空冷ポルシェ高騰に見る架空市場の架空付加価値 | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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50代グダグダちょい悪おやじMr.Gの趣味と海外投資に関するコラムです。
香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!



Gは930と993という空冷のポルシェを2台保有している。

私の場合、投資目的ではない。

完全に趣味のものだ。


ここ数年の間に、世界的に空冷ポルシェの人気は異常な高まりを見せており、それに伴い価格は上昇を続けている。

業界では、いずれ価格は落ち着いてくるだろうと言われているが、そのような気配も感じられず、世間では株も投資信託も金も原油も不動産も、何もかもが低迷するなかで、空冷ポルシェの価格だけは不動の地位を維持している。

しかし、現実には市場で売りに出ている空冷ポルシェが殆ど無く、有っても程度に問題のあるものか、売る気があるのか疑わしいレベルの高価なものしか無い。

価格は上がっているように見えるが、実際の取引は殆ど行われていないかのように見える。

そもそも、ポルシェというクルマがもつ強烈で朽ちないブランドイメージが世間で一般的に認知されているにせよ、相当マニアックなクルマであり、AIによって自動運転のクルマが走ろうとしているこの世の中で、わざわざ運転するのに高度な技術を要求する気むずかしいクルマを選ぶオタクな人たちというのは相当限られている。

つまり、空冷ポルシェの実需要は恐ろしく限られている。

以前に書いたように、自動車を保有する1000人中2-3人、つまり0.2-0.3%くらいの確率だ。

世界ではクラッシックカーブームというトレンドがあり、母国ドイツではクラッシックカーを保護するための優遇税制まであるとか。

古いクルマの課税を強化する日本とはえらい違いだ。

空冷のポルシェもその世界的な「クラッシックカー投資ブーム」の波に乗せられて、現物投資の対象となってしまった。

かつては、カリフォルニアの911が雨が少ないため程度がよいとされていたが、日本人ほどクルマを大事にする人種は世界に例を見ないこともあって、日本に現存するポルシェが外国人バイヤーに買い漁られる現象まで起こった。

買う人(買いたい人)が多ければ価格が高騰するのは当たり前。

ところが、買いたい人が多いのに、在庫がない場合はどうなるのか?

答えは、プレミアが付いてもっと値段が上がる。

他のクルマは知らねど、空冷ポルシェオタクは、自分の飼育するポルシェを物として扱っていない。

家族のような生き物であると思っているふしがある。

なので、いくら値段がつり上がってもそう簡単には手放さない。

買いたい人は、もっと値段をつり上げてくる。

それでもオーナーは、「北風と太陽」の如く、もっと売りたくなくなる。

そんな繰り返しで、市場での価格はどんどん高騰するものの、実際に売買は成立していない。

要するに、市場に無いものの価格が、無いが故に、より高騰しているように見える。

言わば、架空取引による価格高騰だ。

常識的な需要供給からみた経済理論で考えると、現実に取引が行われ流通しているものでれば、いずれは需要が満たされて価格は下落していく。

在庫のないものに強い需要がある場合には、需要が満たされることはないので、大半のひとがあきらめて需要が喪失すれば価格は下がるが、さもなくば価格は上がり続けるということもあり得る。

この特性は、プロフェッショナルランド社のロン社長とランディー副社長が教えてくれたランドバンキングにおける、土地マニア(ランドバンカー)の絶対的優位性と似ている。

これは結果論であり、お金に困ったひとが、たとえ家族であれ、売り飛ばすようなことが起これば、価格は下落する。

それがポルシェであれ、プリウスであれ、クルマなど所詮はものに過ぎない。

その単なるモノに愛情を抱き、モノ以上のモノとして大切にする人たちが、錬金術のように取引のない市場で架空の付加価値を生み出していくのだ。

しかし、取引のない架空市場であるかぎり、実際の利益は生み出さない。

投資的観点で空冷ポルシェを保有しているひとは、そもそも少ないとは思うが、もし居るのであればそろそろ売って利益確定して欲しい。

それで値段が下がってくれば、買えるものならナローを一台欲しい。