たった一人の友達
当時の私の友達は、近所に住んでいる幼なじみの男の子、Y君だけでした。
Y君は、『人間の体の仕組み』に興味がある男の子でした。
いつも一緒に『からだの絵本』を見ながら、人の体について色々と(むりやり?)教えてもらっていました。
母曰く、私は、ひらがなを教えようとしても全く興味を示さなかったけれど、Y君の家でいつのまにか覚えてきたのだそうです。
私は、自分から遊びを提案するよりも、いつもY君に合わせて遊んでいました。
「○○をして遊びたい!」という欲求があまりなかったので、相手に合わせている方が良かったのです。
自閉症は、何か伝えたいことがある時やストレスがピークに達した時に、泣いたり、叫んだり、騒いだりといったパニックによって自分の気持ちを表現することがありますが、受動型の場合はわりと何でも受け入れてしまうので、パニックを起こすことそのものが少ないのだそうです。
(だからといって、本人の気持ちを無視して、何でも大人の言う通りにさせ続けていれば、やはりいつかは限界に達して爆発しますが)
当時、受動型だった私は、大きなパニックはあまり経験することなく、周りの人に言われるがままに行動しながら日々を過ごしていました。
大人から見れば、受動型はとても育てやすい子どもだといえるのかもしれません。
心理士の先生にY君とのエピソードを話した時、
「Y君も『体の仕組み』という興味を共有できる友達は少なかったでしょうし、Y君にとっても、ももこさんがいてくれて良かったと思いますよ」
と言われました。
幼稚園時代はとりたてて嫌な思い出もないのですが、同じ少数派で、ウマが合う子が近所にいたことも良かったのだろうなと思います。
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友達と遊べない
幼稚園の頃の私は、口数の少ない子どもでした。
今はどちらかというとよく喋る方なので、この話をすると驚かれることが多いです。
自閉症には大きく分けて3つのタイプがあります。
積極奇異型、受動型、孤独型です。
積極奇異型は、人と積極的に関わりますが、その関わり方が独特で、相手に奇異な印象を与えてしまうことがあります。
受動型は、自分から積極的に人と関わることはありませんが、人から関わりを受けると受け身的に応じます。
孤独型は、自分から人と関わろうとはしません。集団から離れて一人で過ごしています。
この型はずっと一定ではなく、成長に応じて変わることもあります。
また、子どもに対しては積極奇異型で、大人に対しては受動型など、コミュニケーションする相手によって変わることもあります。
幼稚園の頃の私は、受動型でした。
幼稚園では、友達と遊んだ記憶がありません。
クラスの中で4~5人ずつのグループに分かれる時などは、いつも一人でぽつんとしていました。
みんながグループを作り終わってから、先生に手をひかれて、どこかのグループに入れてもらっていました。
でも、それを寂しいと思ったことは一度もありませんでした。
小さい頃に友達と関わることができないと、周りの大人は何かと心配するものですが、私自身は友達と遊ぶことに興味がなく、友達と関わりたいとも思っていませんでした。
グループ分けで一人になっても、それは「悲しい」という感情を伴うものではなく、幼稚園児の私にとってはいつもの日常のヒトコマでした。
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ご挨拶
私が自閉症(アスペルガー)の診断を受けたのはH20年、30歳の時のことです。
診断のきっかけとなったのは、その1年前、4歳を過ぎた息子の自閉症の診断でした。
自閉症、発達障害、そんな言葉を、テレビや雑誌、インターネットなどで耳にすることは増えてきましたが、実際に自分や家族が診断を受けたとしたら・・・、これから一体どうすればよいの?もう普通に生きていくことはできないの?と、途方にくれてしまうことが少なくありません。
自閉症は発達障害の一つです。
脳の障害ですが、人によって現れる障害の特徴も、困難を感じるところも様々な違いがあります。
「自閉症ってどんな障害なの?」と人に聞かれた時、自分や家族の自閉症の特徴を説明することはできたとしても、自閉症という障害そのものを説明することはとても難しいものです。
私は、息子が診断を受けてから初めて自閉症について学ぶようになりましたが、自閉症について学ぶ日々は、「私はどうして、今までこんな不器用な生き方しかできなかったのか?」、その理由が少しずつ解き明かされていく日々でもありました。
自閉症を持っていると生活に様々な困難があります。
「生きるって大変だなあ・・・」、そんな風に感じることも少なくありません。
けれど、自閉症について学ぶうちに、私は、生活にコツがあればよいのだということを知りました。
もし視力が下がれば、自分の視力に合ったメガネを作ります。
それと同じように、自閉症にも個々に合った生活のコツがあれば、とても生活がしやすくなることを知ったのです。
私は、自分なりのコツを一つずつ掴んでいくうちに、「自閉症でも何とかやっていけるんじゃないか」、そんな風に感じるようにもなりました。
今はまだまだ、自分の自閉特徴に振り回され、自分に合ったメガネを作るために試行錯誤を重ねている毎日ですが、このブログを通して、私なりの生活のコツをご紹介することができればと思います。
そして私自身、自閉症を知らずに過ごした自分の生い立ちを振り返ることで、これからの息子の子育てを考えることができればと思います。
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