創作◆あなたと始める物語は。38★《ダーリンは芸能人》二次創作 | 二次元のカレに逃避中♪

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主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
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 あなたと始める物語は。38

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





それからさらに数日が経った。

彼らはシュノーケリングツアーなど幾つかのレジャーをみんなで楽しんだり銘々で過ごしたり、予定として組み込まれていたスチル撮影の仕事をしたりとしていたけれど、滞在15日目にあたる今日は全員が作詞に取り組んでみる日にしたらしい。

ということで、私ひとりで2日分の生鮮食品を買い出しに行くことにした。

一磨くんはいつでも車出しをしてくれるとは言ってくれたけれどそういうことなら邪魔をするわけにもいかないし、今日はマネージャーさんたちの誰も居ないらしいので島内循環バスに乗って行こうと思う。

ヴィラの冷凍冷蔵庫を開けて中に入ってるものを再確認し、買うものをチェックしてキッチンの勝手口から出ようとしていた時だった。


「あーゆーかー」


そう間延び感のある声で背後から私を呼んだのは京介くんだ。

お昼ごはんも食べたしどうしたのだろうと内心首を傾げながら返事をすると。


「あれ? お出かけ?」

「ああ、うん。 買い出しにね」

「誰かと一緒に?」

「いや、ひとり。 バスで行ってくる」

「……オレも行く! ちょっと待ってて!」


私が返事をするよりも早く京介くんはキッチンを出ていき、そしてボディバッグを持って戻ってきた。


「お待たせ。 行こ」

「ちょ、ちょっと待って! 今日はみんな作詞に取り組む日にするって言ってなかった?」

「気分転換♪」

「えー?」


さっき部屋に戻ったばかりでそれが必要なほど時間は経ってないと思うんだけど。

でも、芸術的感性と閃きがモノをいいそうな作詞のことなんて私には分からないし。

でもでも…と私が考え倦ねている間に、京介くんは既に電動カートを始動させてハンドルを握っていた。


「愛優香ー、行くよー」


進捗状況は気にはなるけど、そもそも20代半ばの彼に向かって小学生の母親が言う「宿題終わったの?」的なことを私が言うのはなんか違う。

ま、本人がいいならいいのか、と気持ちを切り替えてカートの助手席に座った。

ヴィラ前のなだらかな坂道を上がって本館に到着、それから専用の駐車スペースにカートを置いてホテル前のバス停に向かう。


「あと10分くらいでバス来るから」

「バス停って近くはここだけ?」

「ううん、そこの遊歩道を下りてちょっと行ったところにもあるわよ」


そう言って木が生い茂った林の一所にある、遊歩道の入り口を指差す。

今回はホテルに寄ってくれる循環バスがタイミング良くあったからそれに乗ることにしたのだけれど。


「愛優香、あっちに行ってみようよ」

「遊歩道を下りるってこと? 足場、ちょっと悪いわよ?」

「うん。 行こ」


京介くんがスタスタと歩いていくからその後ろを追いかけていく。

コンクリートの階段を10段ほど下りたところから先は枕木と土の階段に替わり、さらに行くと少し整えられただけの小さな遊歩道となって少し足場が悪くなる。

が、ホテル前から下のバス停まではノンビリと歩きながら森林浴をするのにちょうどよかった。

植物からの湿り気が濃くてモワッとするところもあれば、吹き抜ける風が緑の爽やかな匂いを運んできてとても気持ちのいいところもある。

また、1日ごとに強くなっていく太陽の光を木々が遮ってくれて暑さはそんなに感じない。

と。

他の物に気をとられていたせいか、少し泥濘んでいた場所で足を滑らせてしまって―――。

転ける…!と思った次の瞬間、体を強く引っ張られて何かにぶつかってしまった。


「……あっぶな!」


間近で頭の上の方から聞こえてくる声に京介くんが抱き止めてくれたことに気付く。

引っ張られた時の力強さに男らしさを感じて少しドキリとしたものの、私は慌てて彼から離れた。


「ごっ、ごめんなさいッッ! 痛くなかった?」

「ぜーんぜん。
 愛優香ってたまーにおっちょこちょいやるよね」

「ほんと、ゴメン…」

「いいって。 でも」


逆接の言葉のあとのわずかな沈黙に首を傾げていると、少し考えるようにして、それから彼はスッと手を差し伸べた。


「?」

「ま…、また滑るとヤバいから繋ごっか」


耳をほんのりと赤くして照れた表情の京介くんが少しぶっきらぼうに、だけど優しさを含んだ声でそう言う。

私が「ありがとう」と言って差し出されたその手を取ると、また少し考えた彼は「やっぱり危ないから掴まって」と腕を絡ませるように組み替えた。

その気遣いは心の奥深くに灯るなにかをくすぐり、思いがけないこの状態に心臓がうるさく騒ぎだした。

そしていつもよりはるかに近い距離で私たちは遊歩道を歩いて行くのだった。



〜 to be continued 〜