それでも僕はまた君に恋をする11 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。

 

「山は時空を超えて恋してる」

山友達さんからの名言です。

いやマジ名言。

ちょうどこの話をぼんやり練ってた時に言われて、爆発した(?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生」

 

そう呼ばれて振り返ると、いつもあなたはふわりと笑っていた。

 

「おはよぉございます。」

 

「おはよ。今日は寒いな?」

 

「寒いですね~!あ、そうだ先生、昨日の授業のことなんですけど…」

 

登校中に一緒になって肩を並べて歩いた並木道。

 

『今』よりずっと木々は多くて、運動靴なんてものは存在しなくて。

 

教育機会均等法は整っていない明治のかなり初期あたり。

 

学校は下等小学校(4年)と上等小学校(4年)に分かれており、

 

俺は上等小学校の4年の担任をしていた。

 

彼は他の学校からやってきて、俺の学級の生徒になった。

 

転校してきたばかりの彼は学校に馴染めず、意図せず俺に頼るようになった。

 

転校生として彼が来た時は驚いて…だけどすごく嬉しくて

 

当然、決まっていたかのように二人の距離は急激に縮まった。

 

「この数式って…」

 

「ああ、それは…」

 

とん。

 

優しくぶつかる手と手。

 

一瞬二人が息をのむも、お互い気付いたそぶりは見せずそのまま会話を進める。

 

 

バレてはいけなかった。

 

歳の差は勿論、この関係は。

 

教師が生徒に手を出すなんて、誰かに知られたら大変なことになる。

 

そう、互いが理解していた。

 

だけど。

 

 

放課後自分のまとめた小試験の解答を落としてしまった時、彼はどこからともなく現れて。

 

「手伝います」

 

「あぁ…ありがとう。」

 

部活動なんてものは当時なかった。

 

だからしんと静まり返る校舎で、沈黙に妙に緊張したのを覚えてる。

 

その散らばった用紙を集めていると、手が触れた。

 

ドクン、と心臓が高鳴り、彼を盗み見た。

 

目が合って…生唾を飲み込んで。

 

…そのままキスを…

 

 

し、『かけた』。

 

 

そうだ。あの時。

 

彼は俺の唇に指を置いた。

 

 

「         」

 

 

…あの時彼は、何て言ったっけ…?

 

 

 

 

ぐしゃり。

 

自分が持っていた卵の落ちる音でハッとした。

 

縁側の窓は開いていたらしい、二人も俺を見て驚きの表情を浮かべる。

 

「…す、すみませんっ…俺…急に来ちゃって…!」

 

「え、さくらいさっ…ゲホッゲホッ!」

 

「ちょ、智!お前熱っ…!」

 

 

慌ててその場を逃げ出した。

 

 

智。

 

智、だって?

 

何故二宮くんが?

 

大野さんの家で、二人でどうして……

 

頭の中をぐるぐると疑問符が回る。

 

走っても走っても、頭はまとまらない。

 

おかしい、おかしいよ。

 

大野さんと俺は両想いのはずで

 

俺は大野さんが大好きで

 

彼は──。

 

 

…ああ、そうか。

 

そりゃそうだよな。

 

いつの間にか会社の前に戻っていて、俺は扉の前で足を止めた。

 

 

そうだよ。そうとしか考えられないじゃないか。

 

 

「…今世では…両想いになれなかったんだ…。」

 

 

当たり前だと思ってた。

 

彼に出会って

 

彼に恋して

 

彼も同じ気持ちになってくれて

 

彼と過ごして

 

先に彼が逝 ってしまうということが。

 

俺はその運命が変わることを望んでいたのに

 

好きになりたくないと、好きにさせるなと、そう思ってたのに…。

 

どこまで自分勝手なんだ、俺は。

 

 

好きなら後悔しないように動くと松本は言った。

 

素敵な子を前に何もしないなんてどうかしてると雅紀は言った。

 

 

その通りだ。

 

 

運命通りになるという保証なんてどこにもないのに

 

動かなかった俺が悪い。

 

 

出会った直後から言えばよかった。

 

愛してる、って。

 

初めまして、の代わりに。

 

 

俺は臆病で

 

自分だけが辛いからって悲劇ぶって

 

過去を言い訳に何もしなかった。

 

ただ現状を嘆きながら身を任せてるだけだった。

 

「…最低だな、俺…。」

 

こんなんじゃ好きになってもらえるわけがない。

 

彼の好意が他にいったって、何も責められない。

 

 

諦めなければ。

 

終止符をどこかで打たなければならない。

 

大野さんのこと忘れて。

 

好きな気持ちに蓋をして。

 

これまでのことをなかったことにして。

 

だって、二宮くんと大野さんがそういう関係なら、俺にどうこうする権利……。

 

 

──恋が終わる時を知っていますか?それはフラれた時でも相手を失った時でもない。

──あなたがその恋を、見捨てた時。

 

 

ふと、Sakura先生の流れるような文字が脳裏に浮かんだ。

 

見捨てる?

 

俺が…大野さんを…?

 

 

ずっと一緒に生きてきた、あの人を……見捨てる、だって?

 

 

…んなこと

 

出来るわけがねぇ。

 

この積み重なった膨大な恋心を簡単に手放せるわけがねぇ。

 

この時空を超えた大きすぎる恋が

 

こんなところで終われるわけがないだろ。

 

俺の恋心が

 

たかが失恋ごときで、なくなるなんて

 

 

有り得ない。

 

 

「…なめんなよ。神様。」

 

 

戻ろう。

 

手遅れになる前に。

 

身体を壊している大野さんの元に。

 

でなければきっと後悔する。

 

くるっと踵を返すと、

 

「翔ちゃんっ!!」

 

雅紀が事務所から慌てて飛び出してきた。

 

「よかった、会えて!今なぜかニノちゃんから事務所に電話があって…!」

 

階段を駆け下りたのか、息が切れている。

 

二宮くんということは、さっきのことの説明があるのかもしれないけど。

 

俺は一刻も早く大野さんに直接会いたいんだ。

 

「わり、今それどころじゃ…」

 

「Sakura先生、庭で倒れて石で頭打ったみたいで!血出ちゃって、今病院に運ばれたって!」

 

 

 

 

今回の別れは

 

 

俺のせいかもしれない

 

 

 

そう、反射的に思った。