「秘密? んだよそれ」
俺の一言に相好を崩した。秘密、以上に表現できる言葉がこの場合はない。
「俺に言えないことがあるってのか?」
「それくらいある」
突き放すようにぼそりと呟いたところで、全く意に介さない。
「ケチ」
なんとでも言え。
「中坊じゃねんだから。それくらいいーだろ?
あ、じゃあ俺が言うから、お前も言えよな!これでどうだ」
「意味がわからない」
何処が等価交換なんだ。
そう言えるってことがどういうことか。俺は内心多少凹んでる。
分かってる。可能性が微塵もないこと、分かっているんだ。
「よっしゃ俺言うからな。覚悟しとけよ、俺が言うんだからお前も言えよ」
言わないって。言うなって。
幻想が現実になるから。分かってたことが事実になるから。
「言うぞー、俺はな、
お前」
は?
耳を疑う間に、お前は駈け出して、面喰っている間に、振り返って笑う。
「どーだ、びびったろ!」
呵々大笑するお前は俺をからかっているのか、本気で言っているのか。
「……まじかよ」
口元から漏れた本音はお前に届くはずがなくて、それでもお前は太陽を背にきゃらきゃらと笑っているから。
俺は本気なんだぞ、って言ってやりたくなる。
俺がお前のことをどう思っているか、ぶちまけてやりたくなるよ。
お前のことが好きなんだ、って。