経営学と心理学 10 | いろは

前稿においては経営学と心理学との関係を述べました。どちらの学問もそれぞれのいい分があり、それぞれに間違いではないことにお気づきいただけたかと思います。ただし、お互いの学問は何か足りない部分があり、それぞれが相互に補完しあえる立場となると最強の学問が成立するのでないかと思うのが私の主張であります。本稿は経営学が軸でありますからそこに心理学をもって足りない部分を補完することにより実践に強い経営学を目指そうとするものであります。

 

このように書くとすぐに学際的研究と認定する学者が多いのですが、本稿は経営学の足りない部分を心理学で補うことが目的であり、経営学を心理学にて解くわけではないので学際的研究には該当しないと考えております。それは違う!!とする学者も多いかと思いますが、学際的研究とは上述の定義となると私は認識しておりますので、その認識にて論じてゆきます。

 

本日より経営学的な企業の事例研究を始めるのですが、事例にする企業の選定がまた難しいのです。皆様が知りたい成功物語と学者的観点から興味のある企業の成功物語とは基本的には異なる場合が多く、一般の皆様方のニーズに合わせるのか、それとも学会基準とするのかで実のところ非常に迷っております。しかしながら、本稿はやはり論文であり、あくまでも学術的なプロセスと結論を求めることが目標ですから、学会基準の企業選定とします。

 

では学会基準とは何かと申しますと、参考資料が多い企業のことを意味します。つまり、先行する研究が多い企業であります。その意味では二番煎じである感は否めないのですが、ニッチを突いてイノベーターとなるのもイノベーターとしての使命の一つであり、経営戦略論を専門とする日本の学者の大きな特徴でありますので、今回はこの方法で論じてく予定であります。

 

では、先行する企業の参考資料が多い企業とはどこかですが、それはやはりパナソニックでしょう。パナソニックの場合はパナソニックという組織体に対する研究も多いのですが、これとは別に松下幸之助の研究もたくさんあり、こうなってくるとパナソニックの研究を行うのがベストでしょう!となるのですが、それではあまり面白みがないので、ある程度の先行研究がありながら、パナソニックよりも若い企業の事例研究を行ってみようと思います。こうなってくると松下幸之助の精神を引き継ぎ、それを企業として現在でも実践している京セラではなかろうかと思い、京セラを事例として話を進めようと思います。

 

京セラを知らない人はほとんどいないかと思うのですがいかがでしょうか?経営学会においては「アメーバ経営」にて有名な企業であります。当然のごとくこのアメーバ経営にも触れていきますが、本稿ではアメーバ経営が生れた経緯、創業者の稲盛和夫氏がなぜアメーバ経営にて組織運営を行おうとしたのかについて深層心理学な考察を加えていくことが大きな目的となります。それゆえ、アメーバ経営そのものについては専門書が多く出版されておりますので、それらの書物を参照していただき、事前に知識を得ていただきたいです。

 

さて、京セラですがまずは同社のホームページより企業概要を見るところから始めましょう。

 

京セラの企業概要

https://www.kyocera.co.jp/company/summary/company_profile.html

 

京セラの企業沿革

https://www.kyocera.co.jp/company/summary/history/until1979.html

 

上記の第一次資料からは、やはり輝かしい功績を持つ企業であることをうかがえることができます。一代でこれほどの企業の基礎を作り上げた稲盛和夫氏はどのような思想を持ちアメーバ経営を思いつき、それを成功へと導いたのかについて、皆様方は不思議に思われませんか?思想は誰でも持つことはできます。しかし、その思想が人々に受け入れられるかについては別の問題であり、逆にこれほどまでの企業にまで成長と発展をさせた稲盛氏の思想の在り方は心理学的にも素晴らしいものであるといわざるを得ません。

 

稲盛氏は鹿児島県にて生まれ育ち、鹿児島大学を卒業後に京都の松風工業へと就職したことが京セラの設立へと結びつきました。このように書きますと松風工業から暖簾分けされた企業であるかのように思われますが、実のところ松風工業との対立により退社し、その後独立したことにより生まれたのが京セラであります。そのあたりの史実は下記リンクよりご覧ください。

 

稲盛和夫氏の歴史

https://www.kyocera.co.jp/inamori/profile/history/history01.html

 

今回は導入部分を記述することで筆を置きます。次回は松風工業を退職し、京セラを設立した直後の歴史的背景を述べていこうと思います。ご高覧、ありがとうございました。