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二次元のカレに逃避中♪

主に、SNSアプリの乙女ゲームについてのレポ、および携帯恋愛ゲーム《ダーリンは芸能人》(LoveDuetを除く)をベースとした妄想2次小説を書いてます。※PC推奨です
※他サイトにて夢小説展開中

注意 当、二次創作小説(シナリオ)を初めて読まれる方は先にこちらをごらんください。




 あなたと始める物語は。40

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作






京介くんが調べたようにキッカリ40分後にやってきた循環バスに乗り、再び市場へと向かった。

これならメインメニューを大きく変更する必要はなさそうだ。

市場に到着してから前回と同じく一旦保冷バッグの返却手続きをし、再度レンタルを申し込んで市場の中に入る。


「今日は何を買うの?」

「んーと…明後日はサブマネさんが車を出してくれるって言うから今日は少なめだけど、鶏肉と豚肉と、シーフードミックス、アボカドとそれから……、なんだっけ」


ある程度は買うものを覚えていたけれど買い忘れしないために、出る前にメモしたスマホを取り出す。

精肉エリアを歩きながらその書き込んだ買い物リストを京介くんが覗きこんだ時だった。


「おやまぁ、新婚さんかい? お似合いだねぇ」


そんな声が聞こえてきて、他の若いカップルに向かって言ってるのかと思いつつ顔をあげて周りを見る。


声の主はふくよかな年配女性で、顔はこちらを向いているから私たちに言ってるのは確かだ。

お店用の前掛けをしていないしエコバッグを持っている様子から市場の利用客のようである。

しかし、まさか新婚夫婦に間違われるとは。

京介くんのためにもこれは訂正しておかないと。


「いえ、あの―――」

「―――そうなんです。 新婚旅行で滞在してるんですけど、妻が手料理を振る舞ってくれるというので買い物に来ました」

「!!!!!
 ちょっと…!」

「あらー、いいわねぇ。
 さっき海ブドウが入ったばっかりだって言ってたから鮮魚エリアに寄ってみるといいわよー」


それだけを言うとその女性はその場を離れていった。

京介くんはその背中にお礼を言っている。

……が。

彼のためにも訂正しなきゃいけないっていうのに当の本人が肯定してしまったことに抗議の声をあげる。


「な、何てこと言うのよ!」

「なにが?」

「し、し、新婚旅行って……!」

「あー、そうだねー。
 愛優香と夫婦に間違われたなんて嬉しー」

「そんなこと言ってる場合!? 大騒ぎになったら」

「初日に買い物に来たときなんて一磨も居たのに何もなかったじゃん。 みんな気にしてないんだよ」

「でも…!」

「はいはい。
 じゃあバレないうちにとっとと買い物終わらせようよ」


そう言ってとある精肉店のウインドウケースを覗きながら「今晩のメインはこれにしない?」とg単価5000円のサーロインを指差す京介くん。

普段使うものより高めなのはこの地方の名前を冠し、全国的にも有名だからだ。

それはともかく、話をはぐらかせようとしてるのはありありなんだけれど早く帰らなければならないのは確かで、それ以上は何も言うことは出来なくて。

今晩のメインを鶏肉のトマト煮込みからサーロインステーキに変更して副菜を温野菜サラダにして…とメニューを組み直して彼の希望を採り入れることにした。

それからはメモ書きした残りの材料を購入して私たちはヴィラへの帰路につくのだった。





そうして食材を持ってヴィラに着く手前で、私たちは入口付近に一磨さんがいることに気付いた。


「うわ、抜け出したのバレてる」

「そんなのバレないわけないでしょうに」

「まあいいや」

「言い訳をするの?」

「しないよー」

「あら、そう。 潔く謝るの?」

「なんで謝るの。 謝らないよ」


そんな会話をしているうちにヴィラの駐車場に到着。

ピリピリムードの一磨くん、やっぱりちょっと怒っているみたいで。

まぁ、そりゃあそうよね。

今日は何処にも行かずに作詞のお仕事に取り組むって話だったし。

ここは年長者として何かを言うべきかしら…と思っていたけれどとりあえずは口を挿まないでおこう。


「京介」


移動用カートを駐車場に置き、買ったものを両手にぶら下げて勝手口に向かおうとした京介くんを一磨さんが呼び止めた。

けれど。


「お小言は後で聞くから」


険しい表情と同じく険しい声音の一磨さんに対して、何が嬉しいのか何故かニコニコ顔の京介くんがそう言う。

……何で笑顔?????

あまりにも相対的な雰囲気に少し居心地悪くて息を潜めていると、一磨さんが大きな溜め息をついた。


「……はぁーーーーー。
 怒る気も失せた」


そう言って踵を返した彼は玄関へと向かう。

呆気に取られていると、京介くんは「愛優香」と私を呼ぶ。


「ねー、買ってきたものをしまおうよ」

「……そうね」


彼にそう声を掛けられて、キッチン側の勝手口から入り、買ってきたものを1つずつ確認しながら冷蔵庫やパントリーにしまう。

その合間に京介くんをチラ見するけれど特に悪びれた様子もなく。

ここで再び私は、この件に関しては余計なことは言わずに何か聞かれたら感情は交えずに事実だけを話そうと決めたのだった。



〜 to be continued 〜

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 あなたと始める物語は。39

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作




遊歩道に終わりが見えた頃、私は組んでいた腕をそっと離した。

誰が見ているか分からないところでこの状態を続けるのはさすがに良くないと判断したからだ。

もう一度ありがとうと伝えると、京介くんは仕方ないねとでもいうように微笑んだ。

車が通る地方道に出ると同時に視界が広がり、そこから1分ほど歩いて市場方面の停留所に着くと、ホテルに寄ってから下りてきた循環バスが到着。

整理券を取る代わりに交通系ICカードを読み取り機にタッチし、二人でバスの最後尾シートに座った。

利用している市場まではここから50分ほどでそれなりに長く乗るものの、海岸沿いを走るバスの車窓から見える景色は見飽きなくて、到着まであっという間に感じる。

…のだけど。

窓から射し込むお日さまの光を背中に受けていると、バスの振動も相まってか、今日は何故か眠気が襲ってきて。

ウトウトとしていると京介くんは「寝てていいよ」と私の頭を自分の肩にそっと寄せた。

その優しさに抵抗できるはずもなく、私は彼の肩にもたれかかって目を瞑る。

彼が愛用しているオーデコロンの香りの中に汗の匂いなのかほんの少しだけ違うものが混ざって……。

(あ…なんか好き……。
 ……………………………好き!?)

何気なく心の中で呟いた自分の言葉に疑問を抱いて思わず体を起こした私を見て、京介くんは柔らかく微笑む。


「…どうかした?」

「え、あ、あっ、あのっ」

「何か寝ぼけてる?」


笑いを噛み殺しながらそう尋ねる彼に返す言葉が見つからなくて、私は口をパクパクさせるだけ。

と、そこで不意に車窓の外の見慣れない景色に気付いた。


「……あれ???」


この前バスで来たときにこんなところ通ったっけ?と頭をフル回転させて周りを見回す。

すると、『次は間垣下〜、お降りの方はブザーでお知らせください』と次の停留所のアナウンスが。


「!!!!」


間垣下といえば、市場を3つほど通り過ぎた停留所名だ。

寝過ごしたんだ!

隣に彼がいるからと油断してたのかもしれない。


「なんで起こしてくれなかったの!」

「海、見に行こ」

「は?!」

「ネットで見つけたんだけど、どうやらこの先にめちゃくちゃキレイな夕陽が見えるところがあるらしいよー」

「夕陽!?!? 夕食、間に合わないじゃない!」


飄々とそう言う京介くんに思わず詰め寄る。

彼はいいかもしれないが、私にとって時間通りに夕食を提供しないのは職務怠慢に当たるわけで。

帰る時間によってはメニューを変えなければならないし、それはそれで買って帰る食材も若干違ってくるかもしれないのだ。


「あ、今日は夕陽の時間までは居ないよ。
 ちょっと場所を確認したら市場に戻るバスに乗ろ?」

「……そんなすぐにバス来るのかしら」

「逆回りのバスが40分後に出るみたいだから大丈夫」


いつの間にかそこまで調べていたなんて。

兎にも角にも既に市場は通り過ぎているのだし、せっかく彼が調べてくれたのだから行ってみようか。

やっぱり自然豊かなこの土地でさらにすごい景色と言われたら見に行きたいのが本音である。

―――みんな、今晩は手抜きになるかもだけどゴメン。

私は他のメンバーたちに心の中でそう謝るのだった。




それから更に30分後、バスは目的地に到着した。

周りは見渡す限り原っぱで、所々に農機具を収めるような掘っ立て小屋があるのが見える。

京介くんはスマホの地図アプリで場所を確認すると、「こっち」と歩いていく。

岩場の少し険しい道に差し掛かると然りげ無く私の手をとった。

再びの優しさにときめいてしまう自分がいて。

そしてバス停からわずか数十秒歩いて辿り着いた先から見えた景色は―――。


「……う、わ…っ」


筆舌にし難い風景が眼の前に広がっていた。

何処までも続く、空の『青色』と海の『蒼色』。

その色が交わる水平線。

いずれも数日前にパラセーリングをしていた時に見たものとはまた違っている。

ここに来ていろんな景色を見たけれど、どれも甲乙付け難いものだった。

その中でも口コミでここが一番と言われる所以は、恐らくだけど夕陽の素晴らしさなのだろう。

……見てみたい。

真剣にそう思った。

夕陽の時間帯に循環バスで来たとしたら帰りの便はあるのだろうか。

それとも、タクシーで来る?

いろいろと考えていると、京介くんが不意に言う。


「……愛優香の次のお休みの時に夕陽が見られそうなら来ようよ。 オレ、運転するからさ」


空と海をバックにそう言って笑顔を見せた京介くんにまた一瞬見惚れて、私はただ頷く。

―――私、たぶん、彼が好きだ。

漠然とだけどそう思う。

さり気ない優しさとか。

日々過ごす中で芽生えたこの恋心は少しずつ育っていった。

……でもきっと、これ以上は大きくしない方がいいと心のどこかで何かが囁いている気がした。


〜 to be continued 〜


 

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 あなたと始める物語は。38

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





それからさらに数日が経った。

彼らはシュノーケリングツアーなど幾つかのレジャーをみんなで楽しんだり銘々で過ごしたり、予定として組み込まれていたスチル撮影の仕事をしたりとしていたけれど、滞在15日目にあたる今日は全員が作詞に取り組んでみる日にしたらしい。

ということで、私ひとりで2日分の生鮮食品を買い出しに行くことにした。

一磨くんはいつでも車出しをしてくれるとは言ってくれたけれどそういうことなら邪魔をするわけにもいかないし、今日はマネージャーさんたちの誰も居ないらしいので島内循環バスに乗って行こうと思う。

ヴィラの冷凍冷蔵庫を開けて中に入ってるものを再確認し、買うものをチェックしてキッチンの勝手口から出ようとしていた時だった。


「あーゆーかー」


そう間延び感のある声で背後から私を呼んだのは京介くんだ。

お昼ごはんも食べたしどうしたのだろうと内心首を傾げながら返事をすると。


「あれ? お出かけ?」

「ああ、うん。 買い出しにね」

「誰かと一緒に?」

「いや、ひとり。 バスで行ってくる」

「……オレも行く! ちょっと待ってて!」


私が返事をするよりも早く京介くんはキッチンを出ていき、そしてボディバッグを持って戻ってきた。


「お待たせ。 行こ」

「ちょ、ちょっと待って! 今日はみんな作詞に取り組む日にするって言ってなかった?」

「気分転換♪」

「えー?」


さっき部屋に戻ったばかりでそれが必要なほど時間は経ってないと思うんだけど。

でも、芸術的感性と閃きがモノをいいそうな作詞のことなんて私には分からないし。

でもでも…と私が考え倦ねている間に、京介くんは既に電動カートを始動させてハンドルを握っていた。


「愛優香ー、行くよー」


進捗状況は気にはなるけど、そもそも20代半ばの彼に向かって小学生の母親が言う「宿題終わったの?」的なことを私が言うのはなんか違う。

ま、本人がいいならいいのか、と気持ちを切り替えてカートの助手席に座った。

ヴィラ前のなだらかな坂道を上がって本館に到着、それから専用の駐車スペースにカートを置いてホテル前のバス停に向かう。


「あと10分くらいでバス来るから」

「バス停って近くはここだけ?」

「ううん、そこの遊歩道を下りてちょっと行ったところにもあるわよ」


そう言って木が生い茂った林の一所にある、遊歩道の入り口を指差す。

今回はホテルに寄ってくれる循環バスがタイミング良くあったからそれに乗ることにしたのだけれど。


「愛優香、あっちに行ってみようよ」

「遊歩道を下りるってこと? 足場、ちょっと悪いわよ?」

「うん。 行こ」


京介くんがスタスタと歩いていくからその後ろを追いかけていく。

コンクリートの階段を10段ほど下りたところから先は枕木と土の階段に替わり、さらに行くと少し整えられただけの小さな遊歩道となって少し足場が悪くなる。

が、ホテル前から下のバス停まではノンビリと歩きながら森林浴をするのにちょうどよかった。

植物からの湿り気が濃くてモワッとするところもあれば、吹き抜ける風が緑の爽やかな匂いを運んできてとても気持ちのいいところもある。

また、1日ごとに強くなっていく太陽の光を木々が遮ってくれて暑さはそんなに感じない。

と。

他の物に気をとられていたせいか、少し泥濘んでいた場所で足を滑らせてしまって―――。

転ける…!と思った次の瞬間、体を強く引っ張られて何かにぶつかってしまった。


「……あっぶな!」


間近で頭の上の方から聞こえてくる声に京介くんが抱き止めてくれたことに気付く。

引っ張られた時の力強さに男らしさを感じて少しドキリとしたものの、私は慌てて彼から離れた。


「ごっ、ごめんなさいッッ! 痛くなかった?」

「ぜーんぜん。
 愛優香ってたまーにおっちょこちょいやるよね」

「ほんと、ゴメン…」

「いいって。 でも」


逆接の言葉のあとのわずかな沈黙に首を傾げていると、少し考えるようにして、それから彼はスッと手を差し伸べた。


「?」

「ま…、また滑るとヤバいから繋ごっか」


耳をほんのりと赤くして照れた表情の京介くんが少しぶっきらぼうに、だけど優しさを含んだ声でそう言う。

私が「ありがとう」と言って差し出されたその手を取ると、また少し考えた彼は「やっぱり危ないから掴まって」と腕を絡ませるように組み替えた。

その気遣いは心の奥深くに灯るなにかをくすぐり、思いがけないこの状態に心臓がうるさく騒ぎだした。

そしていつもよりはるかに近い距離で私たちは遊歩道を歩いて行くのだった。



〜 to be continued 〜

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 あなたと始める物語は。37

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作





それから数日後、私のここでの最初のお休み前日。

夕飯時に珍しく全員が集まった時のことだった。

誰から聞いたのか、京介くんが尋ねる。


「愛優香、明日はお休みだって?」

「うん。 ポトフと他に幾つか料理を作ってあるから、適当に食べ―――」

「みんなで遊びに行こ」

「―――へ?」


ニコニコ顔の彼の突拍子もない提案に一瞬思考が停止する。

が。

一緒に遊ぶとは言っても、アクティビティはいろいろあれど水着を持ってきてないからバナナボートなどの水濡れ系はNGだ。

となると、島内の食べ比べとか景勝地巡りとかになるけれど。

そんなのでいいのかしら。


「明日の午後、ちょうどパラセーリング空いてるんだってさ」

「それって海の上を飛ぶやつでしょ? 水着必要なんじゃないの? 私、持ってきてないわよ」


すると、亮太くんが前のめりになって言う。


「持ってきてないならボクが買ってあげる! とびっきりなやつね! あーちゃんは絶対にそれ着て!」

「―――ぶっ…ゴホゴホッ…。
 と、ととととびっきりなヤツって!」


亮太くんの言葉に翔くんが噴飯したけれど、どんなデザインを想像したのだろう。

青年男子がグラドルレベルのものを想像しても不思議ではないけど、勝手に想像して実物を見て勝手にショックを受けて勝手に憐れむのは止めてほしいなぁ。

まぁ、女として生まれたからには着られるものなら着てみたい気はするけど。

……着られるものなら、ですけど。


「翔ちゃんのえっちー」

「はぁっ?! お、お前がとびっきりなのなんて言うから…!」

「翔、どんな水着を想像したんだよ」

「ど、どどどんなのって…!」

「あはは、落ち着けって」

「―――はい、そこまで。
 確か、水着もしくは濡れてもいい服ってあったから、水着じゃなくてもいいハズだぞ?」


翔くんをからかい始めた二人を止めるべく口を挟んだ一磨くんの言葉で、亮太くんが私をもからかっていたことに気付く。


「え、そうなの?
 …亮太くーん????」

「なんでバラすんだよー。
 でもさー、どうせなら買っちゃってもよくない? そしたらここのプールでも泳げるんだし」

「万が一にも海に落ちた時のことを考えたら水着の方がいいと思う。
 それに、参加できるアクティビティも増えるし買っといた方が」


おや、普段は興味なさそうな義人くんまで私の水着購入に賛成とは。

でも言われてみればそうなのか…な?

この数日の間に、何となく1日のスケジュールが掴めてきた。

彼らの食事の用意と衣類の洗濯をする以外、ハッキリ言ってすることがない。

共有部分の掃除にしてもロボット掃除機を走らせてるし、バスルームの掃除だって大したことない。

仕事の手伝いはもちろん出来ない。

とどのつまり、上手く時間を使えば自由時間がかなりあるのだ。

とはいえ、誰かが作詞の仕事をしてる時にここのプールで遊ぶのは気が引ける。

それで昨日は島内循環バスに乗って近くまで行って来たのだけれど。


「あーちゃーん、やろー。 人助けと思ってさー」

「人助け?」

「そそ。 作詞、なーんも浮かばなくってー」

「それ、マズいんじゃ」

「だからこそのアクティビティじゃん! 空から景色を見たら何か思いつくかもしれないし!」

「亮太、必死だな…」

「ま、分からないでもないけどね。
 実はオレもまだなーんにも思い浮かばないんだよねー。 亮太くんと同じくね」

「堂々と言うことかよ」

「ああ、それで。
 でもそれまで何にも浮かばなかったのに、気分転換とかでいきなりフレーズが閃くこともあるよな」


彼らの言葉を聞きながらそういうものなのかと思い、京介くんの提案を了承することにした。


「分かった。 そこまで言うなら」

「やった!」

「じゃあ、予約入れるね」


チーフさんも閃きのためならアクティビティをいくらでも使って構わないとも言ってたしね。

作詞について私が口を挟めるはずもなく、一緒に行動することが本当に彼らの助けになるのかは神のみぞ知るだけれど。

そんなこんなで翌日の午前中はホテル近くのマリンショップで水着と酔い止めの薬を調達し、私とWaveのみんなでパラセーリングの船がでるマリーナへと向かった。

ちなみに、亮太くんは水着を買ってくれると言っていたが、彼が選んだやつは固辞した。

…アラサー女子にアレはキツい。

てか、亮太くんはああいうのが好みなんだろうか。

なーんかわざとらしい勧め方をしてたけれどさ。

結局はボタニカルアートのフィットネス水着とビタミンカラーのラッシュガードを自分で購入。

亮太くんは色気がないと不満タラタラだったけれどアイドルでもセクシー俳優でもないんだから別に色気は要らんでしょ。

そうして迎えに来てくれたバスに乗って十数分、目的地に到着する。

今回参加するパラセーリングは1回の出港で受け付けるのは3組までらしく、客は私たちしか居なかったために船はすぐに出ることに。

フライトポイントに着くまでの間、パラセーリング用のハーネスを装着してもらいながら全員で注意点などのレクチャーを受けて―――。


「じゃ、愛優香、行こっか」

「うん」


乗船前に決めたとおり、私と京介くんが最初にフライトする。

それからスタッフさんに支えられながら後方のデッキに移動し、二人並んでパラセーリングのタンデムバーに装着された。


「愛優香、怖くない?」

「怖くないって言ったら嘘になるよ。 初めてだもん。 …ほら、見て? ちょっと手が震えてる」


笑いながら武者震いしてる手のひらを向けると、京介くんは「同じ」と言いながら自分のそれを見せてくれた。

二人で笑い合った次の瞬間。


「3、2、1、go!」

「「!!!!」」


スタッフさんの声と同時にデッキから身体がフワリと浮き、後ろへと引っ張られた。

速度を上げて海を滑走するボートと風を受けるパラシュートが私たちを空へと導く。

風の力でグングンと高度が上がっていく中、生まれて初めてのパラセーリングで空中から見下ろす海はこれまでに見たことがないほどキレイで―――。


「すごいね!」

「すげぇ…」


私たちは同時に感嘆の声を挙げた。

眼下に広がるのは、濃藍、紺青、瑠璃紺、群青、紺碧、縹色、浅葱色といったあらゆる《あお》を携えた海。

それは何処までも続いていて。


「すごいすごい…! 海を独り占めしてるみたい!」

「オレも居るから、二人占め、だね」

「…ああ! ホント、そうね!」


子どもが口にするような言葉を肯定しつつ私は笑う。

この世に二人しかしないような錯覚を起こしながら私たちは僅か数分間の旅を終えたのだった―――。


〜 to be continued 〜

 

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 あなたと始める物語は。36

〜 Leak out ~

《ダーリンは芸能人》二次創作




そして翌日午前7時―――。

昨日の夜に今日の朝食を用意しなかったし、私もまだ摂り終えていないので自分の分も作ろうとヴィラへ早く行ってみることにした。

いつものように家事をしやすい服装に着替えて身支度をし、一人乗りの敷地内用電動カートでホテル本館からヴィラを目指す。

行きは緩やかな坂道を下るだけなのだけど、帰りは夜の道を登らなければならないのでホテルスタッフ用のものを借りることが出来たのはありがたい。

カートを駐輪場に停め、キッチンの勝手口から中に入ると、シンク前に誰かが立っていた。

一磨くんだ。


「愛優香さん?
 おはよう。 早いね」

「おはよう。
 いや、早いねはこっちのセリフ。 どうしたの?」

「ああ、目が覚めてしまってさ。 お腹も空いたから軽く食べようかと」

「そうなのね。 じゃ、何か作るよ」

「いや、愛優香さんの手を煩わせるのは」

「なに言ってんのー、これ、私の仕事だから。
 ところで起きてるのは一磨くんだけ?」

「たぶん。 部屋を出てくるとき義人はまだ寝てたし、亮太と京介と翔は明け方まで起きてたみたいだから」

「あはは、その3人は昼まで寝てるかなー?」


素早くエプロンを着けて髪を纏めた後に手を洗い、準備に取り掛かる。

軽くでいいと言うので、作るのはフレンチトーストと生野菜サラダ、それからオニオンスープ、マンゴーベースのスムージーにした。

それらの材料と調理器具を補助テーブルに並べてお料理開始。

オニオンスープは昼食でも出せるから多めに作ることにしよう。

先ずは外皮を剥いた玉葱3個を半分にして、涙対策のために数分ほど水に浸し、引き上げたら薄切りにして電子レンジで加熱する。

と、一磨くんが手を洗い始めた。


「見てるのもなんだし、手伝うよ」

「うーん、じゃあ…」


手伝わせるのはほんの少しだけ気が引けるけど、電子レンジ加熱でしんなりとした玉葱をさらに柔らかくなるまで炒めてもらうことにしよう。

炒めてる間は何もできないんだよね。


「焦げないようにきつね色よりちょっと濃い色になるまで炒めてくれる?」

「わかった」

「その間に、と」


フレンチトースト用の卵液を用意したら火を付けずにフライパンに流し込み、適当な大きさに切った食パンを並べて染み込ませる。

次に生野菜を洗って一口サイズにし、その上に裂いたサラダチキンを散らして一旦冷蔵庫へ。

それから鍋に水と顆粒状のコンソメを入れて火にかける。

沸くのを待ってる間にスムージーの用意だ。

昨日買ってみた冷凍マンゴーとパプリカ、それからヨーグルトをミキサーにかけて、ある程度、滑らかになったらブレンダーカップごと冷蔵庫へ。

鍋のスープが沸いた頃、一磨くんの方を見ると玉葱がちょうど良い色合いに炒められていた。


「一磨くん、それ、この中に入れてくれる?」

「了解」


コンソメスープの中に琥珀色まで炒められた玉葱を入れてひと煮立ちさせ、そして最後に卵液がある程度染み込んだフレンチトーストをバターで焼いて完成!


「じゃあ、盛り付けたら持っていくわ」

「あ。 あの、オレと愛優香さんだけだしここでよくない、かな?」


……向こうのダイニングテーブルまでほんの数歩なんだけど、ここにはちょうど椅子も2つあるしね。

彼がそれでいいのなら。


「んー、そうね。 そうしよっか。
 じゃあ、手分けして盛り付けよう」

「うん」


お皿とスープカップ、サラダボウルとグラスを出して、二人してそれぞれ自分の分を盛り付ける。

ハチミツとケーキシロップ、いろんなジャムや生野菜用にドレッシング、それからカトラリーセットを並べて席に着いた。


「「いただきます」」


二人して手を合わせ、軽めの朝食を摂る。

自画自賛になるけどフレンチトーストとオニオンスープは結構美味しく出来たし、スムージーも甘みと酸味が絶妙で、レシピの分量どおりに作ったからか初めてにしては上出来。

一磨くんも気に入ってくれたのか「美味しい」と言っておかわりしてくれてるし。

よかった。


「ところで愛優香さん、今日の予定は?」

「ん?
 そうねー、とりあえずは洗濯したらお昼の準備をして―――」

「―――いい匂いがすると思ったら。
 一磨、抜けがけ?」


その声にキッチンの入り口を見ると、京介くんが居た。

抜けがけ、とは?

あ、一人だけ先に食べてズルい、かな??


「お前、抜け駆けってなー」

「京介くんおはよう。 一緒に食べる?」

「おはよ、愛優香。
 グラスのその黄色いの、なに?」

「マンゴーとパプリカのスムージーよ」

「それ、ちょーだい」

「ほかは?」

「入らなさそうだからいいや」


そう言いながら京介くんは一磨くんのお皿に残ってたフレンチトーストを一切れつまんで口に放り込む。

行儀が悪いなーと思いながら辛うじて一人分だけ残ってたスムージーをグラスに注いでテーブルに置いた。


「で、一磨、愛優香の予定を聞いてたけど?」


ん?

なんだ、この雰囲気は。

すると一磨くんは深くため息をついて言った。


「市場に行くなら車を出そうと思っただけ。
 変な勘繰りするな」


んん?

勘繰りってどういう意味で言ったのかさっぱり分からず、目だけで二人を見比べる。

険悪そうでは、ない。

でもなんなんだ、この何とも言えない雰囲気は。


「ごちそうさま。
 愛優香さん、車出しが必要ならいつでも言って」

「あ、うん。 ありがとう」


一磨くんは軽く手を挙げてキッチンを出ていった。

で、私は残った京介くんに尋ねる。


「ごはんどうするの? 食べるなら用意するし、まだ食べないなら、私、洗濯するけど」

「んー、もうひと眠りするー」


そう言って京介くんは欠伸をしながら出ていく。

????

何をしに来たんだ、彼は。

…まぁ、いいや。

なにはともあれ、先ずはランドリーボックスに入っている彼らの洗濯物を片すことにした。

インナーとアウターを分け、さらにアウターの上と下に分けて順番に洗濯をしていく。

洗い終えた物から片っ端に直ぐ側の物干し用サンルームに干していった。

天井の半分は硝子張りになっていてお日さまがよく差し込むから、お洗濯物もすぐに乾くだろう。

全てを干し終えて私は大きく伸びをした。


〜 to be continued 〜