薄桜鬼小説【左之助】パート1 | べちー子’s駄文保管庫

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【再アップです】

左之助小説を書くと言って早3ヶ月。
亀更新にもほどがあるねガクリ
とりあえずノロノロとまた書き始めたYO!
お楽しみいただけたらうれすいーです。

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鍋がコトコト音をたてて部屋には味噌汁のいい香りがただよっている。
人数分の魚を皿によそって、私はふうっと一息ついた。

「あとは・・・。わけぎを切っておわりかな」

軽く背伸びをしてふたたび作業にもどろうとすると、
遠くからドタドタと誰かが走ってくる音が聞こえる。
その音は台所の前までくると、スパンと勢いよく引き戸が開いた。

「わりぃ!寝坊しちまった」

目の前で手をあわせて軽く拝むようにしている原田さんが立っていた。

「もう、ほとんど出来てますから大丈夫ですよ」

原田さんはほっとしたように表情をゆるめて台所に入り私の横に立った。
トントンと小気味よいリズムでわけぎを刻む私を柔らかな表情で眺めている。

「千鶴はいい嫁になるな」

突拍子もないことを言われて動揺した私の心を表すかのように、
包丁は見事に私の指をかすってしまった。

「・・・・っつ」

「大丈夫か?!」

原田さんがあわてた感じで私の手をとって口に含んだ。
流れ出る血をなめる感触が直に伝わってきて頭に全身の血が逆流する。

「血は止まったようだな」

傷口を見ながら原田さんは笑った。

「み、味噌汁よそいますね」

きっと真っ赤になっているであろう顔を見られない為に少し距離をとった。
でも、胸の奥がじんわりと熱くなっているこの感じはきらいじゃない。
味噌汁をよそいながらちらりと見ると原田さんは視線に気づいて微笑んでくれる。
この時間がずっと続けばいいのにな。
無意識にそう思った。

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朝餉の後、土方さんに使いを頼まれて屯所に戻ってくると、
町娘らしい女性が入り口で中をうかがっている。

「あの、何か用事ですか?」

話しかけると少し驚いた様子を見せたが、すぐに笑顔で答えた。

「私、おみよと申します。原田左之助さんはいらっしゃいますか?」

確か原田さんは巡察に出てるはず・・・。
伝言を受けようかと思ったところへちょうどよく原田さんが帰ってきた。

「よう、千鶴。こんなとこで何やってんだ?・・・あれ、お前は」

「原田さん、お礼に参りました」

なんとなく居辛くなってその場を離れた。
屯所に入る前に二人を見ると楽しそうに話してる。
おみよさんは頬を赤らめて時折原田さんの身体に触れているし、
原田さんもまんざらじゃなさそうだ。

「左之さんはほんっと女にもてるよなぁ」
「全く。俺と大して差はないと思うのにあいつはもてるよなぁ」

いつの間にか平助くんと永倉さんが後ろにいた。

「あの女性、原田さんにお礼を言いにきたそうです」

「あぁ、前に不逞浪士に絡まれてたのを助けてやったらしいぜ」

興味がないのか平助くんと永倉さんは屯所の中に入っていってしまう。
胸が痛くなるような感じを抑えながら私も屯所にはいった。