master piece32 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

 

誕生日までにはこの話終われそうで良かった。

けど誕生日のお話が誕生日に間に合うかはまた別のオハナシ…←

一回サボるとダメだな。

さくらいさんに怒られちゃう。

「死ぬほど無理してください。別に死にゃしないから。」

くじけそうなときにいつもこの言葉が私の背中を押す。

動くかは別として←

すぽてぃふぁいのライブもあるし、11/26は忙しいな~♡!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほどなく。

 

二宮も松本も帰っていって、お互い上京については触れずに普通に生活していた。

 

それが俺の精一杯だったから。

 

 

…いや、これまでとは少しずつ違っていた。

 

まず、相葉くんはたまにしか顔を出さなくなっていた。

 

顔を出したって、絶対に例の強引なお誘いはなかった。

 

「おーちゃん、俺、本当におーちゃんのこと大好きだからね?」

 

代わりに、来た時には必ずそう言うようになった。

 

「んふふ、ありがとね。おいらもだよ。」

 

そう微笑んで返す智くんは、多分、気付いてない。

 

相葉くんの伝えたいことが。

 

本当の気持ちが。

 

…何となくだけど、立ち去ってしまう自分へ気を使ってくれていると思い込んでる。

 

と、思う。

 

「優しいよね、相葉ちゃんは。」

 

「…アイツ、本心だと思うよ?」

 

「ふふ、わかってるよ。」

 

でも、伝える術がない。

 

だって智くんは心を開いていないから。

 

『自分は愛されてもいい』『好いてもらえる存在だ』と、思えていないから。

 

だけどきっと相葉くんは心から智くんを想ってる。

 

それが恋なのか愛なのか、はたまた友情の延長なのかは置いといて。

 

だって指一本触れなくなった相葉くんは、

 

──おーちゃんが喜ぶから

 

『求めること』で智くんが救われてると、喜んでいると信じてたんだ。

 

信じてた、っつーか実際は本当に救われてたと思うけど…。

 

自分がしたいから、ってのも勿論あっただろうけど

 

役割だという智くんの為になると思って、あんなに求めてたんだ。

 

やっぱり智くんは相葉くんに愛されてた。

 

風間とかも恐らくそうだろう。

 

ただ 欲 のはけ口にされてただけじゃない。

 

ただ都合のいい道具扱いされてたわけじゃない。

 

これまでの人生も

 

……二宮と歩む、これからの人生も……。

 

 

あと、夜は慰め合いも何もない生活になった。

 

…キスはおろか、触ることだってあれ以来、ない。

 

その理由は智くんの仕事。

 

上京するために終わらせといて、と二宮が言ったから少しずつ着手しているようだった。

 

島の人たちに頼まれていた名簿や看板は、素人目にもとても丁寧で心がこもっているように見えた。

 

少しずつ少しずつ減っていくタスク。

 

智くんがゆっくりと名残惜しそうに取り組んでいるのは気のせいだろうか。

 

それでも何も口が出せない臆病な俺。

 

『先生はもうレッスン終わったんだから帰れば?』

 

そう言われてしまうんじゃないかと毎日ドキドキしていたが、それどころじゃなかったんだろう、智くんは一度も帰れとは言わなかった。

 

 

 

昼間は釣りや畑仕事をいつも通りやっていた。

 

ある日、その畑仕事で。

 

智くんが耕していた鍬の調子が悪かったのか、軋む音が耳障りだった。

 

「油差し持ってきてくれる?二階にあるから。」

 

智くんは下が泥だらけだったし、俺が二階に一人で上がることになった。

 

誰も上げないと言っていた二階だったのに、任せてもらえたことが嬉しくて。

 

油差しの場所はこの前見せてもらったアトリエの中。

 

わかってる。

 

棚の位置は聞いてたから。

 

 

だけど

 

少しだけ、開いてたんだ。

 

例の、入るなと言われた奥の部屋が。

 

 

智くんは畑に出る前に風を通すために二階の窓をすべて開けたようだった。

 

だからだろう、風が吹く度に扉がキイキイと揺れている。

 

その隙間から、異様な光景が目に飛び込んできた。

 

ぞっとして思わず全身の動きを止める程。

 

 

…まさか。

 

そう思ったけど、一歩、一歩、と俺の足は勝手にその扉めがけて進んでいく。

 

入るなと言われているのに、そんなことしていいわけない。

 

だけど…

 

 

俺はゆっくりとその扉を開けた。

 

 

「………ッ!!!」

 

 

思わず後ずさった。

 

だって、その部屋は

 

たくさんの絵があって、壁や床にも転がってたけど

 

 

その絵全て

 

一面真っ黒で覆われてたんだ。

 

 

何かを描いては乱暴に黒で塗りつぶしたような、そんな黒。

 

深くて重くて、辛さを体現したような…漆黒。

 

ほとんど見えないからわからないけど、恐らくそれ全てが自画像だ。

 

 

…智くんの。

 

 

ぼわり、智くんがこの部屋で膝を抱く光景が自然と浮かんでしまう。

 

夢で見たような、漆黒の涙を流して。

 

 

二宮の言う通りで

 

智くんは自分をずっと真っ黒だと思い込んでいて

 

それはまだ変わってなかったんだ。

 

 

その一角に、不釣り合いすぎる異様な絵が一つ。

 

俺が先日描いたカラフルな智くんの顔だ。

 

真っ黒だらけの中にぽつんと違和感を携えて、大切そうに貼られているそれ。

 

智くんは、どんな想いで俺のへたくそな絵を受け取ったんだろうか。

 

 

──おいら、今自由でしょ?

 

 

智くんの言う自由って何だろう。

 

二宮と一緒に行くことは、本望なのだろうか。

 

二宮は同じ『黒』だから気持ちを分かり合えると言った。

 

けど…それを認めることは本当に智くんの為になるんだろうか。

 

反発して乗り越えるより認めて受け入れてしまう方が遥かに楽だけど

 

果たしてそれは『正解』なんだろうか。

 

どうしてあの人はあんなに大人びて周りを納得させるだけの経験値や言霊があるのに、

 

こと自分に対しては全てを諦めてしまっているんだろう。

 

 

『本気の愛』がわかったら

 

智くんは変われるんだろうか。

 

変わりたいとも思っていない彼が

 

どうしたら自分を大切に出来るんだろうか…。

 

 

俺はゆっくりと扉を閉めた。

 

智くんが見られたくない部分。

 

勝手に覗いてしまった俺は最低だ。

 

最低だけど……。

 

 

智くんのこと、救いたい。

 

闇に落ちていて、藻掻いて出ようともしないで『暗闇の中だけで自由に生きている』あなたに

 

光の世界を教えてあげたいよ。

 

 

…愛を…

 

いや。

 

自由を。

 

 

『本当の自由』を、あなたに感じてもらいたい…。

 

 

真っ暗闇の中から

 

あなたの手を引っ張って、引きずり出してあげたい。

 

 

あなたが、そうしてくれたように。

 

 

俺が

 

あなたにできることって、何なんだろう。

 

 

あなたが

 

『本当の自由』になれる為に、俺がすべき選択は──…。