「ふん。この程度でおわりか。あっけないものだ。」
「こっほぉ・・・まだ、終わって、ねぇ。」
腹にこぶしをめり込ませたまま何とか言葉を発した戒。しかし、言葉とは裏腹。その表情は苦痛にゆがみ、脂汗が頬を伝う。
「ならばどうする?」
「これならどうだ!?」
シュン!
放たれた苦無はまっすぐと忍の目に向かって飛んでいく。
「無駄なことを。この術は我が肉体全てを金剛石へと変える!無論この眼球もな!」
ボフン!!
「なに!?」
戒の狙いは苦無に付けられた煙幕であった。一瞬にして視界を奪われた忍。目の前が開けたときには戒の姿はなかった。
「まさか。逃げたのか?」
「そんなわけあるか!」
「!?」
がし!!
上空から舞い降りた戒が忍の背後に回りこみ腰に腕をまわし、首に足をまわし気道をふさぐべく力を籠める。しかし涼しい顔のままの忍。
「これなら!風遁 空絶断!」
そう唱えると忍の顔が少し険しくなる。
「この術はお前の空気を奪う!いかに強靭な肉体を得ようとこれには耐えられまい!」
しかし忍はうっすらと笑みを浮かべると、強力な脚力により一気に後方へと、飛んだ!
ドゴォォ!!!!!
「こっほぉぉ!!!!!がっは!!」
巨大な柱と強靭な肉体との板ばさみを食らった戒。集中がきれすぐさま術が解かれる。
「この程度の小細工で勝てるとでも思ったか?」
「くそぉ・・・。」
「遊びは終わりだ。次で楽にしてやる。」
そして忍は中段突きの構えを取った。少し違うところは拳を握ることなく手のひらをかざしているところか。
「ゆくぞ。」
そう言い終る前に忍の姿は戒の目の前から消えた。戒が気付いたときには忍は懐にまでもぐりこんでおり、戒が避けるまもなくそん手のひらを突き出した!
「金剛明王掌底覇!!」
忍の手のひらは戒の腹にベッコリとめり込み、戒の背中には行き場のなくなった臓器がぼこっと盛り上がっている。さらにその衝撃は戒の背を抜け、背後の柱にまで亀裂を入れた!「うっぷぐヴぉおおおおっぇぇぇぇ!!!!」
戒は目を見開き、見開いた目の焦点は定まらず、口の端から涎をたらし、胃の内容物を激しくぶちまけた!戒はそのまま頭をガクッとうなだれ気を失った。