注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。
あなたと始める物語は。35
〜 Leak out ~
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《ダーリンは芸能人》二次創作
二人の曲が流れ終わるころ、DJがリクエスト曲に纏わるリスナーの思い出を紹介した。
……リスナーの思い出とやらが本当に過去にあったことかどうかは別にして。
番組が次のコーナーに移る頃、フロントで教えてもらった市場に辿り着き、来場者専用の駐車場に車を停めて私たちは入り口に向かって歩いていく。
中に入ってすぐ、あるものが目に付いた。
「『レンタル』…?」
そう書かれていた幟に近付く。
そこでは島外からの自炊滞在者向けに蓄冷剤付きで発泡スチロール製トロ箱やクーラーボックス、保冷バッグの貸し出しをしていた。
話を聞くと、この地域では既に気温が20℃を大幅に上回っている日が多いために、購入した精肉や魚介類の傷みやすさを考えて貸し出しをしているのだという。
利用方法を聞いてみるととても簡単だった。
まず、レンタル利用申込みをした際に渡される番号札を持って各店舗で購入し、お支払いをすれば品名と数量と店舗名が書かれた控え伝票を渡される。
店舗側は客が支払いを終えた商品をカウンターの後ろにある冷蔵室まで持ってきてくれ、クーラーボックスなり発泡スチロール箱なりに詰めていってくれるとのことだった。
つまり、買い物中はほぼ手ぶらでOKとのこと。
買い物カートがないみたいだからこれは便利かも。
じっくり見て回るのにちょっと邪魔にもなるしということで借りることにした。
ただ買いすぎないように気を付けないと。
荷物を持たずに買い物をしていると間違えて余分に買ってしまいそうだし。
市場のエリアに入ってすぐは対面式の精肉店のエリアだ。
それぞれのお店にはこの地方の名前を冠した牛肉や豚肉、それらの畜産加工品が冷蔵ショーケースに並んでいる。
「愛優香、何買うの?」
「とりあえず、ハムとベーコン、ウインナー、卵は絶対よね。 あと、野菜は普段よく使ってたものと」
「それから食パンとか米とかかな」
「そうね。パンはともかく、お米はどうせ日持ちするし多めに買おうか」
3人で相談しながらお買い物をしているとあっという間に必要なものが揃った。
これで少なくとも1週間分の食材が手に入ったことになる。
私としてはまとめ買いよりも日々買いたい方だけれど、ここまで来るのに徒歩はムリだから仕方ない。
全てを周り終えてカウンターに行くと買ったものを保管してもらっている冷蔵室に通され、そこで控えの伝票と品物とを係員の方と一緒に照合する。
間違いがないことを確認したあと、必要数の資材のデポジットを払うと向こうの方が手際よくそれに詰めていってくれる。
ちなみに、この発泡スチロール箱は次回返却か連絡すれば取りに来てくれるらしい。
「ありがとうございましたー」
トータルで発泡スチロール箱3箱分とコンテナボックス2箱分になった食材や嗜好品を車に積み、私たちは市場を後にしたのだった。
ホテルに無事到着してレンタカーを返却し、敷地内カートに発泡スチロール箱を積み替えてWaveが滞在するヴィラに向かう。
ちなみに、コテージエリアの道路は制限速度が20kmで、事故防止のためにそれ以上スピードが出ないよう調整されたこのカートしか使えないようになっている。
ヴィラに到着して購入した食材を運び込もうとしていた時だった。
「ずりぃよ、一磨、京介! 買い出しに行くなら声を掛けてくれたっていいだろ?!」
プンプンと怒っているのは翔くんだ。
どうやら自分の知らないうちに二人が出掛けたことがご不満らしい。
何か買いたいものがあったのだろうか。
みんなに聞いてから行くべきだったかな?
「大勢で市場に行ったって仕方ないだろ」
「そうそう。何だかんだ言って翔が一番はしゃいで最初にバレるじゃんか」
「うー……。
オレもあゆちゃんと買い物したかった…」
「「子どもか!!」」
ものの見事に一磨くんと京介くんの声がハモって私は思わず吹き出した。
何だかホッコリしてる間に義人くんも出てきて、発泡スチロール箱を持ってスタスタと中に入っていく。
「義人くん、ごめん! それ、台所の勝手口にお願いします!」
私の声に立ち止まった彼はコクリと頷いて再び歩き出した。
「ほら、翔も手伝え。
愛優香さんはカートをお願いします」
「はーい」
全ての荷物を降ろしたカートをヴィラ横にある専用の駐車場に停めて鍵をかけ、台所の勝手口へと回る。
中に入ると一磨くんが冷蔵以外の物をテーブルの上に並べてくれてる最中だった。
「一磨くんありがとう」
「どういたしまして。
冷蔵ものは愛優香さんが使いやすいように仕舞うと思って手を付けてないよ」
「うん。
それにしても、市場、本当に大きかったわねー。 クーラーボックスのレンタルもありがたいし」
「向こうにはない?」
「レンタルは聞いたことないなー。
でも大手チェーンのスーパーだと店舗で買ったものを配達してくれるサービスがあることはあるわね。
ただ、会員登録は必要だし、指定されたカード払いの人しか使えなかったり、利用希望の人が殺到したりするとサービスそのものが受けられなかったりするの」
「便利なんだか不便なんだか、だね」
「そうねー。
それよりも、市場で買ったものをそこの食堂で調理してもらって食べられるってのは珍しい! 一度は行ってみる価値アリかも!」
一磨くんとそんな話をしながら冷蔵ものをヴィラ備え付けの大きな冷凍冷蔵庫に仕舞っていく。
かなりの量を買ったつもりだったけれどスカスカだ。
でもまぁ、常備菜とか夜食とかを保存し始めたらいっぱいになっていくかもね。
「さて、全部しまったかな。
一磨くんお手伝いありがとう!」
お礼を言うと彼は軽く手を上げてキッチンを出ていった。
それから私は買ってきたものを一覧にし、明日から1週間のおおよそのメニューを考える。
足りなければ買い足しに行かなければならないからだ。
「あゆちゃーん、晩ごはん食べに行こー」
「えっ、もうそんな時間?!」
翔くんに声を掛けられて指定された時間が近いことに気が付いた。
とりあえず明日の朝食については準備をしなくてもいいとのことだから、物の在り処をメモ書きにして調理台の上に置いた。
「愛優香ー、置いてくよー」
「待って、すぐ行く!」
それから私たちは本館への道を全員で歩いていくのだった。
〜 to be continued 〜