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二次元のカレに逃避中♪

主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
※他サイトにて夢小説展開中

注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。




 あなたと始める物語は。35

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





二人の曲が流れ終わるころ、DJがリクエスト曲に纏わるリスナーの思い出を紹介した。

……リスナーの思い出とやらが本当に過去にあったことかどうかは別にして。

番組が次のコーナーに移る頃、フロントで教えてもらった市場に辿り着き、来場者専用の駐車場に車を停めて私たちは入り口に向かって歩いていく。

中に入ってすぐ、あるものが目に付いた。


「『レンタル』…?」


そう書かれていた幟に近付く。

そこでは島外からの自炊滞在者向けに蓄冷剤付きで発泡スチロール製トロ箱やクーラーボックス、保冷バッグの貸し出しをしていた。

話を聞くと、この地域では既に気温が20℃を大幅に上回っている日が多いために、購入した精肉や魚介類の傷みやすさを考えて貸し出しをしているのだという。

利用方法を聞いてみるととても簡単だった。

まず、レンタル利用申込みをした際に渡される番号札を持って各店舗で購入し、お支払いをすれば品名と数量と店舗名が書かれた控え伝票を渡される。

店舗側は客が支払いを終えた商品をカウンターの後ろにある冷蔵室まで持ってきてくれ、クーラーボックスなり発泡スチロール箱なりに詰めていってくれるとのことだった。

つまり、買い物中はほぼ手ぶらでOKとのこと。

買い物カートがないみたいだからこれは便利かも。

じっくり見て回るのにちょっと邪魔にもなるしということで借りることにした。

ただ買いすぎないように気を付けないと。

荷物を持たずに買い物をしていると間違えて余分に買ってしまいそうだし。

市場のエリアに入ってすぐは対面式の精肉店のエリアだ。

それぞれのお店にはこの地方の名前を冠した牛肉や豚肉、それらの畜産加工品が冷蔵ショーケースに並んでいる。


「愛優香、何買うの?」

「とりあえず、ハムとベーコン、ウインナー、卵は絶対よね。 あと、野菜は普段よく使ってたものと」

「それから食パンとか米とかかな」

「そうね。パンはともかく、お米はどうせ日持ちするし多めに買おうか」


3人で相談しながらお買い物をしているとあっという間に必要なものが揃った。

これで少なくとも1週間分の食材が手に入ったことになる。

私としてはまとめ買いよりも日々買いたい方だけれど、ここまで来るのに徒歩はムリだから仕方ない。

全てを周り終えてカウンターに行くと買ったものを保管してもらっている冷蔵室に通され、そこで控えの伝票と品物とを係員の方と一緒に照合する。

間違いがないことを確認したあと、必要数の資材のデポジットを払うと向こうの方が手際よくそれに詰めていってくれる。

ちなみに、この発泡スチロール箱は次回返却か連絡すれば取りに来てくれるらしい。


「ありがとうございましたー」


トータルで発泡スチロール箱3箱分とコンテナボックス2箱分になった食材や嗜好品を車に積み、私たちは市場を後にしたのだった。





ホテルに無事到着してレンタカーを返却し、敷地内カートに発泡スチロール箱を積み替えてWaveが滞在するヴィラに向かう。

ちなみに、コテージエリアの道路は制限速度が20kmで、事故防止のためにそれ以上スピードが出ないよう調整されたこのカートしか使えないようになっている。

ヴィラに到着して購入した食材を運び込もうとしていた時だった。


「ずりぃよ、一磨、京介! 買い出しに行くなら声を掛けてくれたっていいだろ?!」


プンプンと怒っているのは翔くんだ。

どうやら自分の知らないうちに二人が出掛けたことがご不満らしい。

何か買いたいものがあったのだろうか。

みんなに聞いてから行くべきだったかな?


「大勢で市場に行ったって仕方ないだろ」

「そうそう。何だかんだ言って翔が一番はしゃいで最初にバレるじゃんか」

「うー……。
 オレもあゆちゃんと買い物したかった…」

「「子どもか!!」」


ものの見事に一磨くんと京介くんの声がハモって私は思わず吹き出した。

何だかホッコリしてる間に義人くんも出てきて、発泡スチロール箱を持ってスタスタと中に入っていく。


「義人くん、ごめん! それ、台所の勝手口にお願いします!」


私の声に立ち止まった彼はコクリと頷いて再び歩き出した。


「ほら、翔も手伝え。
 愛優香さんはカートをお願いします」

「はーい」


全ての荷物を降ろしたカートをヴィラ横にある専用の駐車場に停めて鍵をかけ、台所の勝手口へと回る。

中に入ると一磨くんが冷蔵以外の物をテーブルの上に並べてくれてる最中だった。


「一磨くんありがとう」

「どういたしまして。
 冷蔵ものは愛優香さんが使いやすいように仕舞うと思って手を付けてないよ」

「うん。
 それにしても、市場、本当に大きかったわねー。 クーラーボックスのレンタルもありがたいし」

「向こうにはない?」

「レンタルは聞いたことないなー。
 でも大手チェーンのスーパーだと店舗で買ったものを配達してくれるサービスがあることはあるわね。
 ただ、会員登録は必要だし、指定されたカード払いの人しか使えなかったり、利用希望の人が殺到したりするとサービスそのものが受けられなかったりするの」

「便利なんだか不便なんだか、だね」

「そうねー。
 それよりも、市場で買ったものをそこの食堂で調理してもらって食べられるってのは珍しい! 一度は行ってみる価値アリかも!」


一磨くんとそんな話をしながら冷蔵ものをヴィラ備え付けの大きな冷凍冷蔵庫に仕舞っていく。

かなりの量を買ったつもりだったけれどスカスカだ。

でもまぁ、常備菜とか夜食とかを保存し始めたらいっぱいになっていくかもね。


「さて、全部しまったかな。
 一磨くんお手伝いありがとう!」


お礼を言うと彼は軽く手を上げてキッチンを出ていった。

それから私は買ってきたものを一覧にし、明日から1週間のおおよそのメニューを考える。

足りなければ買い足しに行かなければならないからだ。


「あゆちゃーん、晩ごはん食べに行こー」

「えっ、もうそんな時間?!」


翔くんに声を掛けられて指定された時間が近いことに気が付いた。

とりあえず明日の朝食については準備をしなくてもいいとのことだから、物の在り処をメモ書きにして調理台の上に置いた。


「愛優香ー、置いてくよー」

「待って、すぐ行く!」


それから私たちは本館への道を全員で歩いていくのだった。


〜 to be continued 〜

 

現在進行中の章のお話ですが。

ざっとですが、彼らが滞在するヴィラの間取り図を簡単に書いてみました。

(建築図面と書き方が違うのは御愛嬌😅)



キチンと図面をひいたわけではないのでそれぞれの部屋の広さとかがおかしいですが、ご容赦を😁


初めはプールを2階に持ってきてたのですが、建物強度を考えると大丈夫かな?と思い、沖縄のヴィラとかいろいろと見てみたら、インフィニティプールという存在を知りまして。

おー、いーじゃーん、ってことで、テラスやウッドデッキ、ジャグジーや1階のベッドルームからプールに直行出来るようにしてみました。

なお、階段はスケルトン階段と呼ばれるものを想定しております。

これが妄想の手助けになれば幸いです🤣🤣🤣


by にいのみ☆ひだか


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 あなたと始める物語は。34

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





その後、私は荷解きをするためにホテルに与えられた部屋へ戻った。

ドアを開けた瞬間、眼の前に広がるのは開放的なリゾートホテルのダブルベッドルーム。

これを一人で使うのはちょっと寂しいというか虚しいというか。

ま、仕方ないよね。

仕事で来ているわけだし、こんなに素敵な部屋を用意してもらってるのにそんな贅沢を言ってちゃバチが当たる。

……でもこれ、休暇にパートナーと来たのなら本当に最高だと思う。

天蓋付きのダブルベッドにテラス窓から見えるのは碧い海。

ジャグジー付きのお風呂からも海が見えて。

……。


「はぁー……出かけようかな」


一人で考えていたら益々寂しい気分になりそうだ。

今日の夕食は初日ということでホテル本館にあるレストランで摂ることになっていて、それまでは自由に過ごしていいと言われている。

が、ふと気付いたのは明日からの食材のこと。

先ほどチーフさんとキッチンの確認はしたものの食材の準備についての話をするのを忘れてしまっていた。

レストランからコテージへのミールケータリングサービスはないらしく、そのレストランも利用できる時間帯は決まっているから今回の場合はあまり頼れそうにない。

まあ、だからこそ私が居るのだけど。

そのため、先ずは日持ちのする食材だけでも揃えておかなければならない。

私はまだ彼らのヴィラに居ると思われるチーフさんに連絡し、買い出しに行くことを告げた。

半袖シャツの上に薄手のロングカーデを羽織って部屋を出、島の中で一番大きな市場を教えてもらおうとフロントへと立ち寄る。

ところが、その市場の場所を教えてもらったのはいいものの、そこまで行くのは徒歩では非常に厳しいことが分かった。

レンタカーやレンタバイク、もしくはバスかタクシーを利用するしかないらしく、さらに利用できるバスはというと空港ホテル間の送迎用バス以外だと島内循環バスのみだと言う。

とりあえずはとホテル前に掲示されてある循環バスの時刻表を見ると、次のバスは、遊歩道を下りたところにあるバス停に来るもので50分後、ホテル前まで来てくれるのは1時間50分後だった。

よく見ると10分前に出たばかりだ。

……うーん。

このホテルにはレンタカーサービスはあるけれど、何せ車が必要無いところで暮らしてるからほとんど乗ったことはなく、さらに言えば私自身の運転技術はビミョーな域にある。

ここまで来る途中にかなり狭い道があったし事故を起こすわけにもいかないので、対策を練ろうとホテルの中に戻ろうとしたときだった。


「おねーさーん、市場まで送りますよー」


と、クラクションを鳴らして後ろからそう声を掛けてきたのは京介くん。

ナニゴトかと駆け寄ると助手席には一磨くんがいることに気付いた。

レンタカーで二人揃ってどこか行くのかしら。


「愛優香、食材の買い出しに行くんでしょ? 一緒に行くよ」

「それはめちゃくちゃありがたいけど作詞はいいの?」

「まだ1日目じゃん、何とかなるって」


ケラケラと笑いながら言う京介くんに対し、一磨くんは苦笑いしてるけれど。

それでも車で一緒に来てくれるのは正直言って助かるかも。

大荷物を持って遊歩道を上がるのはちょっとキビシそうだしね。


「じゃあ、お願いしようかな」

「まかせて」


国民的アイドルの二人をつかまえて荷物持ちなんて言っちゃダメなんだろうけど本当にありがたい。

私が後部座席に乗ってすぐ、車はホテルのバス停前を出発した。

片方が退避しなければすれ違えないような細い道をしばらく行くと少し広めの道に出て、そこから更に進むと海岸沿いの道路と合流する。


「わぁ、海キレイ!」


何処までも続きそうな海は碧く、さざ波は太陽の光を乱反射させ、はるか向こうにはいくつかの島影が見える。

都会の湾岸道路を走ってる時に見かける風景とはまた違うものであり、また、走りながら見るものはヴィラからのものとは何だか違って、テンションも上がってくる。

彼らに断って窓を開けると、潮の香りを含んだ心地よい海風が車の中を通り抜けていく。


「風が気持ちいいわねぇ」

「だねー」

「愛優香さん、寒くない?」

「ありがとー、大丈夫、寒くないよ」

「愛優香、ラジオつけていい?」

「どーぞー」


運転中の京介くんに代わって一磨くんがカーナビのタッチパネルを操作すると、軽快なオープニング曲が流れてすぐ、陽気な男性DJの声がタイトルコールを告げた。

この地方特有の言葉を含むタイトルと少し訛りのある話し方は本当に遠くまで来たことを感じさせる。

また、協賛企業の名前を聞いていると地方の名称を冠するものが多く、地元との密着性を窺わせた。

そのCMの後、カーオーディオから流れてきたのは彼らのアルバム《Wave》に収録されている『Eternal Sunshine』のイントロだ。

番組のDJが言うにはこれはリスナーからのリクエスト曲で、思い出のある一曲というテーマで募集したものらしい。


『Wave大好きさんからは《Eternal Sunshine》、それから、京介くんLOVEさんからは《Secret Summer》のリクエストをいただきました!それでは2曲続けてどうぞ!』

「二人の曲、同時にこんなところでラジオで聴くなんてすごい偶然ね」

「あはは、偶然じゃないと思うよー。 タイミング的に考えるとマネージャーたちがリクエストしてたんじゃないかなー」

「え?」

「予告の前段階とでも言えばいいのかな、前振りみたいな感じで流してもらうことはあるんだ。 何しろかなり前の曲だしデビューしてすぐのものだしね、知ってる人は少ないと思うよ」

「少ない? そうかなぁ」

「だから2曲同時にリクエストってのも、ね。 来週あたり、義人の《Leaves》とか亮太の《Snowflake》とか流れるんじゃない?」


一種のステマみたいなものだろうか。

かなり前にリリースした曲が流れてくると懐かしくなってまた気に掛けるようになるし。

ただ、《Wave》に収録されている曲は本当にいいものばかりだと思うし、彼らのファンの中で新参者となる私の一番のお気に入りはこのアルバムだ。


「そう言えばさ、作詞って難しいの?」

「うーん、どうかな」

「オレは苦手。 前回は翔と一磨にめちゃくちゃ助けてもらったしなー」

「そうなの?」

「義人と亮太も苦戦しててさ。 あのアルバム、翔と一磨が居なかったらどうなってたんだろうって思うくらい」

「そうでもないだろう。 何だかんだ言ってみんな仕上げてたじゃないか」

「いろいろとアドバイスがあったから何とかなったんだよ」


そんな会話の途中で《Secret Summer》の一節が流れて私は思わず口ずさんだ。


「え」

「あ、ここの歌詞、すごく好きなのよー」


ふと前を見ると、一磨くんが京介くんの肩をバンバンと叩いていて。

そして京介くんの耳がほんのりと赤くなっていた。


「?」

「よかったな、京介」

「う、うっさい!」


前の二人の様子に疑問符を浮かべる私をよそに、車はこの地域一番の市場へと向かうのだった―――。


〜 to be continued ~

 

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 あなたと始める物語は。33

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





東京から離れたこの南の島に来た彼らのお仕事とは、半年後にリリースする予定のアルバムの作詞をすることだそうだ。

前回メンバー各自が作詞した時のアルバム《Wave》が大好評で、2回めを…となったものの、時間が全く取れなくて計画が立ち消えになりかけていたのだとか。

彼らの記念すべき10枚目のアルバムを半年後にリリースする予定であることから、同時にその計画を復活させるようにと上層部から指示されたのだという。

彼らをテレビで見ない日はないと言われるくらい激務なのに、アルバムを2枚同時に出す(しかも片方はすべてメンバー各自の作詞)のは無謀だとチーフさんは訴えたものの、トップアイドルとしてやるべきだと押し切られてしまったらしい。

ま、聞こえはいいけど、売れる時に扱き使って稼がせろっていうのが上層部の本音なんだろうけど。

掛かる経費には糸目は付けずとも良いとまで言われたらしく、それならと何とかメンバー全員のスケジュールを調整し、休養も兼ねてこの場所に来ることを強行したのだとか。

スケジュールがまだ完全に埋まっていなかったとはいえ、調整に調整を重ねて3週間を確保しえたのはやはりチーフさんの為せる技なのか。

……いろいろと凄すぎる。


「さて。
 曲は外部に依頼するからなにがなんでもこの3週間で完成させなきゃならないわけだけど。 インスピレーションのためにこの島を観光してもいいし、海に潜ってみるのもいい。 アクティビティは存分に使ってかまわない」


そう言いながら、彼女はこのリゾートホテルと協賛しているツアー会社のパンフレットを配る。

私にも配られたってことは、やってみたいアクティビティがあれば参加してもいいってことなのかしら。

当然、サポートスタッフなのだから会社の経費で遊ぶことは出来ないけれど、お休みの日に自費でなら…と思っていた時だった。


「あゆちゃん、シュノーケリングツアー行ってみよーよ!」

「レンタルバイクで島内一周ってのもあるね」

「サンセットクルージング、あーちゃん好きそう」

「パラセーリングしてみたい…」

「島の食べ歩きツアーなんて食いしん坊の愛優香にもってこいじゃね?」


などとワイワイと騒ぐ彼ら。

京介くんが笑いながら言ったことには同意したいようなしたくないような。

私、そんなに食い意地がはってるように見えるのかしら。

それはともかく、みんなであーだこーだ言いながら島の名産を食べ歩くなんて本当に楽しそう。

そんな中、チーフさんは溜め息をつきながら、


「仕事にも来てることを忘れないで」


と〆る。

それから、「大人であるあなたたちに言うべきことではないけれど」と続けた。


「事故は起こさない、人としてやってはいけないことには絶対に手を出さない。 つまり、Wave の名を傷付けない。 それを守ってくれれば好きにしていいわ。
 それから、愛優香さん」

「はい」

「食事の要る要らないは同じように申告制にするけど、この子たち、煮詰まってくると食事を忘れがちだから少し気に留めておいてくれるかしら。 最低でも1日に1食は摂らせるつもりで」

「分かりました」

「あとは―――」


全員でこの3週間の大まかなスケジュールの再確認をしてミーティングは終了。

その後は私とチーフさんとでキッチンへの移動し、備え付けられた調理器具や調味料、什器設備を確認する。

最低でも10畳はありそうなキッチンには大型の冷凍冷蔵庫とガスコンロ、電子レンジはもちろんのこと、ガスオーブンもあった。

それから使いやすそうなフードプロセッサーやミキサー、ミルサー付きコーヒーサーバーも。

ブランドロゴマークが付いた食器やカトラリーも一通り揃ってある。

と、電子レンジ横の壁の一箇所にある小さな扉に目がいった。


「これ、なんだろ?」


扉の横に3つのボタンがあるそれは一度見たような記憶があって、すぐに思い出した。

前に翔くんと後輩くんたちと一緒に食べに行ったレストランの個室に備わっていた配膳用エレベーターだ。

あそこにあったのはインテリアの雰囲気を壊さないように機械扉の前にもう一つ窓に擬態したステンドガラスの扉があったけれど、ここのはエレベーターが剥き出しになってる状態だ。

それをじっくりと眺めているとチーフさんが説明をしてくれた。


「この上はバーベキューが出来るルーフバルコニーになっているの。 これで食材とか飲み物とかを上げたり出来るわね」


そんなものまであるのか!

これが終わったら上も見に行かせてもらおう。

その後はキッチンの中をひと通り確認して、私の1日の大まかなスケジュールを打ち合わせ。

朝8時くらいにココに来て全員が朝食を摂ったかどうかをチェックだけして洗濯と昼食づくり、お昼くらいにみんなに声を掛ける。

ダイニングテーブルに着いた人のみ配膳し、食事の後片付けをしたらしばらくは自由時間。

夕方ごろから再び夕飯づくりを始め、適当な時間になったら昼食の時と同じようにし、さらに翌朝の朝食準備をして私は本館に戻る…というのが基本的な流れだ。

本館とヴィラとを行き来するのは面倒だけど、彼らの邪魔はしたくないし、私自身の時間にメリハリをつけられるという意味ではこの方がいいのかも。


「―――あーちゃん! 中、案内してあげるー」

「へ?」


チーフさんとの話をし終えると亮太くんがそう誘ってきた。

彼女の方を見ると「いってらっしゃい」とでも言うように頷いている。

彼女にペコリと頭を下げて、私は亮太くんと一緒に『屋内探検』に行くことにした。

ヴィラの1階には広々としたリビングダイニングルームが家屋の真ん中にあり、その右側にはキッチンとランドリールーム、それらの反対側にはインフィニティプールに面したツインベッドルームが2つ。

エントランスホール脇にあるスケルトン階段で2階に上がるとシアタールームとプレイルーム、それからダブルベッドルームとジャグジー付きのバスルームがある。

キッチンとランドリールームの真上はウッドデッキのルーフバルコニーで、チーフさんが言うようにバーベキューが出来るように専用のコンロや屋外用家具か置かれていた。

また、1階のテラスとこのルーフバルコニーを繋ぐスケルトン階段もあり、下のインフィニティプールにも直行出来るようになっている。

これまでに泊まったことがないような広さと至れり尽くせりな設備、それから周りの景観も合わせて凄いという言葉しか出ない。

これからしばらくの間はとても楽しい時間が過ごせそうだと私は思うのだった。


〜 to be continued ~


 

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 あなたと始める物語は。32

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





京介くんとマネージャーたちの奔走により、熱愛詐称のひと騒動が終わったと思われた頃。

突然のお話に私は驚きの声をあげた。


「えっ、私も?」

「そう! あゆちゃんも一緒に!」


お仕事で3週間ほど南の島へ行くという彼ら、なんと、私も同行することになったらしいのだ。

なぜ私も…の問いに、サポートスタッフとして来てほしい、と。

つまり向こうでもご飯を作ったり洗濯したりの家事をしろということだ。

ま、彼ら全員が行くのなら断る理由もないし、時期的に忙しいだろうと思われるはずの他の仕事も何故か人手が足りてるということで承諾する。

それから別のお仕事の調整やら事前準備をこなしているうちにあっという間に時間は過ぎて出発の日がやってきた。

今日出発するのはメンバーたちとチーフさん、翔くんのサブマネさん、それから私とスタプロの映像担当部署から2人なんだとか。

ちなみに、全期間常駐するのはメンバーたちと私のみで、他の人たちは業務の都合上、東京とこの島を行ったり来たりするらしい。

……大変だな。

片道数時間なんだもん。

で、今日はチーフさんを除く私たち4人はWaveのみんなとは別の便で行くことになっている。

そして私の隣に座ったのは。


「…」


映像担当部署に籍を置くカメラアシスタントの人らしい。

座るときにぺこりと頭を下げた後はずーっと無言だった。

同じサポートスタッフだからと一応あれこれと声をかけてみたけれど、「はい」とか「まぁ…」とかいう簡単な言葉しか返ってこなかった。

カメラマンって撮影の時に被写体モデルが機嫌を損ねずに気持ちよくポーズを取ってくれるようにとあれこれ声を掛けるっていうイメージがあって、話好きな人が多いのかと勝手に思っていたのだけれど。

それって偏見だったのかな?

それとも、人見知り?

もしくは、私がキライとか!

……なーんて。

話は跳躍してしまったけれど、知らない人に嫌われるという特技は持ってない……はず。

暖簾に腕押し、糠に釘、馬の耳に念仏…といった状態だったから話は続かず、私も2つ3つの話題を振って以降、それ以上は黙っていた。

そんなこんなで東京の羽田空港を出て数時間後、私たちは亜熱帯に属する南のとある島へとたどり着く。

東京にいる時はまだ少し寒くて厚着をしていたけれど、今は半袖シャツになっても構わないくらいの陽気で同じ日本とは思えない気候だ。

迎えに来たマイクロバスに乗るために空港の建屋から外に出ると、南の島特有の植物たちが何処までも続く塀のようになっているのが目に入った。

それから三十分ほど車に揺られて、空港から離れた場所にある小ぢんまりとしたリゾートホテルに到着。

突き抜けるような青い空に活き活きとした植物の緑とハイビスカスの赤、それから人工的構造物である建物の白とこれまたこの地域特有のテラコッタカラーが映えて色鮮やかだ。

その景色に見惚れていると、一緒に来た人たちは先にフロントへと向かっていた。

慌ててその後を追い、私もチェックインしようとすると。


「姫榊さま…? 既にチェックインされてますが」

「……はい?」


一体どういうこと?

私、いま来たばかりなんですが??

きょろきょろと辺りを見回して、サブマネさんに声を掛けるも何も知らないそうで。

フロントの方も困惑してらして。

さてどうしたものか…、と考えていたら不意に後ろから声を掛けられた。


「愛優香さん」

「うわっ。
 …って、チーフさん??」

「フロントに荷物を預けて、一緒に来てちょうだい。 ああ、念の為に荷物にはロック掛けといてね」

「え? あ、はい、分かりました…?」


何がなんだか分からないけど、とりあえず彼女の言葉に従って大きな荷物を預け、その後に付いていくことに。

ホテルのエントランスホールを通り抜け、眼の前に止まっていた電動カートに乗ってしばらく揺られて行くと、いくつかの建物が点在するエリアに来た。

ここもホテル敷地内であり、自宅に居るときと同じように過ごすためのプライベート重視型コテージエリアだという。

それぞれの建物の間には遮蔽となるような植え込みがあったり、また、カート用道路から離れた傾斜地に建っていたりするためにプライバシーはそこそこ保たれているのだとか。

小さなコテージを幾つか過ぎた後、ある一つの大きなヴィラに到着する。

と。


「あーちゃん! おつかれ!」


その玄関から飛び出してきたのは亮太くんだ。

どうやらここが彼らの寝泊まりする場所らしい。


「あれ? 荷物これだけ?」

「チーフさんがフロントにって言うから預けてきた」

「ふーん? 後から持ってきてくれるのかな?」

「愛優香さんの部屋は本館よ」

「え、なんで?!」

「さ、ミーティング始めるわよ」


亮太くんの質問に答えずにスタスタと歩いていくチーフさんの後を追って私たちも建物の中に入っていく。

エントランスホールに接するとてもとても広いリビングルームの左手側にはガラスのテーブルと何人でも座れそうなソファ、それから右手側には大きなダイニングテーブルが配置されていて。

そして、その先にある全面ガラス張りのテラス窓からは見えたのは。


「うわぁ」


そんな声が出るほどのステキな景色。

シックな黒紅色のウッドデッキの向こうに見えるのはインフィニティプール、さらにその向こうには象牙色の砂浜と天色の空、そして瑠璃色の海が。

空と海は、気のせいかもだけど、東京で見るのとは違うように感じる。

いつもとは違うこんな非日常的な空間の中で、彼らは更にその感性を磨くんだろうな。

芸術的センスのない私からすれば、とても羨ましいと思うのだった。



〜 to be continued 〜