8月30日の出来事 バースなお話① 2021.08.30 | 青くんの部屋

青くんの部屋

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星「アレ」にチャレンジしみた星

アレとは…アレです。

巷で流行ってる「α」「β」「Ω」……ってヤツです。

 

 

 

 

 

 

 

その夜、雑誌を片手にマンションの廊下を急いでいた。

玄関を開けると、入り口の端にたたきつける。

まったく。

捏造もいいとこだ。

 

 

「はぁ…。」

 

 

だが、こちらの事情を知られるわけにもいかない。

かえっていいだろうと事務所には言われたけど…

腹立たしいものは腹立たしい。

カチャ…

リビングのドアが開いて廊下を覗く。

てっきり眠っているものとばかり思っていた俺は、かすかに焦った。

 

 

『何しているの…?』

 

 

急いで近寄っていくと、パジャマ姿の智が立っていた。

すっかり痩せてしまっているその姿が、痛々しくて悲しくなった。

 

 

「寝てろよ。」

『でも…。』

 

 

そう言いながらリビングに連れ戻すと、中からにおいがあふれてくる。

 

 

「え…。」

 

 

テーブルの上には綺麗にお皿がセッティングされていた。

 

 

『いいのに、なんで…。』

「だって、誕生日じゃん。」

『…。』

 

 

うれしいけど、それ以上に心配なことが大きいかった。

簡単にマンションを抜け出して病院に行くわけにはいかない。

どこでパパラッチが見張っているかわからないのだ。

だから、定期健診以外は…

 

 

「大丈夫なの…?」

『まあ、何とか収まってる。』

「ならいいけど…。」

『でも、ケーキは無理だったんだ。』

「いいよそんなの。」

 

 

俺は智を抱き上げるとソファーにそっとおろした。

薄いタオルケットをかけて、空調を確認する。

 

 

「寒い…?」

『大丈夫。』

「お腹は…?」

『別に…普通。』

 

 

わずかにせり出してきた腹は順調に育っている証拠らしい。

食欲がないのにこれって、本人が余計に栄養を取られてるってことだよな。

 

 

「食べれそう…?」

『ちょこっとつまんだよ。』

「ちょこっとでしょ…?」

『そうだけど…あんまり食欲ないから…。』

「果物は…?」

『冷蔵庫になんかあったかな…。』

 

 

俺は立ち上がると、冷蔵庫に向かう。

野菜室に、ちょうどグレープフルーツが入っていた。

智がなんとか口にできたのがそれだった。

落ち着いたなら、もっと食べさせればいい。

俺は袖をまくると、ナイフを取り出していた。

 

 

『潤。』

「いいから待ってて…。」

『…。』

 

 

やっぱり本調子じゃない智は、俺に言われるままに、大人しくソファーに寝そべって待つことにしたようだった。