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どれくらいの時間が経ったのだろう。
結局ほとんどの時間、ホリカワくんが隣でずーっとしゃべってたけど。
ほとんどの内容が耳をすり抜けていた。
カチャッとドアの音がして反射的に立ち上がってそっちを見ると、術衣を着たコオ先生が少し疲れた顔で出てきた。
「コオ先生!」
「あ、翔ちゃん、ごめんね、遅くまで」
「ううん、そんなことより…あの子は?」
「うんっ!もう大丈夫だよ!」
「そっ、かぁ……良かった……」
コオ先生の笑顔に安心して、またベンチにストンと座り込んでしまった。
「高円寺先生」
今コオ先生が出てきたドアからタシロ先生が同じように出てきた。
「あ、タシロ先生、ありがとうございました。
おかげであの子は助かりました」
「イヤ、キミがここに来るまで状態を確認してくれていたから手術までがスムーズに進めたんだよ。アシスタントもキミだったから無事に手術も済んだし」
「イヤ、僕は別に…」
「やっぱりキミの腕はいいよねぇ。
キミはこのナルタウンに来るべきだよ」
そう言って正面からコオ先生の腰を引き寄せて接近するタシロ先生。
「やっ……あの、タシロ先生、そのお誘いは嬉しいんですけど……」
そう言いながら少しタシロ先生から距離を取るコオ先生。
「キミも強情だな。
あんな設備の整ってないオンボロ病院よりもこの病院の方が最先端の医療ができるのに」
「確かに……それも魅力的、ですけど。
でも、僕はシッポを最初から最後までちゃんと診てあげたいから。ここではどうしてもそれができない」
「ん。まぁそれはそうだけど……」
「僕にはあの小さな病院がお似合いなんです。
あそこが僕の居場所なんです」
そう言うコオ先生の目はとても輝いていた。
ホントに動物が好きなんだなと思わせる。
「まぁ……諦めたわけじゃないから。
気が変わったらいつでも来てくれて構わないから」
「ありがとうございます」
さりげなく腰からタシロ先生の手を離してペコッと頭を下げる。
「高円寺先生。
良かったらこれから食事でも?
もう病院も終わりだし、近くにおいしいワインの店があるんだ」
タシロ先生のその言葉に俺は目を丸くする。
「あっ、ありがとうございます」
えっ?コオ先生行くの!?
「でも、僕、友達と一緒なんで。
おいしいワインは、また今度と言う事で」
そう言って俺を見るコオ先生。
「翔ちゃん、ホントに待たせてごめんね?
着替えてくるから帰ろう?」
「あ、うん……」
術衣を脱ぎながらまたさっきの部屋に入って行った。
残された俺はタシロ先生に頭のてっぺんから足のつま先まで舐めるように見られて思わず顔を逸らす。
「櫻井さん、でしたっけ?」
「あ、はい……櫻井、です……」
俺がそう言うとタシロ先生は俺の方にツカツカと歩いて来て半ばムリヤリ顔を合わせる。
「キミ、高円寺先生の、ナニ?」
「えっ?……な、なにって……友達、ですけど」
「ただの、友達?」
「あ、はい……」
コオ先生が俺の気持ちを知ってるとは思えないけど。
でも、今日は、ただの男友達と出かけたって割にはいい雰囲気だった。
それでも、やっぱり……俺とコオ先生は、ただの友達であって……。
「ふん、まぁいいや。
ま、高円寺先生とはこれからも少しづつでも距離を縮めていくつもりですので」
「……は?」
「ゆくゆくは公私共にパートナーになりますから」
「……それを、どうして俺に?」
思わず敵意むき出しでタシロ先生を睨みつける俺。
タシロ先生にふふっと鼻で笑われた。
「なんとなく、宣戦布告をしておいた方がいいかなと思って」
タシロ先生に意味深なことを言われて、必死で平常心を保つ。
「な、何言って……」
「翔ちゃん!おまたせ~」
俺が言葉を発しようとした時、コオ先生が着替え終わったのか部屋から出てきた。
「タシロ先生、ホントにありがとうございました。あの子のこと、よろしくお願いしますね。
また様子見に来ますから」
「あ、ああ……待ってるよ」
「行こ!翔ちゃん」
タシロ先生にペコッと頭を下げると、俺の方に向いて一緒に歩き出した。
俺はコオ先生の後ろから歩き出しながらタシロ先生の方へと振り向いた。
タシロ先生の、口元を歪めながら俺を見つめるその姿になんだか胸騒ぎがしたけど、気にしないようにして慌ててコオ先生の後を追った。
つづく……
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おはようございます。
毎日暑いですねー。もう涼しくなるまで外に出たくない。
先日の記事にコメントやメッセ、ありがとうございました。私のペースで気楽にやって行きたいと思います。こうやって、たまにテンションが下がってしまってその都度皆様にご迷惑おかけしてしまいますが懲りずにお付き合いくださいませ。
映画のツアーも覚えてて下さったり、一緒に行きたいと言ってくださったりしてもらえて一安心。
ホラーは恐怖でしかありませんが、一緒に映画を楽しめたら幸いです。