注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。28
〜 new relationship ~
★
《ダーリンは芸能人》二次創作
1月が終わろうとしていたある日の夜遅く。
京介くんがゲッソリとした顔をしてダイニングルームにやってきた。
ドラマの撮影は順調ではあるものの別件で立て続けにトラブルがあったと一磨くんから聞いたばかりで、少し気掛かりではあるけれど。
私は私の仕事をするべく、いつもと同じように声を掛けた。
ちなみに、お夕食は不要ということだったので彼の分は残ってない。
「おうどん食べる?」
「お腹は空いてるけど……愛優香はもう寝るところなんでしょ?」
「なに言ってんの。帰ってきてまっすぐここに来たってことは何か食べたいってことでしょ?
すぐに出来るよー」
「…………なんだけどな」
「え、なぁに??」
室内着の上から割烹着をしてキッチンに入ったから京介くんの小さな呟きは聞こえなかった。
「…なんでもなーい」
「そう?」
常備してある冷凍のおうどんとベジキューブ、市販のお出汁を小鍋に入れて点火する。
出汁が沸騰する少し前に同じく冷凍しておいたブナシメジと長ネギ、常備菜のとりそぼろを鍋に追加した後に蓋をして弱火で仕上げ、いつもの丼鉢に入れて冷茶と一緒に彼の目の前に置いた。
「食べ終わったら部屋に帰る前にでも洗い桶の中に浸けといてね。
じゃ、おやすみー」
割烹着を脱いでシンク横のフックに引っ掛け、京介くんにそう声を掛けて私は寝室に入った。
翌朝のご飯の支度のために早く眠らなくてはとベッドて横になるものの、隣のダイニングに京介くんが居るかと思うとちょっとだけドキドキする。
それはともかく、彼に起きているトラブルの件については、一磨くんは「すぐに分かるから…」とそれ以上のことは言わずにお茶を濁した。
私が知ったところで何か役に立つかといえばそうではないのは確かなんだけれど。
いつかはここを出ていく身である以上、首を突っ込むのもなぁと無理やり目を瞑り、私は別のことに意識を回しながら眠りについたのだった。
✦✧✦✧✦✧✦
熱々で出された夜食を冷ましつつ、オレは愛優香が入っていった寝室の扉を見ながらボソッと独り言ちた。
「……会いたかったからなんだけどな…」
彼女と初めて会ったのはあるテレビ局近くのファミレス。
亮太とサブマネとで軽く食事を終えた時だった。
ヒステリックな声が聞こえ、思わずそちらを見ると。
ドラマのワンシーンのような修羅場の中で毅然とした彼女がいた。
そのカッコよさに見とれてしまった。
彼女が店を出ていってすぐ、相手の男のほうが追っていく。
そのことが気になって思わず追いかけて…。
それから2度めに会ったのはあるスタジオの地下駐車場。
仕事で来ていたのか、入館許可証を首から下げ、ポートフォリオを片手に誰かを待っていた。
そのスーツ姿が凛々しくて再び見惚れてしまって…。
そして巡り巡って彼女はここでオレたちの生活をサポートしてくれる人となった。
そんな日々の中、いつの間にか知らないうちに彼女のことが気になるようになっていた。
本当にいつの間にか彼女の一挙手一投足を目で追うようになっていた。
年末のカウントダウンライブで関係者席に彼女の姿を見つけた時は不覚にも胸が高まった。
ファンたちに夢を見せるアイドルとしての仮面が一瞬だけ外れ、愛優香にだけ微笑んだ。
だけど、それが今回のような事態を引き起こすとは。
「愛優香自身はどう思ってるのかな…」
いずれにしても、今回の件で彼女を巻き込むわけにはいかない。
オレには普通の恋愛は出来ないのだから―――。
そんなことを考えながら、オレは食べやすい温度にまで下がった愛優香特製のうどんを頬張るのだった。
〜 to be continued 〜