7 | コウトオフィシャルブログ コウトの言葉

コウトオフィシャルブログ コウトの言葉

声のお仕事をさせていただいてます。
ここはTwitterには書けない僕の奥深い場所。

覚悟はいいですか?
それではごゆっくり。

前回よりかなり時間が空いてしまいました。ごめんなさい。
↓リンクしてあります!↓

     

それでは今日もつらつら書いていきます。
覚悟はよろしいですか?

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病院では同じ病気を患っている人が結構いた。
ただ違うことはみんなそこそこ高齢で、僕みたいに20代そこそこで入院している人はいなかった。


そんな状況の中で僕は一人で考えることが多くなった。

僕のこの後の人生のこと。

病気とのつきあいかた。

お仕事は復帰できるのだろうか。

でもそんなこと全く答えなど出ない。
自問自答を繰り返し結果辿り着く所は、涙を流すことだった。



入院中に看護師さんからの勧めで、
腹膜透析をすでに4年半行っている50代の男性にお話する機会を設けてくれた。

もう慣れた手つきで手技を行い、笑いながら明るくお話してくれた。
「いやぁー、もう何回も腹膜炎起こしててさー。これで入院も4度目だよ~。」
って笑いながら話してくれるんだけど、僕はどういう顔をすればいいか戸惑っていた。


腹膜透析をしている時には、感染症にすごく敏感にならなきゃいけない。
管が出ている出口は常に体の中とつながっている場所で、
そこに菌が入って行くと直接お腹の中へ入ってしまう。
それが炎症になりやがて、腹膜炎を起こす。
腹膜炎を起こすことになると、腹膜に障害を引き起こすことになり、
やがて腸など他の臓器に障害が広がってしまい、日常生活を送ることが出来なくなる。

あの男性はなぜあそこまで気さくで笑顔を絶やさないでいられたのだろうか。
今でもふとあの元気に癒される僕がいる。




入院も終わり自宅で腹膜透析を行うことになっていた。
それと同時期に先生からあることも告げられていた。

「コウトさん。。。今後のお話ですが。」
「・・・はい。」
「コウトさんの場合は他の患者さんより格段に若い。まだまだ人生は長いのです。」
「・・・はい。」
「そこで提案があるのですが。。。移植という方法があります。」


移植。
あまりにも現実からかけ離れていた言葉を耳にして、
一瞬その場を逃げ出したくなるくらいの不安が押し寄せた。
けど見た目が田中将大に似ている先生が優しく僕の手を引いてくれた。

その先生は僕の事を一番最初から見てくれていた。
その先生に僕ははじめから頼ることに考えていた。
詳しい移植のお話をするが、耳からはそこまで入ってこない。
けれど僕の中では「大丈夫。きっと大丈夫」って思うことで、
次のステップへ心を向かわせていけた気がする。


腹膜透析を自宅でしながら、病院では移植の準備が進んでいった。
先生のご厚意で入院中にある程度やれることをしてもらっていたため、
新たに行うことは日々の健康管理と数回の外来で僕は済んだ。
その時から聞き馴染みがないある言葉が僕につけられた。

「レシピエント」

僕は腎臓をもらうことになる。
その人を「レシピエント」と言われる。
逆に臓器を差し上げるほうをよく耳にするだろうけれど、
「ドナー」という。



僕はレシピエントになる。
そしてドナーは、、、僕の母親だった。




生体腎移植と言われる、生きている人から臓器をもらうことは、
比較的家族間だと成功しやすいと言われている。
拒絶と言われる反応も少なく、生着してくれる確率も格段に上がる。
ただ、それと同時にドナーには多大なる負担がのしかかることになる。


僕は母親に腎臓をくださいなんて言えなかった。
ただ母親は僕になにも言わず承諾してくれていた。





腹膜透析も若干慣れてきた2013年12月。
僕と母親の検査入院を迎えた。
ここでの検査結果によって、今後移植が出来るかがかかっている、
本当に大切な検査を控えていた。

腎機能を見たり健康体であるかどうか、
糖尿病や血圧、感染症や悪性腫瘍がないか。
HIV抗体がないか、肝炎系のものがないか。

そして一番大事なクロスマッチテストがあった。
反応があると移植をしても拒絶が起こり、
あっという間に移植腎が駄目になってしまい、
とても怖くて、とても大事な検査でした。
いくら健康体であってもクロスマッチテストが陰性でなければ移植は出来ない。




検査が終わってからは、祈るように毎日を過ごしていた。

「神様お願いします。僕に救いを。。。」

普段何気ないことでも神様に祈っていることもあったけれど、
あの時は何かにすがってなければ心が折れそうだった。
それは一度は恨んだ父親にも、

「お父さんお願い。天国から見守ってて。。。」


正直自分自身を憐れんでいた。
なんでこんなに僕は不幸なんだと。
それは涙を流しても怒りに心が震えても、現実から逃げることも出来ない。
目の前にはお腹から生えた管が見える。
引っこ抜いてこのまま息絶えてもいいんじゃないかって思ったこともあった。
そしたら母親に痛い思いもせずに、
誰にも祈って救ってもらうこともないんじゃないかって。
そしたらその分神様は他の大変な人を救えるんじゃないかって。

悪い発想はとことん悪いことを考えるようになっていて、
せっかく貰った大切なチャンスさえも受け入れることが苦しくなっていった。

僕はどうしたらいい?
僕はどうしたい?
僕は・・・。

ゆめちゃんが息をするように僕の腹膜に、合わせて4500mlの透析液を入れながら、
ただただ生きていた。


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