった想いの残骸なのだろうか。

大野さんという人間を好きかと問われたら、好きだと胸を張って言える。

けど好きな人は?と聞かれると、答えに迷う。

だってもうずっと恋してるから

…『彼』に。


大野さんは彼と全てが全てイコールではない。

だけどその彼っていうのは、紛れもなく『今は』大野さんなわけで。

今の大野さんも積み重なって、彼になるわけで。


『好きな子』。

そう聞かれると、首を傾げてしまう。


『愛すべき人』。

どちらかというとその表現の方がしっくりくる。


俺の運命では、彼は愛すべき人。

そこに強制力はないし無理に好意を向けることは決してないんだけど

抗いようのないこの引力は、『好きな子』なんて簡単な言葉じゃ表現しきれない。

「…なんか訳アリ?」

考え込んでしまった俺を松本の強い目が覗き込む。

射抜かれると、ドキッとしてしまう程強い瞳。

大野さんの優しく溶けそうなそれとは、真逆なイメージ。

「いや…そういうわけじゃないけど。でも、どうしたらいいのかわかんなくなって立ち止まってる感じかな。」

俺はまた、大野さんと惹かれあって…悲恋で終わるんだろうか。

だとしたら…もう、いっそのこと恋なんて始めなければいいのだろうか。


そうしたら俺は

大野さんを失わずに済むのだろうか。


「ふふ。じゃ俺もチャンスがあるわけね?」

…ん?

チャンス?

「僅かでもさ。可能性があれば、俺は飛び込むよ。後悔したくないし…個人的には難しい方が燃えるしね。」

……ウィンク?

へ?

何、え、チャンスって…俺…!?

「はは、んな構えなくても。まぁ、おいおいね。」

おいおい…!?!!

「ご、ごめん!俺やっぱ好きな人っ」

「もう遅いっしょ(笑)今断言出来なかった時点で俺は可能性を感じたから、そういうことでよろしく!」

え、ええ~っ…マジ!?

…マジっぽいな…。

「ま、今どうこうってつもりはないよ。フラれた時にでも思い出してくれればいいからさ。とにかく仕事頑張るからさ。Sakura先生の件、頼んだよ!」

「あ…はい、承知しました。打診してみます。」
 
 
俺は

思いもしなかったんだ。


この松本さんの小さな提案が


同じ歯車でずっと回っていた運命を



一気に突き動かすだなんて。