英語の迷い道(その153)-「書き込み」をした本を売却すること-一抹の落ち着かなさ | 流離の翻訳者 果てしなき旅路

流離の翻訳者 果てしなき旅路

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴15年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な独り旅を継続中

これまで、アマゾンのマーケットプレイスで専門書などの古書をよく買ってきた。そんな古書の中に時折り、「書き込み」を見つけることがある。

 

 

専門書などについては本来、傍線を引いたり書き込みをしたりして読むのが当たり前、だと思ってきた。従って、自分が読んだ専門書はそれなりに汚れてくるし愛着も湧いてくる。そんな本を古本屋に売ることもなければ、まあ先方も買い取ってはくれない。

 

そのような本は、普通は本棚の中で朽ちてゆき、参照価値が無くなった時点で処分(廃棄)される。今はそんな時代だ。

 

 

だが、私が学生の頃は「書き込み」がある古書も数多く売られていた。特に、大学の授業のテキストに指定されているものにはそんな古書が多かった。古本屋を巡って少しでも安くテキストを手に入れようとしていた頃を思い出す。

 

卒業前に、思い出に残らない本はすべて古本屋に売却した。読めなかった専門書が多かったことを今でも後悔している。

 

 

以下の、大阪大学/外国語学部の英作文の問題は、「書き込み」をした本を売却することをテーマとしている。やはり愛着がある本は売却すべきではない。

 

 

(問題)

次の日本文の下線部(1)~(3)の意味を英語で表しなさい。

 

(1)書き込みをした本を売り払ったときは、しばらくすると気になる。私の場合、決まってそうだ。(2)今となってその書き込みが貴重に思われるとか、その本を手放したことで、取り返しのつかないことをしてしまったとか、という後悔とは違う。(3)過去をなつかしむ気持ちもいくらかはある。が、それよりも、見知らぬ人のもとに自分の一部を置き忘れたような落ち着かなさを感じるのだ。まさに「恥じらいと親近感の混じり合った複雑な気持ち」である。

(中村明『現代名文案内』)

(大阪大学/外国語学部・2010年)

 

 

(拙・和文英訳)

(1) If you sell off a book that you took notes in, you may feel uneasy after a while. In my case, I always feel as such. (2) This feeling is different from the regret that those notes seem precious now, or that I have done something irreparable by selling off the book. (3) I still have some feeling of nostalgia for the past. However, instead, I feel a feeling of restlessness, as if I have left a part of myself somewhere in the presence of a stranger. It is just like “a mixed feeling of shame and familiarity.”