なんとなく真緒が初音の正面に座る感じになってしまった。
それでもお互いぎこちなく会話がない。
いつもの初音さんだったら。
お正月に弟とご挨拶に伺います
とかなんとか絶対に前フリありそうなのに。
真緒は怪訝そうな顔で初音をチラ見した。
しかも。
微妙に目を逸らされてるし。
「あのっ、」
真緒は思い切って彼に話しかけた。
「・・はい?」
「今日は。東京にご用事でもあったんですか、」
初音が恐れていた質問を思いっきりされ
隣の天音の足をみんなから見えないように軽く蹴った。
「え?あーーっと・・。 うーんと。 し、親戚がいるんで。挨拶っていうか、」
なぜか天音が答える。
初音は黙ったままだった。
「親戚? こちらにいらしたんですか?」
「・・まあ、」
初音は気まずそうに頷いた。
また沈黙が続く。
なにこの空気。
真緒はいつもと初音の様子が違うことを敏感に感じ取っていた。
「今日、加瀬はどうしたの?」
南が紅茶を運んできて高宮に話しかけた。
「・・え?は?」
高宮はあれからずっと初音のことが気になってチラチラと様子を伺っていたのでいきなり話しかけられて驚いた。
「もー。何。うわの空で。奥さんはどうしたんですか?って話。」
「あ、ああ。いわきのお母さんと温泉・・」
「そうなんや。母娘水入らずかー。ええなあ。」
「ハア。」
やっぱ。
どこかで見たことある。
いや、話をしたんじゃないけど・・見かけたっていうか。
けっこう昔。
どうしても思い出せなかった。
「あたし。もう着物脱いでくるわ。苦しい、」
真緒は立ち上がった。
「えー、もったいない。朝6時からこしらえたってのに。」
南が言うと
「しかも食べこぼして汚しそうだし、」
「もう子供じゃないんだから。情けないわねえ、」
母に笑われたが真緒は席を立ってしまった。
それからみんなで賑やかな夕食となった。
「真尋、今度フィンランドやって。なんか貴族のパーティーとかで、」
「そんなパーティーなんか大丈夫なのかしら。相変わらず食べ方も下品だしね、」
「この前の高野の新しいホールでのミニコンサート良かったよね。天音くんも行ったんでしょ、」
南に言われて天音と初音は思わずギクっとした。
「あ・・はい。調律で連れてってもらって・・。勉強になりました、」
「真尋から勉強になることなんかあるの?」
少しワインが入った真緒はケラケラと笑った。
・・・ん?
その時。
高宮の脳裏に一片の記憶が蘇ってきた。
高野・・
思わず箸を止めた。
あれ。
高野の御曹司らしいぜ。
いや社長の息子じゃなくてね。
副社長の息子。
社長には子供いないから跡取りになるんじゃないってもっぱらの噂。
どこの誰だか知らない噂話を鮮明に思い出した。
高宮は記憶のかなたから「ある出来事」を思い出しました・・
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