経営学と心理学 5 | いろは

経営学と心理学と題して論じておりますが、そもそも私からの問題提起は、「戦略は意思決定である」なる経営戦略論での最上位概念について問題があると感じたからです。「意思」は人の心を表現したものでありますから、当然のごとく人の心に接近しなければならないのです。しかし人の心に接近すると、「それは心理学としてやってくれ」と多くの経営学者は述べます。ここが問題であります。矛盾を矛盾として感じていないことになり、学者でありながら思考の停止といいますか、経営戦略論では人の心について論じるべきではないという思考が働いており、ここに日本の経営学者の心の問題を心理学者として見つけ出すものであります。

 

これを言い出すときりがないのでここでとめますが、企業経営者はなぜその戦略にたどり着いたのかについてが面白いところであり、そこに経営学は着目しなければならないかと思うのです。例えば、経営戦略という概念を作ったアンソフは経営戦略を8つに類型化し、まとめた学者でありますが、こうなると経営者のタイプには8つあることになり、同じ人間、そして企業経営者でありながら8つの違った意見があるなかで、それぞれが成功しているとなります。こう考えると面白くなってきませんか?

 

市場浸透戦略なる戦略で成功している企業はどのような企業であるかを考えてみた時、京都の着物の老舗企業であるとか、大阪のたこ焼きなどが頭に浮かぶのではないでしょうか。多角化で成功している企業となると、メルセデス・ベンツ(ダイムラー社)などが理解しやすいと思います。このブランドではいわゆる垂直統合戦略を採用していて、ビスを作るところから始めるのが特徴です。ともに成功企業であり、京都の着物も大阪のたこ焼きも世界ブランドとして確立しております。大阪のたこ焼きはたこ焼きが世界へ渡ったのではなく、世界の記者がたこ焼きに寄ってきて有名になりましたし、京都の着物もこの例に従います。こうなりますと成功するとは何か?という非常に答えをだしにくいことになるのですが、しかし、成功者には8タイプの人間がいることを古くにアンソフが述べているわけですから、それらの成功者の心理的状況と重なる部分がないのなら、企業経営には向いていないのかも?と自問自答することが容易となります。

 

ではアンソフがなぜここまでの分類を可能にしたのかについてが心理学的に面白いのですが、皆様方はどのようにお考えでしょうか。偉大な経営学者であるアンソフを心理学的に追求してみるわけですが、まず、類型化することが好きなタイプの人がいます。換言すると、類型化することに快感をえる「性格」の人です。これはユングのタイプ論から判断すると、外向的思考型のタイプの人に多くみられます。これに対しミンツバーグは明確な類型化を行わない学者でありまして、またそのようなことは好きではないと明言しております。彼の論法はいったんは類型化するものの、その後に全て統合化させ、それを「コンフィギュレーション」と呼び、ユングのいうところの「コンステレーション」とほぼ同じ使い方をするのが特徴であります。まあしかし、ミンツバーグもこの意味では外向的思考型の人物であり、同じ経営学者でも共通性はありながら、見事なほどの第三の道、つまり個性化を見ることができ、実に楽しいのであります。

 

さて、アンソフは外向的思考型ゆえの理論を発展させ、その恩恵を私達は受けているわけですが、さて、各企業の経営者がなぜその戦略にて企業の活動を行うに至ったのかについてを研究していくことにより、「戦略は意思決定である」を真に理解することが可能となると考えております。

 

ご高覧、ありがとうございました。