あれから数日。
オレは昼休み、EPS基地の中にあるカフェでランチを食べていた。
そこに「よ!お前もメシか。一緒の時間、久しぶりだなー。同じ席座っていいか?答えは聞かないけど」
と、シンがドカッと前の席に座っで来た。
オレは思わず苦笑しながら言った。
「けっ!いやだけどしゃーねーなー」
「またぁ、心にもないことをwww」
「オレはお前の鋼鉄の心臓が、羨ましいよ」
「んなこたぁ無ぇけどなぁ」
「ところでさっきのは話、どう思う?」
オレは数時間前に諜報部の三田室長に呼ばれた時の話を切り出した。
「そんな話、ここですんの?秘密裏で動けって言われてたじゃん」
「俺達以外、誰もいないじゃないか」
「まぁ、そうだけど」
その極秘任務とは、EPSの中にN国のスパイがいるという疑いがあることだった。
このところ、EPS極東本部がある日本に、N国からの密入国が増えたことから、何かしらの情報が筒抜けているのが原因では?という流れで、我々諜報部に調査の依頼がきたのだ。
「何にしても、暫く更に忙しくなりそうだな」
「シンは…大丈夫か?お前、嫁さんもらったばかりだろ?」
「生明ちゃん、寂しくさせちゃうかもなぁ…オレ、愛されキャラだから」
「キャラって(苦笑)。愛されてるって言えよ。ま、それはいいが、オレ、お前の分まで頑張るから、たまには帰ってやれよ」
「確かにテンちゃんは信頼できっけどなー、流石にエースのオレが居なくなったら大損失だべ」
と、シンは大笑いした。
「信頼…かぁ」
「ん、何どした?」
「シンはよく、そう言うよね?信頼してるって。オレの何を信頼してくれてんの?」
「真面目な話でか?」
「うん」
「お前さ、誰かと挨拶すっ時、必ず笑顔になんだろ?」
「それだけ?」
「いや、むしろその後。相手がその場を去ってもまだお前、笑顔じゃん?しかも何か嬉しそうじゃん」
「そ、そうなのか?」
「何か…それ見てテンちゃん、いいヤツなんだって。だから信頼できるなーって。悪いやつじゃねーなって」
「あはは、そりゃどうも」
「んだよ、せっかくマジで語ったのによ(笑)」
「あ、わりぃわりい!いや、珍しく褒められて、どうしていいか分かんなくてよ」
「褒めたんじゃねー。本当にそう思ったんだっつの」
「そか。あざす」
「うす」
「ま、とにかく早くスパイ見つけてさ、憎きN国の奴ら、叩きのめしてやろうぜ!」
「そういうワケにはいかんだろ」
「…え?」
「いや、坊主憎けりゃ袈裟まで憎いみたいな考えは、どうもオレはできんのよ。N国の人は、みんな悪いやつじゃねーだろ?」
「…そう思うのか?」
「いや、知らねーけど。でも知らない事について迂闊なことは言えねーし、勝手なことして後悔することになったらやべーじゃん?それにさ…」
「うん?」
「N国に限らんが、何でもひとまとめで判断したら、好きなれる女も好きになるチャンス、逃しちゃうべ?」
と、大笑いした。
「そりゃ、オレに言ってんのかよ!」
オレもつい笑ってしまった。
でも、確かにそうだ。
いや、恋愛のことではなく、仲間や友人にもなれるチャンスを逃してしまうのかもしれない。
誰とでも仲良くなれるチャンス…
そう誰だって、平和を臨んでいるのについ、忘れてしまう…
たまに、こうしてシンからは思いがけない事を教えられるのだ。オレはやつに助けられているのかもしれない。
そして食事を終えた頃、またもN国の無人モビルスーツが多数、襲来してきたとの連絡が来たのだった…
(その3につづく)