それでも僕はまた君に恋をする20 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

 

昨日載せたつもりでいました、今朝気付いてびっくりしました。(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そう、だったんですか…。」

 

桜井さんが長く深いため息をつく。

 

「すみません。俺の方がずっと…あなたを…忘れてたなんて…。」

 

顔を右手で覆う桜井さんはわずかに震えている。

 

おいらはその手をそっと包んだ。

 

「違うよ。そんなの、いいの。おいらにとっては十分なの。

記憶がなくても、あなたの隣にいれて。

何度だって出会えて、恋に落ちることが出来て。

…幸せなの。本当だよ?今だって。

だからおいらは…ずっと言えなかった。

巫女様との約束を破って過去について触れたら、もう二度と会えなくなるかもしれないから…。」

 

一度破られたからと言って、気軽に口にしていいとは思えなかった。

 

以前はあなたが口にしてしまって、過去を忘れてしまった。

 

ならもしおいらが過去のことを口にしたら?

 

…次はおいらまで記憶をなくしてしまうのだろうか。

 

それどころか二人が約束を破ったからと、もう次から会えなくなっちゃうかもしれない。

 

そんなの堪えられない。

 

怖くて怖くて、たまらない。

 

だから巫女様の末裔の松本さんに禁句は不問と言われても、前世を口にするのを暫く躊躇った。

 

そんな簡単な話なわけがないんだ。

 

だって、千年以上も恋をしてきたんだから。

 

 

ぎゅっと手を握ると、桜井さんが急においらの腕を引き、抱きしめる。

 

「わっ…」

 

「…どうして」

 

桜井さんが腕にぎゅうっと力を入れて呟く。

 

桜井さんの胸は…広い。

 

物理的なことじゃなくて

 

あったかくて、優しくて…強い、って感じがする。

 

…ドキドキするのに、安心する。

 

「どうしてあなたは、信じてくれないの…?」

 

「…え?」

 

意味が分からなくて、真意を覗き込むようその顔を見る。

 

見てるとこっちが恥ずかしくなっちゃうくらいの綺麗な顔が、至近距離で真剣においらを捉える。

 

「俺は。きっと来世も、あなたを見つけ出す。記憶なんてなくてもあなたと出会って。あなたのことを好きになる。」

 

「……。」

 

「来世が無理なら、その次も、その次も。あなたを必ず探すよ。」

 

「…だけど、そんなの…記憶が…」

 

「あなたが教えてくれたんでしょう?ベニクラゲの水槽の前で。」

 

 

──それでもきっと、恋に落ちるよ。

 

 

確かにおいらはそう言った。

 

そう言ったけど…。

 

「それは…桜井さんがおいらを忘れてると思って…」

 

記憶がなくなってしまったあなたに向けて。

 

だってあの江戸の時は、あなたはおいらを覚えていなかった。

 

だけどあなたはおいらを好きになってくれた。

 

だから…

 

「忘れてたとしても、俺らは恋に落ちる…。つまりはそういうことでしょ?」

 

うっ…。

 

昔からそうだ。

 

おいらはこの人に口で敵わない。

 

 

だけど。

 

そんな簡単に手放せるわけがない。

 

だって、保証がなくなっちゃうんだもん。

 

あなたとはもう、会えないかもしれないんだもん。

 

それは『和が教えてくれた』、『可能性の話』だ。

 

だけど確率でいえば絶対的に大きいもので。

 

このちっぽけな島国だけで考えたって

 

一億もの人数の中であなたと出会う確率の低さなんて、考えたくもない。

 

生まれるのが『たった数十年』違うだけで、その数字はうんと低くなる。

 

会えるわけがない、とまでは言わない。

 

だけど

 

会えないのが『普通』だ。

 

怖いに決まってる。

 

「お互い忘れてしまって…桜井さんは他の人と恋をするかもしれない。

もちろん、おいらも。それが怖いんだ。

何もかも忘れて。何もなかったことになって。

すれ違っても気にならない関係で…別の人に恋をしてしまうことが。」

 

 

こんなの、ただのわがままな束縛だ。

 

分かってる。

 

だけど堪えられないよ。

 

そんなの、嫌だ。

 

ずっとおいらだけを見ててほしい。

 

ずっとあなただけを見ていたい。

 

 

忘れたく、ない。

 

 

これまでのあなたとのことを。

 

なかったことになんて、出来ないよ。

 

 

「…果たしてできるでしょうか。」

 

…え?

 

「そりゃぁ、口先ばかりの恋愛ならいくらだって出来ると思います。

勿論結婚とかも有り得ます。

だけど。

こんな身の焦がれるような恋を、あなた以外と出来るとは思えません。」

 

「…桜井さん…。」

 

「だから絶対求め続けると思うんです。お互い忘れてたとしても。

俺がそうだったように、きっと記憶なんてなくても出会えば恋に落ちる。

それが…巫女様?とか第三者から決められたものじゃない、『俺の運命』だと思ってます。」

 

「……。」

 

「俺はきっとあなたとの恋を諦めない。今世も、来世も。その次も。

…例え全ての記憶をなくそうとも。きっと惹かれあうよ。」

 

真っすぐな瞳は、夢物語を本気で話してるんだって思えてしまう。

 

桜井さんは、本気だ。

 

「俺、本気で信じてるから。あなたと出会うことを。あなたに惹かれることを。

そしてあなたと共に生きることを。

だって、記憶が消えたって消えないですから。

あなたと過ごした日々は。あなたと想い合った過去は──。

…前世の俺が言いかけたのは、これだったと思います。きっと。

だから…

俺を信じて………。」

 

 

桜井さんはぎゅうっとまたおいらを抱きしめた。

 

その力は痛い位なのに、泣きたくなる程安心する。

 

ずっと気になってた、言葉の続き…。

 

本人がそう言うんだから、きっとそうなんだろう、って素直に思えた。

 

 

…そうか。

 

そうだよね。

 

おいらとあなただから出来ること。

 

 

何度も生まれ変わって

 

何度も惹かれあって

 

何度も恋をしたから

 

だから次も大丈夫。

 

きっと、そうだ。

 

 

例え記憶が消えても

 

繋いだ手は

 

歩んだ時間は

 

積み重ねた恋心は

 

 

なくなったりなんてしない。

 

 

あなたとの絆が、…この恋が

 

 

記憶を失った程度で、終わるわけがない。

 

 

 

「…んじ、る…」

 

「…え…?」

 

「信じるよ…。一緒に…この運命を、壊して…くれる…?」

 

 

 

桜井さんが、こくりと力強く頷く。

 

 

どんな暗く深い闇でも、飛び込むよ。

 

あなたとなら。

 

 

 

「…巫女様との約束を、一人で守ってきてくれてありがとう。

次の『約束』は、俺が守るから…絶対に……。だから…」

 

「…うん…おいらを……愛して。……翔……。」

 

 

 

おいら達は

 

この運命と引き換えに

 

絶対超えてはならない『もう一つのタブー』を犯す。

 

 

 

──『決して結ばれないまま生を終えること』

 

 

 

今度は

 

二人一緒に。