妄想小説?と呼べるのか否か

妄想小説?と呼べるのか否か

艶が~るに関する内容です。

Amebaでブログを始めよう!
皆様お元気ですか?
お久しぶりです、蟻んです。
あまりに久々過ぎて、ブログの書き方忘れてるっていう笑



さて。3年ぶりのブログですので、とりあえず誰得の近況報告でも。
あ、あけましておめでとうございます(遅い



2014年に新潟に越してきてから、小学校のPTA役員をやったり、幼稚園の謝恩会係をやったり、仕事を始めてみたりと、中々多忙な生活を過ごしておりまして。

まぁその中で、テレビに何度も出演するとか中々無い経験もさせてもらえたし、いい友達が出来たり、病みそうなぐらいに辛いこともあれば、楽しい思い出も出来たんですよ。








うん、出来た。
出来たんですけどね?



やっぱり、こう、私の読者の皆様にはお馴染みの彼(翔太)が抜けた穴は、簡単には埋まらなかったわけですよ。
(※大層な言い方してますが、ただゲームに飽きただけです。でも、彼目線は良かったし、CDは翔太が出たら買うと思う。)




が、しかし!
2015年だか2016年の最中(曖昧)、
彼は現れたのです!!!




それが誰かって?
では、紹介しましょう。


唯川至くんです!!

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はい、今、「また首痛めてるぞコイツwwwww翔太かよwwwww」とか思った人。
安心してください。私も思いました。←


彼は、CMとかでもよく流れてる、乙女ゲー(…だよな?)の「ダウト」に登場する、主人公の相手役のうちの1人です。しかも、同い年。

やー、でも、予想以上に面白かったんですよ。本編は。
もう1つのオフィス編も面白かったし。

ただねー…イベントで萎えちゃったのと、本編攻略したら、その後は登場キャラ全員じゃなくて、一部しか攻略出来ないのがねー…。
出来れば、オフィス編の楠くんを攻略したかった。

なので、今は再び空いた穴を、銀魂アプリとすみっこぐらしアプリとマリオランで埋めている状況です。←





あとは、再び色々と始動しようと活動中です。
ジャンルはまったくもって別物になりますが、形になりましたら、お知らせさせてください。



なんか大して3年前と変わってない気がする。
そんなもんかな。
では、また!





お久しぶりです。蟻んでございます。

実は、皆様にお詫びしなければならないことがありまして、こうして書かせていただいております。

昨年行われた艶展、及び大雪に見舞われた艶市の運営陣、行かれた皆様。本当にお疲れ様でした!
私個人が東京最後だったし、艶市行きたかったけど、雪で断念してしまいました。

さて、そんな艶展・艶市で私も作品とコメント帳を出させていただいたのですが…

その作品・コメント帳の両方が、艶市の搬出の際に紛失してしまったらしいのです。
運営の方に連絡を数回取ったのですが、『探してみる』と言われたまま、以来連絡しても一度もお返事がないので、一体どうしてこうなったのか私もよく分からないのですが…。

そもそも、艶展から艶市への搬出・搬入を全て運営にお任せし、艶市から搬出されたであろう後も、到着予想日が過ぎるまでアクションを起こさなかった私にも問題があったのですが…。

大事な作品が戻らないのは凄く悲しくて辛いですが、それよりも(書いてくださった方がいらっしゃるかどうか今となっては分かりませんが)貴重なお時間を使っていただいてまで書いていただいたコメント帳が戻らないことが辛くて、申し訳なくて、このように書かせていただきました。

本当に申し訳ありませんでした。
文面では軽くなってしまうかもしれませんが、心よりお詫び申し上げます。

運営様、こちらのブログをご覧いただけておりましたら、今一度ご連絡をいただければと思います。

ならびに、私としても、苦労して産み出した大事な作品を紛失されたこと、誠に遺憾です。
これから運営される方、二度と私のような事態が起こらないよう、よろしくお願い致します。

こんな事になるなら、艶展に行ったときに、コメント帳見ておけば良かった…はぁ。



最後に。
この度、東京から新潟への転居が完了しました。
東京、京都でお会いした皆様、ありがとうございました!(*´ω`*)
またお会いできることを祈って!

それから、こちらのブログ、ぐるっぽでのお話はただ今休止中です。
たまに出没はしますが、基本的に艶がに飽きてしまったので←、もう書かないかなと。

申し訳ありませんが、よろしくお願いします。

Android携帯からの投稿

※大変遅くなりましたが、販☆お申し込みの方へメールを送らせていただきました。

ご確認のほどよろしくお願いいたします。


さて。こちら、ブログで公開している『勿忘草』 の続編です。艶展でも出させていただきました。

タイトルになっているラワンデルとはラベンダーのこと。花言葉は『あなたを待っています』

この話の前身となる勿忘草の花言葉は『私を忘れないで』

勿忘草は主人公の思い。ラベンダーは翔太の思い。そんな所から、タイトルをつけさせていただきました。

なんて、どうでもいい知識はさておき、お話は何話かに続きます。

よろしければご覧ください。


…どうでもいいけど、公開するにあたって、過去の自分のブログ読み返したんだ。

なんていうか……テンションたっけええええええええwwwwwwwうえwwww

読んでて恥ずかしくなったのはここだけの話です。


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『ラワンデル』~「勿忘草」その後~





真っ青な空。遠くに佇む入道雲。太陽の熱が肌を焼く、8月。夏休み。
ここ数日、外の気温は人の体温並みに上昇しており、外に居るだけで体中の水分が抜けていく気さえする。
そんな中私は、遊びの誘いには乗るものの、この暑さのせいで外に出るのも憚られ、それ以外の日は家で静かに過ごしていた。


京都から帰って来た日から、翔太くんとはいわゆる、「お付き合い」というものをさせてもらっている。だけど、学校ではいつもの5人で話し、行き帰りや休日は翔太くんが部活ということもあって、なかなか二人っきりになるということもなかった。
それでも、久しぶりに5人で話すということも、彼のバスケ姿も見ることもすごく懐かしくて……色々と話したいことはあったけれど、今はそれもいいと思って、夏休みまでの日々を過ごしていた。
そうやって過ごす日々の中で、一つだけ驚いたことがある。それは以前に比べて、はるかに携帯を使わなくなった事だ。
あの時代で毎日を生きてきて、いつしか『文を書く』ということが、私の中では当たり前のことになっていて。前はメールの返信が来なくて、「何か変な事でも書いたかな……」と不安になってしまったこともあったけど、今は大して気にも止めなくなっていた。
だからこそ、翔太くんとメールや電話をしなくても、あの幕末の頃よりも学校などで顔を合わせることが多くなった分、特に不安がることもなくて……と、こんな話をしたら、莉奈に、「熟年夫婦じゃないんだから」と突っ込まれた。……確かに、自分でもそう思わない事もないけれど。


話を戻す。
だから夏休みに入って、バスケ部の夏練習のせいで会えなくても、少しのメールと電話、後はたまに会えていれば、私にとってはそれでよかった。
事実、翔太くんとは、たまの部活の休みの日とかに外でデートしたりもしていて、その時にあの幕末での日々の事なども少しは話していたりもしていた。
だから、不満なんてものは何もない。
ただ、大好きな人と一緒にいることが出来る。私はそれだけで十分幸せだった。


だけど、この日だけは違っていた。






『明日、家に来ない?』


8月の最後の土曜日。私はリビングで一人、大きなソファーに腰掛けながら、携帯をじっと見つめる。そこに書いてあるのは、たった、その一行だけの文章。昨夜、突然、翔太くんから送られてきたものだ。
男の人からすれば、文章としてみれば十分に簡潔的で、何の問題もない物だったと思う。
だけど、彼からのメールとして見れば、あまりにも不可思議ではあるとも思った。

(……これって、どういう意味なんだろう?いや、でもきっと、深い意味なんてないはずだよね。……うん、翔太くんだし……)

携帯をテーブルの上に置き、言葉とは裏腹に五月蠅い心臓を落ち着かせるために、ソファーに横になる。だけど、無理矢理自分を納得させてみても、やっぱり気になるものは気になってしまうわけで。
もう一度手に取り、ボタンを押してディスプレイを見る。かといって、何度見返したところで文字列が変わるはずもない。
それに、こんなことをここで考えていても、正解が出るわけがない事も分かっている。
だからこそ、「行く」という返事と、時間的な事だけはメールしたけれど……彼が前後に何の前置きもなく、こんなメールのみを送ってくるということに、私は疑問を感じられずにはいられなかった。

(……でも、本当にどういう意味なんだろう。いや、でもあれだよね。多分、意味なんて本当にないし、期待しているようなことは何も……って、期待って!)

頭をぶんぶんと横に振って、一度大きく深呼吸をしたあとに、天井を見上げる。
目に入った時計が表示する時刻は、朝の10時半。待ち合わせの時間は13時。
残り時間は2時間半もあるのに、緊張のせいか、私の胸は一向に落ち着くことが出来なくて。
支度なんてものは、とうの昔に終わっている。
母から出されたお茶を飲んでいても味が分からない。延々と垂れ流される、いつかの再放送のドラマを見ていても、何の感情移入も出来ない。朝ごはんも中々喉を通らなかったし、お腹も空かない。だからといえども、このままの状態を2時間も続けている訳にはいかない。

(うーん……何かしてれば気がまぎれるんだけど……何か……何か…………?)

何かないかと思考を巡らす。だけど、緊張しきった頭では、何か案が出てくるはずもなくて。
仕方なく、携帯の代わりにリモコンを手に取り、チャンネルを適当に回す。
だが、そんな時。あるCMの最中に、一つの通販番組が私の目に入った。

(……あ、そうだ)

ソファーから立ち上がり、テレビの電源を切る。
私はそのままリビングに背を向けると、キッチンへと向かったのだった。





「いってきます」。そう玄関で声を出す。リビングの奥の方から、母の「いってらっしゃい」の声が聞こえたのを確認して、扉を閉めた。
久しぶりに履いた、少し踵が高めのサンダルに足を取られながらも、彼の家を目指す。
今日も雲一つない晴天。まだ出て数分なのに、背中を汗が伝うのを感じる。保冷剤を入れてきたけど、大丈夫なんだろうか。そう思って、手元の箱に空いた手を添える。よかった、まだ保冷剤も溶けてはいないみたいだ。
そんな暑さの中――それでももう9月に近いからなのか、時折涼しげな風が吹いて、私のスカートをひらひらと揺らす。
それだけでも幾分か心地よさは変わるものだと、裾を押さえながら、思った。


毎日毎日、6年間もの間通った、小学校までの道を辿る。彼の家はその小学校のすぐ近くで、仲が良かった頃は、学校帰りに何度もお邪魔させてもらっていた。
一歩進むたびに、あの頃の思い出が鮮やかに蘇る。だけど、5年も経つと、やはり――少しだけではあるけれど、街の雰囲気は変わってしまっていた。
翔太くんとブランコをして遊んだ公園。お花を摘んで、花の冠を作った野原。
鬼ごっこをして遊んだ噴水広場。夜中にこっそり抜け出して、星空を見上げた駐車場。
それらが全て住宅地や区画整備で無くなってしまっているのを見て、ようやく翔太くんの家に着いた頃には、さすがにちょっと感慨深くなってしまっていた。
―…が、しかし。インターフォンの前に立った瞬間、そんな思いも吹っ飛ばされる。
真っ白な二階建て。車庫と庭が付いており、庭にはいつも手入れの行き届いた色とりどりの花が咲き乱れている。
そんな翔太くんの家に着いたはいいけれど、どうやって挨拶をすればいいかを考えてはいなかった。浮かれすぎにも程がある。

(……そうだよね、家に行くってことは、ご家族の人も居るわけだし、きちんと挨拶をしないわけにもいかないし……。えっと、何て言えばいいんだろう?「お久しぶりです、○○です」?それとも、「○○と申しますが、翔太くんはいらっしゃいますか」?……うーん……)

鞄に付いている時計を見る。時刻は12時55分。ここで悩んでいる時間はない。
というか、もたもたしていたら、箱の中の保冷剤も溶けてしまう。

(ええい、押しちゃえ!!なんとかなる!)

目を瞑って、勢いよくボタンを押―――そうとした瞬間、突然玄関の扉が開く。
誰か家族の人が出てきたと思って、慌てて身なりを整える。そうして深々とお辞儀をしながら、早口で私は言葉を発した。

「あの、お久しぶりです!私、昔よく遊びに来させていただいておりまして、現在翔太くんとお付き合いさせていただいております、○○と申します!翔太くんのことは大好きで、えっと、これからもずっと傍にいさせて頂けたらなんて!ああ、えっと、よろしゅうお頼申します!」


瞬時に、さあっと血の気が引く音が聞こえる。同時に、冷や汗が伝う感覚がする。
「お頼申します」って、何。
ここはお座敷でもないし、京都でもない。ましてや、私は京都の人でもなんでもない。
そして、一体私は何の告白をしているんだ。好きだと伝えてどうする。
しかも、よりにもよって、初めての彼のご家族への御挨拶がこれって……すごく怪しいにも程がある。というか、お久しぶりも何も、私の事覚えていない可能性もあるというのに……。なんとかなんて、これっぽっちもならなかった。


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その②へ続く。

こちら、無料配布で出しました、翔太×主人公の水エンドその後のお話です。

なるべくR☆18にならないように心がけましたが……。

多分、艶市でも無配として出してもらえるのかな?8P折り本で出してますので、よろしければお持ち帰りくださいませ。


という前置きはさておき。どうぞ!!


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 つつじの花が咲き乱れる、五月。
 雲一つない晴天に映える太陽は、まもなく真上に差しかかろうとしている。
 夏が近いせいか、それともお洗濯ついでに龍之介と遊んだせいなのか。昼食の支度をする私の首筋を、汗が一筋、静かに伝った。
「……よし、出来たっと。あとは龍之介が起きるのを待つだけかな……」
 くつくつと煮立つ鍋をかき混ぜる手を止め、火を止める。そうして、物音を立てないようにして、台所横の部屋へと足を運んだ。
 室内には、小さな男の子が一人、畳で横になっている。余程遊び疲れたのか、「ご飯を作るから一度お家に上がろう」と言うと、彼は素直に上がり、いつしかそのまま眠りについてしまったのだ。
 枕元に散らばるつつじの花々。布団で穏やかな寝息を立てる龍之介の傍に横たわって、そっと髪の毛を撫でる。掌に柔らかい感触を感じながら、思わず自分の口元が緩むのを覚えた。
 短い髪の毛に、長い睫毛。すっと通った鼻筋。桃色のぷっくりした唇は少し開かれていて、そこから僅かに寝息が聞こえてくる。
 髪の毛の色こそは私に似たけれど……。
「……ホントそっくりだな」
「……何が?」
「龍之介は翔太さんにそっくりだ……っ!?」
 足音もなく、突然後ろから聞こえたその声に、思わず体がびくっとする。
 その弾みで龍之介の頭を強く撫でてしまって。起こしてしまったかと思ったけれど、彼は一度「んー……」と唸って体勢を変えただけで、起きることはなかった。
 上体を起こして後ろを振り返る。
「お、おかえりなさい!あれ?今日はもうお仕事終わりなの?」
「ただいま。珍しく仕事が早く終わってさ。大久保さんにも『たまには早く帰ってやれ』って言われたのもあって、龍之介と遊ぼうかと思って帰ってきたんだけど……ごめん、寝てたんだな」
「うん。さっきお昼寝始めたばかりだから、あと1時間は起きないと思うけど……」
「……だよな。まあ、起きたら遊べばいいし。着替えてくる」
 そう言うと、彼は踵を翻して静かに部屋を出て行こうとする。
 その姿を見つめながら、私はとあることを思い出していた。
(そういえば、さっき………)
 それは、先ほど外で家事をしていた時のことだった。
 さっき、洗濯をしながら龍之介と遊んでいた時。お隣のおばさんがおすそ分けに来てくれて、そのまま他愛もない話をしていたんだけど……。ある話に驚かれてしまって、「だったらちょっとやってみればいいじゃない」と念押しされたのだ。
(……そうだよね、うん。たまには、いいよね?)
 少し乱れた龍之介の上掛けをきちんとかけ直して、部屋を出て行った翔太さんの後を追う。そうして、別室に入ろうとした翔太さんの姿を見つけて、思わずその腕を掴むと、あまりの突然の事に驚いたのか、彼は目を丸くしながらこちらを見ていた。
「……ど、どうしたんだ?そんなに慌てて……」
「……あの、ね。……その……」
 勢いで追いかけてきてしまったものの、これからを想像すると、意外と恥ずかしいことだということを実感する。
 段々と頬が熱くなっていく。だけど、先ほどの勢いをなんとか復活させて、翔太さんの顔をじっと見つめた。
「……ん?何?」
「そ、その……脱がしていい?翔太さんのこと!」
「……………………。……はっ!?」
 言葉選びを待ちがえた。そう気付いたのは、笑顔だった翔太さんの顔が、多分私と同じぐらいに赤く染まったのを見てからだった。




「あー……なるほど。そういうわけか」
納得したように、翔太さんはタイを左右にずらしながら頷く。
「ごめん……変な言い方して……」
「……確かにびっくりはしたけどな」
「うう……」
 彼から預かった上着をしまいながら、顔を俯かせる。いや、彼の顔を見れないと言った方が正しいのだろうか。
 隣のおばさんに言われたこと、それは「旦那様の着替えを手伝うこと」だった。
 多分、今の時代の各家庭において、旦那様の着替えを手伝うなんていうのは当たり前の話だったんだろう。だけど、翔太さんも私も、現代での生活習慣のまま、着替えは各自で勝手にやっていたから……という話をしたら、驚かれてしまったわけで。
(だから、「じゃあ手伝ってみればいいじゃない」と言われたんだけど……本当に、何を言っていたんだろう、私……)
 はあ、と一度溜息を付きながら、下ろした腰を上げて、翔太さんからの着替えを預かろうとする。だけど、どれだけ待っても彼からは何も来なくて。
 俯かせた顔を上げて、翔太さんを見やる。すると、彼は何もせずにこちらをじっと見つめていた。
「な、なに……?どうしたの?」
「え……いや……」
 翔太さんは、私から視線を逸らす。だけど、その目元は朱色に染まったままだ。
 だけど、意を決したように、彼は私をもう一度見て、意地悪そうに笑って。
「……その、脱がしてくれるんだろ?」
 ただ、一言。私にそう述べたのだった。




 緊張で、手が震える。
 ベストを脱がし、ワイシャツのボタンを一つ一つ、ゆっくりと外して、彼からワイシャツを脱がせる。すると、必然的に翔太さんの裸の上半身が目に入った。
 ……その姿は何度も見てはいるものの、主に蝋燭の灯りとか、暗闇の中でしか見ていないものだったから、こうやってまじまじと見るのは久しぶりで――……って。
(何言ってるんだろう、私……)

 頭をぶんぶんと振って、次に取り掛かろうとする。だけど、次と言えばズボンな訳で……。さすがにここに触れるのは、いいものなのだろうかと戸惑うけれど、翔太さんは何も言ってこない。……ということは……。
 震える手を何とか抑えながら、ズボンに手を伸ばして、ベルトを緩めようとする。だけど、ワイシャツのボタンを取る時以上に、予想よりも緊張してしまっていて、上手く外すことが出来ない。
(……流石にちょっと、これは……)
 だけど、その瞬間。外そうとする私の手の甲に、翔太さんの大きな掌が重なる。
 そのまま、私の手をそこからどかすようにして、そっと払いのけた。
 驚いて、視線を上げる。間近に迫るのは翔太さんの端正な顔立ち。
 光に当たって、キラキラと色素の薄い髪が揺れている。
 少し焼けた肌の色。長い睫毛。すっと通った鼻筋。薄い唇は何かを求めるように、私に近づいて。
 吸い寄せられるように、私の顔も近づいていく。
 そうして、私達は唇を交わしたのだった。


「………っ、ふ……ぁ……っ」
 啄むようにして触れた唇は、いつしか熱を持ち、相手を求めるように深く深く絡まっていく。
 彼にしっかりと抱きしめられたまま、快感に身をよじろうとすると、それを逃さないかのように翔太さんは私の衿元に手を差し込んだ。
 大事なものを扱うかのよう触れられる度に、甘い声が漏れ出してしまいそうになるのを、必死で両の掌で押さえ込む。だけど、それすらも許さないように、掌を退けられて再び激しく口づけられて……合間から漏れるお互いの吐息が、また、私を欲情させた。
「……ずるいな、○○は。そんな顔してたら、触れるのを止めたくなくなるだろ?」
 切なそうな、だけど熱っぽい瞳で、彼は私を見つめる。
 思考が働かないままに、彼の言葉の意味を考えてはみたけれど、今、自分がどんな顔をしているかなんてわからなくて。
「そんなの言われたって、わからな……っ!?や、……そこダメ……っ!」
「……ん?……そこって、どこ?」
 いつの間にか衿元から抜かれていた手は、そのまま着物の裾から入り込んで、私の肌をそっと撫でる。だけど、決して肝心な所には触れてくれない。
 いつも、「触って欲しい」と。そうやって私がおねだりしないと、絶対に触れてはくれないのだ。
「……っ、も、そんなに意地悪しな…いで……っ」
「意地悪なんて、した覚えないんだけどな」
「……してるも、ん……っ」
「……そんなつもりはないんだけど……嫌だったら止めるよ?」
 楽しそうに彼は微笑む。……そんなつもりがないのも、私が今どんな気持ちかも、わかっているくせに、そんなことを言うんだ。
 私は、彼の鎖骨辺りに顔を埋めて呟く。
「……な、なんか翔太さん……前に比べて、本当に意地悪になった気がする」
「そう?前からこんなじゃなかったか?」
「……違うよ、前はもっと……私に触れるのも戸惑っていたし、一つ一つ恥ずかしそうにしてたっていうか……」
「……まあ、それは……俺も緊張してたし……馴れてなかったし。
でも今は、お前が可愛すぎて、止めることができないんだよ。悪いけど」
 抱きしめられた場所から伝わる、翔太さんの体温や匂いにドキドキして。抱きしめられた分だけ、私も強く抱きしめ返す。だけど、そんな最中も焦らすように動く彼の手は止まってはくれない。
 きちんと触れて欲しいのに、触れてもらえないのがもどかしくて。なのに、心とは反対に、身体は段々と熱くなっていく。
 彼とくっついているせいか、呼吸も上手く出来ない。少しずつ頭の中が真っ白になる感覚。脳内を翔太さんの匂いと指の動きだけが支配していく。
 少しずつ、自分の理性が無くなっていくのを感じる。
 もっと触れてほしい。願うのはたったそれだけだから。
 だから、翔太さんにおねだりをしようとした瞬間――……。


「……ははうえ~~……?」


 遠くから聞こえる龍之介の声に、私達はさっと体を離す。
 そのまま、とてとてと廊下を歩く音が聞こえて、慌てて着物の合わせを直して、身なりを整えた。
 ふと顔を上げると、翔太さんと目が合う。その瞬間、何故だかわからないけど、二人して、「ぷっ」と吹き出して笑ってしまって。
 龍之介の手によって扉が開けられる直前に、私達はもう一度キスを交わしたのだった。





「母上~?あ!父上!!父上も帰っていらっしゃったのですね!!」
「ただいま、龍之介。沢山寝れたか?」
「はい!父上と母上の夢をみました!」
「俺達の?」
 不思議そうに私達は視線を合わせる。
「……?どんな夢を見たの?」
「えっと……父上と母上が、仲睦まじそうにお話をしている夢です。それを見て、私も嬉しくなって……」
「……そっか」
 翔太さんはくすぐったそうに微笑みながら、龍之介を抱っこする。それが余程嬉しかったのか、龍之介も満面の笑みになり―…それに釣られるように、私の頬も緩んでしまった。
「よかったね、龍之介」
「父上の抱っこは、遠くが見えますね」
「母の抱っこは違うのか?」
「……母上の抱っこは……えーと、やわらかくてすきです」
「(そりゃあ、私は身長が高くないから、遠くは見えないよね……。っていうか、こんな小さい子が気を遣うって……)」
 我が子に苦笑いを浮かべていると、それに気付いたのか、翔太さんは龍之介を下ろす。
 そうして、「着替えて、ご飯食べてから遊ぼうな」と、龍之介を居間へと向かわせた。
 彼は手早く着物に袖を通し、帯を締める。そうして、もう一度私を抱きしめると、耳元で囁いた。
「……残念。物足りなかった?」

妄想小説?と呼べるのか否か

「…………っ!そ、んなことないけど……なんで?」
「そんな顔してたから。俺の気のせいだった?」
「~~~~~~~~っ」
 どうも私は、自分の感情が顔に出やすいらしい。
それを隠すように、両の掌を自分の頬に当てて。
「……気のせいじゃ、ないです」
 そう呟く。すると、翔太さんの、ふっ、と笑う声が耳に届いて。それと同時に、彼の唇が私の唇にもう一度落とされた。

「……じゃあ、続きはまた夜に」

 その言葉と共に。




終わり。


昨日の前編の続きです。そして、こちらも長いです。


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 7


「……べ、別にわては悩みも何も……」
「ほんに……隠し事する時に目が泳ぐんも変わらへんねえ」
 更に私の頭を彼女の白い手の平が撫でる。それが何だか、まるで母親に怒られているというか、窘められているような気がして、そわそわする。
「ね、姐はん。わて、もう子供やあらへんのどすえ?ええ加減……」
「自分の言いたいことをきちんと言えへんうちは子供や」
 ばっさりと切り捨てられてしまい、二の句を告げることが出来ない。……それは、彼女の言っていることが、図星だからなのだが……。
 しかし、言葉に詰まっていると、ふいに彼女は撫でる手を止めた。
「……まあ、わてに言いたくないんやったらええけど」
 菖蒲姐さんは、私の掌に金平糖を乗せると、いつも通りの綺麗な所作で立ち上がる。そのまま、裾払いをしたかと思うと、突然出入口の方へと歩き出した。
「姐はん? どこに……」
 私の声が聞こえていないかのように、彼女は部屋の出入り口の障子戸に手を掛け、音をたてない様にして素早く開ける。
 だが、私はそこで思わず硬直し、折角貰った金平糖を畳の上に散らかしてしまった。
 何故ならそこにいたのは、ここに居るはずのない―…先程、好きな旦那さんと一緒に二十六夜の月見へと出かけたはずの、あの彼女だったからだった。


 菖蒲姐さんはこちらに顔だけ向けたかと思うと、驚いた表情の私に満足したかのように笑って、「お気張りやす」と部屋を後にしていく。そして姐さんと入れ替わるようにしておずおずと入ってきた彼女は、私の足元に金平糖が転がっているのを認めると、近くに腰を下ろし、一粒一粒丁寧に拾い始めた。
 ……頭の処理が追いつかない。そもそもどういうことだ?彼女は今まで、今日の二十六夜講の為に走り回って……それで、秋斉さんからご褒美にと夜のお休みを貰って……。で、彼女の好きな旦那さんと二人で月見に行ったはず。なのに、その彼女は月も未だ昇り切ってすらいないのに、何故か私の目の前で金平糖を拾っている。
「……? 花里ちゃん?」
 私はそこで気付く。もしや、外に彼女の旦那さんを待たせているのではないか?きっと、何の気なしに、例えば忘れ物とかでこの置屋に帰ってきて……そう、それでちょうど鉢合わせて、菖蒲姐さんが「お気張りやす」とか頓珍漢なこと言うから、断るに断れなくて……。
「花里ちゃん!」
 突然聞こえた大きな声に、身体がビクッと震える。そこでようやく、自分の手のひらに零したはずの金平糖が全てしっかり収められている事に気付いた。いや、拾っていてくれているのは分かっていたけれど、ようやくそこに意識がいった様な気がして―…それほど、この事態に混乱していたのかと思うと、思わず自嘲気味に笑みが零れた。
「あの…大丈夫?」
「あ……うん?大丈夫って何が?」
「何って……花里ちゃん、ぼーっとしてたから。何かあったのかと思って」
 彼女はそう言いながら、先程まで菖蒲姐さんが座っていた座布団の横に、着物を正して座る。慌てて「座布団あるんやし、使うて」と言うと、彼女は申し訳なさそうに、座布団の上へと座り直した。
 ……だが、その光景を私の頭に、またしても疑問が湧きあがる。
「…………。何してはるの?」
「えっ!?や、やっぱりここ、座っちゃ駄目だった?」
「いやいや、そうやのうて……」
 私が何を言わんとしているかまるで分らないと言ったように、彼女は小首を傾げ、その場に留まる。
「ほら……その、ええの?行かんくて」
「……?どこに?」
「どこに、て……そら、旦那はんのところへやけど。今日、二十六夜講、一緒に見はるんやなかったんどすか?」
 その言葉に彼女は「ああ」と頷くと、更にその可憐な表情に笑みを浮かべる。
「帰ってきちゃった」
「……………………。はあ!?」
「うん、だからね。帰ってきちゃったの」
 彼女の言っている意味が何も理解できなくて、全くと言っていいほど言葉が出てこない。どういうことだ?……って、あれ? さっきもこんな自問自答やった気がする。
 それに気付いたのか彼女は私の手から金平糖の包みを優しく取り上げて、文机の上に置く。そうして、そのまま私の手をきゅっと握りしめ、事の経緯を少しずつ話し始めたのだった。


 8


「実はね。……帰ってきたんじゃなくて、帰されたの。あの人に」
 窓際の障子戸に透けた、外の光を眺めながら、彼女はポツリと話し出す。若干、『帰された』という言葉に憤慨したが、ここで口を挟むべきではないと思い、頷くだけにすることにした。
「私の考えていることが、あの人には分かっちゃってるみたいで。『帰っていいよ』って言われちゃったんだ。……本当は、自分から『帰らなきゃいけない』って言わなきゃいけなかったのにね」
「…………?」
 聞きに徹していたのだが、彼女の言っていることが要領を得ない。思わずつっこみかけたが、その時―……。
「あのね、花里ちゃん。私に隠している事があるよね?」
 彼女が、ようやく本題を切り出した。
「隠し事……?そないなもの、あらへんよ」
「嘘。だって、花里ちゃん、最近元気ないよ。それに……」
「それに?」
「私と居る時だけ、心から笑わなくなった」
 まっすぐ私を見つめながら投げかけられたその言葉は、いとも簡単に私の行動を停止させる。それを肯定と受け取った彼女は、案の定一つ溜息を付くと、「本当のことを話して」と言った。
「……い、嫌や」
「どうして?」
「…………」
 どうしても何も。こんな子供染みた嫉妬を本人に曝け出してしまえと言うのか。例えそうだとしても、呆れて、嫌われるかもしれない。友達を取られたと思うなんて、最悪嫌われるかもしれないのに。
 だが、彼女は柔らかく私の手を握り直す。白くて小さな手。だけど、なんだか心地いい。
「……何を心配しているか分かんないけど、何を話されても、私、花里ちゃんの事を嫌いになんかならないよ」
「……そんなの、わからへんやん」
 無意識に出た言葉に対して、はっとして口を噤む。だが―…。
「ないよ。それだけは、絶対にない」
 はっきりとした口調で述べる彼女の瞳には、嘘や偽りなどが宿ってないことぐらい、私にもわかる。
「……だけど、未来のことなんて誰にもわからへ……」
「わかるの。絶対に私は嫌ったりしない。だって、私……」
「…………?」
「……私、実は、150年後の未来から来ているから。未来の出来事は大体知っているんだよ」
 その言葉に呆気にとられた。真剣な顔をしながら、彼女がこんな冗談を言うなんて思わなかったから。……だけど、次に自分の口から出たのは、微かな笑い声。何だか、今の彼女になら、何を話しても受け入れてくれそうだと、思った。
「せやったら……その未来のお嬢はんの言う事信用せんとね」
「……信じない、よね。」
「ん?」
 聞き取れないほど微かに呟いた彼女は、首を横に振り、「何でもない」という。
 そうして、私は結局、少しずつ口を開いたのだった。


 9


「せやから、……その、好きなお人が出来はったことが、悲しかったんどす」
  ああ、やっぱりだ。こんな話聞かされたら誰だって困惑するだろう。事実、彼女は今も口元に手を当てたまま、大きく目を見開いて、微動だにしていない。
 ……というか、言っていて思ったが、これは……。
「え……っと……つまり、要するに、花里ちゃんは私の事が好きってこと?こう……男の人を好きになるのと同じ感情で」
「ちゃいます。……そら、好きは好きやけど、恋愛感情やのうて、友情としてであって……」
「そ、そうだよね。ごめんね、ちょっとびっくりしちゃった」
 まさか、想像通りの答えが返ってくるとは思わなかったが、とりあえず誤解は解けたので良しとする。
 すると彼女はほっとしたように顔を綻ばせると、私の文机にある金平糖に手を伸ばす。そうして、その中の一粒を私の掌に乗せながら、ゆっくりと話し始めた。
「……そっか、そういうことだったんだね。私、てっきり花里ちゃんに何か嫌な事をしちゃったのかと思って…。でも、そうじゃなくて、良かった」
「……すんまへん」
「ううん。……でも、花里ちゃんがそんなこと思ってるなんて気付いてあげられなかった。ずっと傍にいたのにね」
「それは違……っ」
「違わないよ。気付いてあげられなくて、本当にごめんなさい」
 深々と頭を下げる彼女に、慌てて上げるように言う。すると彼女は、それを聞きいれたせいなのか何なのか、すぐに頭を上げて、「……でも、あともう一つだけ」と、姿勢を正した。
 釣られる様にして、私も姿勢を正す。すると彼女はそれを見ながら息を吐き、ついに話し始めたのだった。
「……私ね、本音を言うと、ここに初めて来た時、本当に心細かったの。幼馴染の男の子と逸れて、そのまま右も左も分からぬうちに、連れて来られて。
でもね、すぐにそんな気持ちはふっとんじゃったんだよ。……花里ちゃんに会ってから」
「……わて……?」
「うん。そう。本当に不安でたまらなかったのに、花里ちゃんは私に満面の笑みで笑いかけてくれた。ただ、それだけで?って思うかもしれないけど、本当にそれだけで一瞬で救われたの。
それからも沢山話しかけてくれて、一緒に笑って、泣いて、どんな時でも真剣に悩みを聞いてくれて。……花里ちゃんには、感謝してもしきれない」
「そないなこと……」
「ううん。そんなこと、あるんだよ。
……それにね……そんな花里ちゃんだからこそ、私はずっと貴女に憧れてた。花里ちゃんみたいになりたくて、一生懸命色々な事を練習したりしてたんだ。
―…いつも私の話を聞いてくれる花里ちゃんの悩みや話を聞けるように。私にそうしてくれたように、花里ちゃんが困った時に背中を押してあげられるようになる為に。
そうやって、花里ちゃんと肩を並べられるようになる為に……私は、頑張っていたつもりなの」
 言葉が出てこない。彼女が今まで頑張ってきていたのは、私の為?いや、勿論全部が全部そうでない事ぐらいは分かっているが……私の事なんて、微塵にも思ってないんだろうとばかり思ってたから。
「あ、あの……」
 しかし、彼女は私の声を遮り、言葉を続ける。
「……ごめんね。だから、その……」
「…………?」
「……その、私にとって花里ちゃんは一番大切な、失くしたくない友達なの。

だから、私と親友になってください!!」


 そう、頭を下げる彼女に呆然としてしまった。本日何度目かの行動である。
「……え?」
「……わ、私ね。こんなこと思ってるなんて普段恥ずかしくて言えなくて……っていうか、こんなこと言ったら重すぎて、花里ちゃん、私の事嫌いになるかと思って言えなかったの」
 恐縮しながらも耳まで真っ赤にしてそう呟く彼女がとても可愛らしくて。彼女に惚れる旦那さんの気持ちが、少しだけわかったような気がした。


10


 俯いたままの彼女の手を取り、部屋の窓辺へと向かい、空を見上げる。二十六夜の月が間もなく出るようで、空が僅かばかり白く光っているように見えた。
 『私が傍に居る事すら忘れているのだろう』。私はそう思っていたけれど、それは勘違いだと知った。それどころか、彼女もまた、私と同じように私の事を大切にしていてくれたのだ。それが知れた今、私の胸に寂しさはもうない。……それに、夜空の下、こちらへ歩いてくるあの影はきっと……。
「……もうすぐ、月が昇りそうやな」
「……?……うん、そうみたいだね」
「よし。じゃあ行こか、旦那はんのとこ」
「……えっ!?」
「せっかく頑張ったんやし、旦那はんとこの月を見いひんのは勿体ないやろ?」
「で、でも……私は花里ちゃんと……」
「せやから」
 私は彼女の手のひらをぎゅっと握りしめる。すると、返すようにまた、彼女もぎゅっと握りしめてくる。
「旦那はんとの月見が終わりはったら……わての話、聞いてくれはる?……今度は、親友として」
「……!!うん!!」
 いそいそと支度を始める彼女は知らない。すぐそこに、彼女を送り返したはずの旦那さんが来ていることを。
 私は旦那さんに向かって、一つ会釈する。すると、向こうも気付いたのか、こちらの解決した様子に、僅かに笑って返事を返してきた。
 そのまま踵を返そうとする彼に向かって、思わず身振りで引き留める。
「……花里ちゃん?どうしたの?」
「へえっ!?い、いや、何もあらへんよ。ほら、行った行った」
「??……じゃあ、行ってきます」
「へえ……お気張りやす」
「あ、そうだ」
「……?どないしたん?」
 彼女は足を止め、くるりと振り返る。そうして、私をぎゅっと抱きしめると、そのまま、あの花の様な笑みを私に向けた。
「花里ちゃん、大好きだよ」
 思いもよらぬ言葉に、私の顔は一瞬で熱くなる。まったく、何を言い出すのかと思えば……。
「……っ、もー、早よ行き!」
「あれ?照れてる?」
「照れてへん!」
 彼女はそのまま笑いながら、部屋を後にする。襖が完全に閉まるのを横目で見ながら、私もまた、彼女に聞こえない声で「わても、大好きや」と漏らした。


 見上げた空に映える月と星。
私は瞼に蓋をして、心の中でゆっくりとそれらに願った。


 どうか、この友情が、いつまでも続きますように。



終わり


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明日は、無料配布について載せようと思います。

怒涛の連続更新に、お付き合いくださってありがとうございました!