一柳昴:【第4話/廻る毒】 | べちー子’s駄文保管庫

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徒然なるままに
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~翌朝~

昴「・・・っう・・・」

桂木「起きたか」

昴「・・・桂木さん?!・・・いって・・・頭がガンガンする」

昴はベッドから上半身を起こし頭を抑えた

桂木「横になっておけ。薬が抜けきってないんだろう」

昴「・・・薬?・・確かオレ、昨日・・・」

記憶を整理する昴に軽くため息をつきながら話す桂木

桂木「ワインに睡眠薬でも入っていたんだろう。警護対象とはいえ気を抜くな。敵が味方に扮することもあるんだ」

水で濡らしたタオルを昴に渡す

桂木「とりあえず今日は休め。沙織さんの警護は俺がつくから。ご令嬢も少々いたずらが過ぎるようだしな」

昴「桂木さんは何故?・・・」

桂木「昨日、下着ショップから瑞さんと沙織さんがいなくなった状況だが」

昴「はい」

桂木「入り口にはお前と海司が張っていた。数時間経っても出てこないので店内を確認したら2人はすでにいなかった」

昴「店員も知らないと言ってました」

桂木「大方、裏口からでも出たんだろうが、沙織さんはともかく瑞さんがそんな行動をとるとは考えにくい」

昴「確かに・・・瑞からはまだ詳しく聞いてませんが・・・」

桂木「それに、逮捕した男が『女に頼まれた』と自供している。かなりの美人だったと。それに今回のお前の件だ」

昴「まさか・・・!」

桂木「憶測で物を言うわけにはいかない。相手が相手だ」

昴「・・・」

桂木「公務も今日が最終日だ。このまま何もおこらなければいいが」

コンコン

桂木が慎重にドアを開ける

桂木「・・・瑞さん!」

瑞「あ、すいません。急にお邪魔しちゃって・・・。昴さんが体調を崩したってきいて・・・」

桂木「ああ、昴の体調はもう大丈夫ですよ。ただ、大事をとって今日は休ませようと思います」

桂木が身体をずらして瑞に部屋に入るように促す

桂木「では、私は打ち合わせがありますので、失礼します」

瑞「え?」

桂木「瑞さん、昼の会食には間に合うように準備しておいてください。昴、瑞さんにSPらしからぬ行動をするなよ!」

バタン

瑞「昴さん、大丈夫?」

ベッドの傍らで昴を心配そうに見る瑞

昴「ああ、昨日は悪かったな。部屋にいけなくて」

瑞「ううん、体調わるかったんなら仕方な・・・きゃっ」

瑞の手をひっぱってベッドに押し倒し馬乗りになる

瑞「ちょ・・昴さん、なんで上半身裸なの?!」

昴「服なんて必要ねーだろ」

瑞「必要ないって・・・ちょっ・・ん・・・」

強引にキスをしながら左手で瑞の手を押さえ右手は器用に服の中に入る

瑞「だ、ダメだよ・・・こんなとこで・・・」

昴「じゃあどこならいいんだよ」

瑞「どこって・・・あっ・・・」

昴の唇が首筋から胸に落ちていく

コンコン、ガチャ

そら「瑞ちゃん、班長がそろそろ会食の準備って・・・わっ!」

瑞貴「昴さん、ちょっとは自重してください・・・」

昴「・・・お前ら、ノックの後はちょっと待て」

瑞貴「ノックすらしない誰かさんよりはいいでしょう?」

瑞貴が笑顔で答えた




~沙織の部屋~

沙織「なんで昴じゃないの!」

桂木「昴は体調を崩してしまいましたので、本日は私が警護にあたります」

沙織「いやよ、昴を呼んで」

桂木「部下が万全の体制で警護にあたるように管理するのも私の役目です。呼ぶ訳にはいきません」

毅然とした態度を取る桂木

イライラしながら窓辺に歩く沙織が急にお腹を押さえてうずくまった

沙織「・・っう・・いたっ・・・・」

桂木「大丈夫ですか!」

桂木が沙織の元に駆け寄り肩に手を置いた瞬間

沙織「きゃぁああああああ!」

沙織は自分のブラウスを引き破って叫びだした

警備員「どうしました!」

SP「何があった!」

叫び声を聞いて部屋に入ってくるSPや警備員。一足遅れて杉山大臣と平泉が部屋に駆け込む

沙織「あの人が!無理やり私を!」

泣きながら杉山大臣に走りよる沙織

桂木「なっ!私は何もしていない!」

杉山大臣「娘になんてことをしたんだ!おい、あの男を捕まえろ!」

警備員が桂木を押さえる

平泉「桂木くん、説明してくれないか?」

桂木「沙織様が、お腹が痛いとうずくまられたので、近くに寄った途端にご自分で服を引き裂かれて・・・」

杉山「そんな苦しい言い訳が通ると思っているのか!」

沙織「あの人が私を押さえつけて無理やり・・・ううっ」

泣き崩れる沙織。海司が警備員と桂木の間に割って入る

海司「待ってくれ!班長はそんな事する人じゃない!」

杉山「こんな状況でも身内をかばおうというのかね」

平泉「杉山大臣。私は桂木君の事をよく知っていますが。彼の言うようにこのような事をする男ではない」

杉山「それでは私の娘がウソをついているとでも言うのですか?このような状況で!」

言葉につまる平泉。

杉山「部屋には2人しかいなかった。状況証拠で十分でしょう。おい、男をつれていけ!」

警備員が桂木の手に手錠をかけようとするのを静止する瑞貴

瑞貴「手錠は犯罪者や暴れる容疑者にかけるものです。班長には必要ないでしょう?」

瑞貴の言い知れぬ気迫におされ、警備員は桂木の両脇を抱えて部屋の外へ出て行った




~瑞の部屋~

瑞「昴さんってほんとになんでもできますね」

会食の為にドレスアップした瑞はヘアメークを昴にやってもらっていた

昴「瑞はハーフアップが似合うと思ってたからな。あとはメークだな」

瑞「・・・んっ・・・」

昴「ここにキスマークつければ完成だ」

昴が首筋に顔をうずめた瞬間

バン!

海司「昴さん!」

昴「・・・ノックぐらいしろ」

海司に続いてそら、瑞貴が部屋に入る

海司「それどころじゃない・・・桂木さんが、逮捕された・・・」

昴「・・なに?!」


今までの経緯を聞かされる瑞と昴

そら「班長は絶対やってない。だけど、部屋には2人しかいなかったから・・・」

昴「なんで2人だけだったんだ?他の警備員とか付き人は?」

瑞貴「沙織さんが桂木さんに相談事があるって人払いしたそうですよ」

海司「くそ、すべて計算づくか・・・」


昴「・・・ちょっとあの女と話してくる」

海司「ムリですよ、がっちり警護されてます」

昴「オレの言うことなら聞くだろ。すぐ戻る」

バタン

部屋は重い沈黙に包まれた




~沙織の部屋~

沙織「昴!来てくれたのね」

昴「おまえの顔なんか見たくもねーけど、おまえに話がある」

沙織「ふふ、怒った顔も素敵ね。さ、入って。じゃあ、あなた達は外にでてくれる?」

部屋の中の警備員を外に追い払う仕草をする沙織

警備員「それは、できかねます!」

沙織「出て行ってって言ってるの。別にあなたじゃなくても警備員の予備は沢山いるのよ?」

仕方なく出て行く警備員や付き人。室内には昴と沙織だけになった

沙織「ワインでも飲む?」

棚から出したワインを昴の前にかざしてみせる

昴「同じ手が2度も通じると思ってんのか?」

沙織「冗談よ。で、話って?やっと私と付き合ってくれる気になった?」

沙織は肩をすくめて、昴の向かいのソファーに座った

昴「おまえ、何をたくらんでやがる」

沙織「何のこと?」

昴「桂木さんを・・・はめただろう」

沙織「はめた?冗談いわないで、私はあの人に襲われた・・・」

バンッ

昴が言葉を制するように机をたたく

昴「桂木さんはそんな人じゃねえ」

昴は椅子に座りなおし、沙織をまっすぐ見据える

昴「わかった言い方を変える。何が望みだ」

沙織「そおね、昴が私を抱いてくれたら。私と婚約してくれたら。私の勘違いだったってことにしてもいいわよ」

昴「・・・オレが狙いか」

沙織「桂木のことは内々で処理されてるし、今なら私が撤回すれば全て丸く収まるわよ」

しばらく沈黙が続いた

昴「・・・・わかった」

椅子から立ち上がって沙織をにらみつける

昴「日にちや場所はこちらが指定する。今の言葉、忘れんなよ」

昴が部屋から出て行った後、ワインを飲みながらクスクスと笑う沙織

沙織「甘いわね、昴。約束は破るためにあるのにね」