洗礼② | ゆんたの妄想ブログ

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順調にスパが行われていき、半分をすぎたころ。
「おっしゃーー!こいやー!!」
すこし鍛えこまれた体の一年が声を張り上げ三年を挑発した。
「僕もなめられたものだ。いいよ。先輩への口の利き方を教えてあげるよ。」
 少し細身ながら、しかし無駄な肉のないすらっとした三年が冷静に返す。
「あいつ死んだな。」
「だな、先輩。ああ見えて三年で一番怖ぇんだよなぁ。」
 二年生が小言をつぶやく中スパが始まった。
「おらおらおらお!!!!」
 ぶんぶんと威勢よく拳を振る新入部員。三年はその拳を華麗に避けていく。
「くっそちょこまかと!ちったぁ手ぇ出してこいっての!」
 相変わらず大降りのパンチを繰り返す新入部員。しかし、だんだんとその動きは鈍くなり、息が上がってきた。
「く、はぁはぁ・・・。くっそ!カスリもしねぇ。」
「どうした?さっきまでの威勢は。もう少し楽しませてくれると思ったんだけど。期待はずれだったかな。」
「へへ・・・。はぁ、まだまだ、これから、だろ!」
頭に血が上り、勢いに任せて拳を振るうだけの新入部員。そんな拳が三年に当たるはずもなく。最初からとばしっぱなしだったため、とうとう足が止まり、激しく肩を上下させ息を整える新入部員。全身から汗が噴出し、頬をつたいぽたぽたとリングに滴り落ちる。
「もう終わりかな?」
「はぁ、ちきしょー。んっく、はぁ、はぁ。」
「じゃぁそろそろこっちの番かな。」
 あれだけ激しい攻めを避けていたのにも関わらず涼しい顔の三年。そして
「いくよ。」
 一瞬にして空気が凍りついた。先ほどもまでとは明らかにまとっている空気が違う。新入部員は敏感にそれを察知。恐怖に足がすくみ、動けないでいる。
「あーあ。終わったな。」
 二年が言った直後。
 ドガ!!
「ぐあ!!!」
 一瞬で新入部員に肉薄した三年。しっかりとガードをした新入部員をそのまま殴り飛ばす。細身の体のどこにそんな力があるのか、新入部員をロープまで吹っ飛ばす。ロープに体を預け反動で戻ってきた新入部員。崩れたガードの上から容赦ないストレート!
 バキ!!
「がはぁ!」
顔面にクリーンヒットし再びロープへ吹っ飛ばされる新入部員。完全にガードが崩れ反動で戻ってきたところへ
ドボォ!!!
「ぐほぁ!!」
細身の腕から繰り出された拳が新入部員の腹に深々とめり込む。恐怖にこわばり、疲弊しきった体にはその衝撃は計り知れない。
ドサァ!
「うっ、あがぁ!!」
 腹を抱えうずくまる新入部員。その姿を覚めた目で見下す三年。
「一発で終わりかい?あっけないなぁ。もう少し根性見せてみなよ。待っててあげるから。」
「はぁ、はぁ。くっそぉ。」
 その言葉に自分を奮い立たせ、立ち上がろうとする新入部員。ロープにつかまり何とか立ち上がるものの。その顔は明らかに疲れを見せ、片腕でロープを、もう片方で先ほどのボディで赤く染まった腹を抱えている。
「そうこなくっちゃ。」
 再び構える三年。新入部員も何とか構え、ガードを固める。
「じゃぁ今度はしっかりとガードしてなよ?」
 再度新入部員に襲い掛かる三年。ガードをしていてもそのダメージは疲弊した新入部員の残り少ない体力を奪っていく。足を使ってに出ることもできず、三年の連打に耐える新入部員。
ドン!
「コーナーだね。」
にっこりと笑いかける三年。しかし、その目は明らかに笑っていなかった。そして、今まで以上に激しいラッシュが新入部員を襲う。
「ほらほら、そんなに丸まってても僕は倒せないよ!」
「う、う、ぐぁ・・・くは、あがが。うぅ・・・。」
 手も足も出せず滅多打ちにされる新入部員。だんだんとガードしている腕にも力が入らなくなってきており、殴られるたびにガードを突き抜けダメージが蓄積していく。
「そら!」
 バキィ!!
 ついに新入生部員のガードが崩れた。そして無防備になった新入生部員に三年の拳が容赦なく降り注ぐ。
 ドガ!バキ!ドスドス!バキャ!ゴガ!ドム!
「がっ!く!ぐ、ぐぁ!!ぶはぁ!あがぁ!ごほぉ!!!」
 もはやサンドバック状態の新入部員。その目はもはや光は宿っておらず、ひたすら拳の嵐をその体に叩き込まれる。だんだんと体は赤みを帯びてきており、頬は腫れ、鼻血をたらし、片目も見えなくなっている。
「そろそろ終わりにしようか。」
「くふ・・・。ぅ、ぁ・・。」
もはや新入生部員は虫の息。勝負がついたにもかかわらず、完全に息の根を止める勢いで、腰を充分にひねった拳をコーナーにもたれかかり、もはや青痣すらでき始めた新入生部員の腹に叩き込んだ!
ドッゴォォーーー!!!
「ごっはぉぁぁ!!!!!」
 三年の拳は新入部員の腹に深々とめり込み、完全にくの字に折れ曲がった新入部員の口からマウスピースが勢いよく吐き出され、焦点を失った瞳はうつろで、半開きになった口からは涎と胃液とが顎を伝ってぽたぽたとリングに落ちていた。
「ふう。」
 三年が拳を引き抜くと、新入部員はずるずるとコーナーにもたれかかったまま座りこみ、意識を失った。