Procyon(10) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

「カフェの仕事。楽しそうだね。」

 

高宮はその書類を南のデスクの書類入れに入れた。

 

「ああ。うん。なんかねー。この年になってようやく仕事に対してのやる気?出てきたっていうか。自分もこのチームに必要な人間なんだなーーーって、」

 

真緒は宙を見て嬉しそうに笑った。

 

彼女が離婚して戻ってきたばかりの頃。

 

色々諦めすぎていたことを思い出す。

 

諦めすぎて何もやる気が起きない。

 

そんな感じで。

 

彼女が自分に好意を持ってくれている、ことは何となく気づいていたけれどなかなかはっきりと断れず。

 

夏希との間がぎくしゃくしたり。

 

でもそれがきっかけで夏希と結婚できたと思っている。

 

その後、事業部でバイト扱いで仕事をし始めたけれど

 

『諦め』

 

の気持ちはおそらく彼女の心の奥底で燻っていたのではないかと思われ。

 

そんな彼女が本当にやりがいのある仕事ができるようになって高宮も少しうれしくてホッとしていた。

 

 

「天音くんが南ちゃんトコに下宿するようになって。お兄さんとも知り合って。丹波篠山と繋がって。なんか展開がすごいなーって。ホントいいトコなのよ。」

 

真緒はつくづくの気持ちを吐き出した。

 

「そっか、」

 

野々村兄弟の名前が出て高宮は思い出したように

 

「あの・・野々村さんのお兄さんの方? 初音さんだっけ、」

 

「え?ああ、うん、」

 

「あの人。おれ昔会ったことあるんだよね・・10年くらい前かなあ。たぶん、あの人だと思う、」

 

高宮は『その』話をし始めた。

 

「は?10年前?? なんで?」

 

真緒は思わず彼に一歩近づいた。

 

「・・確証はないんだけど。おれその頃ホクトのNY支社からこっちに呼ばれて。当時の常務つきの秘書やってたの。あるときなんのパーティーだったかな・・ 忘れちゃったんだけど社長の秘書の人がお休みしていておれが付き添うことになって。その時・・」

 

「・・パーティー、」

 

全く意味が分からなかった。

 

「あの人。 高野楽器の副社長の息子じゃない?」

 

そのワードを彼女に口にした。

 

「・・・・」

 

真緒は驚きのあまり瞬きするだけでリアクションができなかった。

 

「めっちゃ背が高くてイケメンで。ちょっと目を引く感じだったからすごく目立ってて。そしたらその辺にいた人がそうやって噂してたから。将来高野楽器背負う人なんじゃない?って。その時もなんか重要なプロジェクト任されてるとかなんとか。」

 

もちろん高宮に悪気もなにもなく。

 

初音に会った時のあの不思議な違和感を彼女に言っただけなのだが。

 

「・・や、それは。人違いじゃない? だって。初音さんと高野楽器って・・」

 

真緒は半ば呆然として答えたが。

 

天音がセリシールに入る前に高野楽器から依頼を受けてピアノの調律をしていた、という話を思い出した。

 

「いや。おれ結構人の顔の記憶得意なんだよねー。あれだけのスペックの人じゃん。インパクトはあったよ。10年経ったとしても。なんか全然変わってなくて・・いやおれもなんでそんな人が丹波で農業やってるのかわからないけどさ・・」

 

もう高宮の話が全く耳に入ってこなくなってしまった。

 

真緒は高宮から衝撃の話を聞いてしまいます・・

 

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