Procyon(12) | My sweet home ~恋のカタチ。

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せつなくてあったかい。
そんなラブストーリーがいっぱいの小説書いてます(^^)

リビングに降りていくと、父が一人でお茶を飲みながら新聞を読んでいた。

 

「お茶、もう一杯いれましょうか?」

 

真緒が声をかけると

 

「ああ。もう休むからいい。」

 

新聞から目を離さずに答えた。

 

そっと彼の前に座った。

 

「あの、さあ・・」

 

「ん?」

 

「今日。高宮さんに言われたんだけど。」

 

「うん、」

 

まだ新聞に目をやっている。

 

「・・初音さんが。高野楽器の副社長の息子なんじゃないかって・・」

 

ゆっくりと北都は顔を上げた。

 

「10年くらい前に、お父さんについて何かのパーティーに行った時に、初音さんを見たって。周りの人が『高野の副社長の息子ですごいプロジェクトに関わってる』って噂してたって・・」

 

シンとしたリビングに真緒の声だけが響いた。

 

北都は彼女を見やったけれど黙ったままだった。

 

「・・お父さんは。覚えてる?」

 

ドキドキしながら聞いた。

 

長い間。

 

北都はまた新聞に目を移して

 

「・・いや。」

 

2文字で否定した。

 

「あ・・そう、」

 

拍子抜けした。

 

しかし脳溢血で倒れて生死をさまよい、一部の記憶を失ってしまった父に10年前のたった一度のパーティーでの他の来場客のことについて覚えているか、と聞く方がどうかしている、と真緒はすぐに思った。

 

その後、北都は何を言うわけでもなくお茶を一口飲んだ。

 

「じゅ、10年前の話だもんね。高宮さんの記憶力がいくら超人的だからって。そんな話初音さんから一度も聞いたことないし。でもなんか不思議だなあって思って。」

 

真緒は何となくその質問を父にしたことを言いわけしてしまった。

 

「もし。そうだったとして。いったいなんだと言うんだ?」

 

その父の一言にハッとした。

 

「や、別に。何も・・」

 

「じゃあ別にいいんじゃないか。どうあっても、」

 

そう言って父は新聞を置いてそっと立ち上がった。

 

椅子にひっかけておいた杖を突いてリビングを出た。

 

 

別にいいんじゃないか。どうあっても。

 

 

なんだか父の言葉が頭の隅に焼き付いた。

 

あたし。

 

これの真偽を突き止めて。

 

いったいどうしようと思っていたんだろう。

 

 

東京で仕事をしていた時のことを話したがらない彼。

 

それが全てなのかもしれない

 

額に手を当ててふうっと息をついた。

 

 

『ホクトの娘であることを利用すればいい』

 

 

彼のあの言葉が頭をぐるぐるする。

 


話を聞いても全く反応のない父。真緒はその真偽を知る意味を考え込んでしまいます・・

 

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