経営学と心理学 11 | いろは

企業の事例研究を通じ、経営者の意思決定の問題を心理学と共に見てゆこうとする企画であります。その研究対象として京セラ株式会社(以下、京セラ)を取り上げております。京セラといえばやはり創業者の稲盛和夫氏、その稲盛和夫氏あってのアメーバ経営という流れになるかと思います。先行する研究は非常に多いので二次資料としてそれらの研究成果を是非とも参照していただきたいです。そうするといろんな考えが出てくるかと思うのですが、心理学者として興味深いのは、組織を分けながらも一体化していく仕組みとその思想であります。経営学的には「見える化」などと翻訳されておりますが、要するに従業員の全員が企業の運営に参加する体制を評価する研究が主たるものであり、その考え方を科学的にするためにナレッジマネジメントの考え方を導入して問題を解いてゆく方向で結論を下しているものが主流となっております。これらの経営学的研究も大変すばらしいのですが、心理学的な考えを導入すればもっと近道なのに!!と思ったのが私の問題意識であります。

 

まず、稲盛和夫氏は鹿児島の大学を卒業後、京都の松風工業へ就職します。しかしながら、そこでの環境面や待遇面に問題ありと感じ、上司と大きく衝突することになります。京セラの社史にはそのことが詳しく書かれておりまして、ストライキまで起こして職場の対応改善についてを訴えた過去があるようです。原因は一つであることは考えにくいのですが、いろいろな要因がある中で原発となったのは、組織があまりにも専門化していることであったと心理学者的には思うのであります。その事例は下記リンクより参照してください。

 

サイト名:日本の社長

https://www.nippon-shacho.com/interview/in_kyocera/

 

つまり、専門化が進むと適当に駒を動かせば何とかなるという考え方であります。松風工業にて稲盛和夫氏は研究職であったのですが、研究職なる職務があるとなると、営業にまで手は出ないわけでありまして、その意味で、相当に組織が細分化されている状況であると断定できます。そうなると、組織における「癌」を発見し、切除すれば事足りるという考え方になり、切除まではいかなくても「移動」という名の治療を施すことが簡単となるのが組織の細分化のメリットであります。しかしながら、人間には心がありまして、「悪いところは切りましょう」とはいかないのも現実でありまして、その典型事例が上記サイトから知ることができる内乱であります。

 

しかしそれにしても現代の企業では考えられないような組織的な内乱でありますが、稲盛和夫氏はそれを実行し、しかも実現に向けて様々なことが内乱によって実現したことに驚くばかりであります。やはりこれも時代でありましょうか・・・

 

近年の表現で表すと、非常に「ブラック」であった企業を退職する決意をした稲盛和夫氏でありましたが、その時点で誰かが止めるのではなく、稲盛和夫氏の後を追うように仲間が集まり新しい企業を設立する流れへと変化していきます。ここが重要な出来事でありまして、上司が優秀な従業員を引き留めるのではなく、自分たちも一緒に稲盛和夫氏とともに松風工業を去る決断をしたということです。なぜそれほどまでに稲盛和夫氏は人を引き付けることができたのでありましょうか?これが第一の問題点であります。

 

この後すぐに京セラを創業することになるのですが、その際、自宅を担保にして銀行からお金を借り、さらにそれを京セラへの出資金として使用する出資者が現れております。これが第二の問題点であります。お金がなければ企業として成り立たなのですが、ない状況で独立を決め、さらに仲間までいるわけです。お金も仕事もないのに従業員はいる状況でありまして、これは常識的にはとんでもない状況でありますが、稲盛和夫氏はこれを見事に切り抜けます。さて、稲盛和夫氏はなぜ出資者を納得させることができたのでしょうか?これが第二の問題であります。

 

今回はこれにて筆を置きます。次回をお楽しみに。ご高覧、ありがとうございました。