注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。29
〜 new relationship ~
★
《ダーリンは芸能人》二次創作
翌朝―――。
いつもと同じように、みんなの朝食を作り終えてキッチンから出た時だった。
"ピンポーン"
突然、外部からのインターフォンがなった。
「??」
本来なら鳴るはずのないもの。
早朝ということだけでなく、親戚や知人で私が此処に居ることを知っている人はいないため、その誰かが訪ねてくることはない。
さらに言えば、少なくとも連絡ナシでくるような人たちではない。
唯一知っているアケミやヒロユキに至っては、私がこのマンションから引っ越したと思っているはずだし、当時は7階に住んでいたので間違えるはずもなく。
また、Waveのマネージャーたちならわざわざこの部屋に通じる外部インターフォンは鳴らさない。
迂闊に出るわけにはいかないため、その音を無視しつつも次に鳴ることを警戒していた。
が、2回目は鳴らなかった。
間違い?と訝しんでいる時、今度は内部からのインターフォンが鳴り、一磨くんが慌てて部屋に飛び込んでくる。
「愛優香さん!」
「一磨くん?」
「いま、外部インターフォン鳴らなかった?」
「鳴ったけど出てないよ。 それが?」
「はぁ…、よかった……」
よほど慌てていたのだろう、いつもならきちんと身なりを調えてやってくる彼が室内着のままだ。
というか、そこまで慌てていたってどういうこと?
「一磨ぁ」
「翔くん、亮太くん」
今度は同じように二人がやってきた。
二人とも同じく室内着のままだ。
「翔、亮太。
お前たちのところにも来たのか?」
「朝っぱらから本当に迷惑だよなー」
「とうとう来ちゃったねぇ」
「来ちゃった?」
「マスコミ」
「マスコミ!?」
彼らの言葉にびっくりして思わず鸚鵡返しをしていると、一磨くんは冷静になったのか「とりあえず着替えてくる」と部屋を出ていった。
それに倣って、翔くんと亮太くんも出ていく。
一体、何が起きているのだろう。
その答えは、朝食の時に聞かされた。
「正月に京介と一磨と3人で初詣に行ったって言ってたじゃん? どうやらあれ撮られたらしいんだよねー」
「はい?」
「で、京介とあーちゃんが二人だけで歩いてるように巧く切り取られてさー。 それが週刊誌に載って大騒ぎ」
「で、片っ端から27階のドアホンを鳴らしたみたい」
「うわ、超メーワク。
近隣住民に迷惑かけるなとか取材するときの暗黙のルールとかないの?」
「ある。 でも一部の暴走したヤツにはそんなの通じないんだよ。 しかもこの27階はオレたち全員が住んでることは結構知られてるし」
「事務所としては、一緒に写ってたのはサポートスタッフの一員ってことを強調する声明文を出す予定なんだけど、なにしろその写真っていうのが」
そして一磨くんが出した週刊誌に載っていた写真には―――。
「!!」
柔らかな眼差しで私を見つめる京介くんの姿があったのだ。
その表情はライブの時に見せた時と同じものだった。
「いつでも完璧なアイドルの笑顔を見せる京介がこんな素の表情を見せたことについて周りが色々と推測しているらしいよ」
「まぁ、このカメラマンも運はいいよね。 京介のこんな表情、普段なら絶対に撮れないもん」
「ひょっとして、京介くんのトラブルっていうのは」
「ま、これもトラブルの一つなんだけどね」
「えっ、まだあるの?」
「うん、まあ。 そっちはもっと面倒くさいけどマスコミはまだ絡んでないから京介自身が躱してる」
「そういう問題…なの?」
「今はね。
で、2〜3日前にこれが出回ってからうちのマネージャーたちは対応に追われている」
「オレもあの場にいたから大丈夫と高を括ってたよ。
とりあえず、みんなマスコミからの質問には写ってたのはスタッフであるのただ一点で。 これを徹底してほしい」
一磨くんの言葉に翔くんも亮太くんも頷く。
いやはや、京介くんの表情の変化ってマスコミにとって飛びつくような格好のエサになるってこと?
……ゲーノーカイ、メンドクサイ。
それと同時に、彼らの置かれている環境が少し気の毒になった。
何気ないこんなプライベートでもマスコミのネタになるのだ。
と同時に、私自身の行動にも気を付けないと彼らを窮地に追いやる可能性があることに気がついた。
「あ、私、買い出しに行っても大丈夫なのかしら」
「載ってた写真を見る限りでは、愛優香さんの顔は写ってなかったよ。だからたぶん大丈夫だと思うけど。でも気を付けるに越したことない」
「分かった。その辺りについてはチーフさんと相談してみるわ」
「うん。手間かけます」
そうして彼らはダイニングを出ていった。
その後すぐにチーフさんから連絡があり、私が出入りする際には管理人用のキーカードを利用することになった。
現時点では顔は知られていないけれど、最上階フロアのキーカードを使って出入りすることはこれまた要らぬ騒動を起こしかねないという理由からだそうだ。
私自身の仕事や行動に大きな制約が付かないのはよかったけれど。
気にしすぎて挙動不審にならないようにと更に念を押されたのだった。
〜 to be continued 〜