※妄想のお話です。
この辺は急いで出したかったので
コメントやメッセージのお返事少し待ってくださいね、すみません( ;∀;)
うじうじ悩んでる期間は嫌いではありません。
第三者から見るとイライラするけども(笑)
「…大野さんはっ!?!」
息を切らして入った病室には、二宮くんが一人で付き添っていた。
「寝てます。異常ないし、後遺症も出ないだろうって。打ち所は別に悪くなかったみたいだけど…血が結構出ちゃって、それ見て気ぃ動転しちゃってこんなオオゴトに。」
頭を打ったこと自体は幸いそれ程重症ではなかったが、
元々高熱だったようで医者からは安静にするよう言われそのまま入院と相成ったそうだ。
頭に包帯を巻いた大野さんは規則正しく息をしていて。
気を緩めると涙が流れてしまいそうなほど安心した。
生きてる。
大丈夫、大野さんは居なくならない。
そうわかった瞬間、全身から力が抜けて立っていることもままならず、二宮くんに驚かれた。
「…すんません。」
落ち着いてから二宮くんに突然謝られる。
「…いや、二宮くんが謝る必要は…別に俺は…。」
言い切らない内に俯く。
どういう関係でもないんだ。
俺と大野さんは、ただの編集と作家。
それだけ。
だから謝られる筋合いはないわけで。
「や、違うのよ。…桜井さんて、智の事?」
「………。」
「あぁごめん、野暮だよね。俺は好きだよ。大好き。だけどこの人は俺のこと何とも思ってないのよ、残念ながら。」
…え?
顔を上げると、二宮くんが皮肉めいた顔で笑っている。
「この人。ちゃんとアナタのこと好きだから安心してよ。俺の勘だけど。」
「…え…?」
「俺がね。ちょっと…ムキになっちゃって。だからさっきのは、俺が無理矢理。だから桜井さんを追っかけたんだよ、誤解を解こうとして。」
そう…なのか…?
「ムキになる…って?」
「……アナタんとこの、ほら。うるさいの。あれのせいでちょっと。」
ああ、雅紀か。
…で、何で雅紀のせいで大野さんにキスする流れになるんだろう?
だけど
大野さんは俺を追いかけてきてくれた。
あんな熱の身体で…。
「…でも…まさか倒れるなんて…。そんなに体調悪かったのに、俺が逃げたから…俺のせいで…。」
「だからでしょ。」
「へ…?」
「智はさ……。…いや、直接聞いて。俺が言うことじゃないわ。」
「…?どういう…」
「んん…」
大野さんが声を漏らし、ハッとする。
「大野さん!大丈夫ですか!!」
「あれ…なんで…?」
「アンタね。倒れたんだよ。ほんっと馬鹿だな、昔から無茶ばっかしてさぁ…。…違うか、今回は俺のせいだよね。ごめん。」
「かず…。」
二宮くんがばつが悪そうにカタリと席を立つ。
「安心して。ちゃんともっかい1人で考えるから。…向き合うから。」
…うん、と大野さんが安心したように小さく微笑む。
「けど智もだからね。」
「え?」
「…桜井さんなんでしょ?ずっと手紙待ってたの。」
え?
手紙を待ってた…?何のことだ?
「………気付いて、たの…?」
「当たり前でしょう。俺とアンタは似てるんだってば。わかりやすいっつうんだよ。」
二宮くんが目を細めて笑って、じゃぁ、と出て行って。
沈黙だけが病室に残った。
「…あの…」
先に声を出したのは俺の方だった。
「すみません。勝手に伺って。」
頭を下げると、大野さんが慌てて否定する。
「謝らないで!…ありがと。ごめんね変なとこ見せちゃって。」
「いえ…」
「…大丈夫だから…」
「…え?」
「和とは、何でもないから。その…誤解、しないで欲しくて…。…あの子、幼馴染で…Sakuraの代理人なの。」
代理人?
って…そうか、唯一情報公開されてる代理人に俺はまず手紙を送って打診した。
そしてOKが来て、この仕事になって…。
それが、幼馴染の二宮くん…?
…って、待ってたって…
「待ってたのは…仕事の依頼の手紙…?」
大野さんがぎくりと肩を震わせる。
「…何で?あなたは俺のこと…知ってたの…?」
大野さんは、暫く押し黙ったあと小さくこくりと頷く。
…まさか、頭打って記憶がっ…!?
「えっと…一目惚れ、したんだ。」
ああ、そういうことか。ビックリした。
って、え、一目惚れ?
「正確には、文章読んで…一読み惚れ?桜井さんの文を読んで人となりがわかったっていうか…。
まぁ結局会ってみてやっぱり間違ってなかったって言うか…。」
それで…俺がMiyabiの編集だから、Sakura先生として仕事を待ってたってこと…?
ていうか間違ってなかった…ってことは…
大野さんは今、俺のこと…?
「…とにかく…おいらは和とそういう関係じゃない。…信じてほしくて、追っかけた。そしたら倒れちゃった。心配かけてごめんね。」
大野さんはぼそぼそと小さい声で言うけど、その頬は少し赤らんでいる。
…熱は解熱剤で下がってるはずだけど…。
「…熱があるのに…弁明は後日や電話でよかったんじゃ?」
「…勘違いしたままとか、絶対やだもん…。」
「それは、誰かに…?それとも…俺だから…?」
「…わかってるくせに。意地悪。」
ああ、もう。
だからさ。
「…そんなこと言うと…期待しますよ…?」
意地悪なのはどっちだよ。
「………すれば?」
ぷいっとそっぽを向いて布団を額まで被ってしまうあなた。
どうせ俺の心臓がバクバク鳴ってること、わかってんでしょ?
「…一目惚れってことは…あなたからの告白、って受け取って返事をしても?」
「………だめでぇす。んふふ。」
ねぇ、ずるいんだって。
いつもいつも明言を避けるくせに、絶対的に好意をチラつかせて。
俺の心を散々かき乱して。
だけど肝心なところで、壁を作ってしまって。
それでも…
ああ、良かった。
信じていいんだよね?両想いだって。
やっぱり俺と大野さんは運命なんだ。
これまでと同じように。
これからもこの運命は続いて…──
…待て。
これまで通りということは。
両想いが続いた先、大野さんがまた先に逝ってしまうということだ。
嫌だ。
もう二度とあなたを失いたくない。
あなたはこんなにも頑張っているのに
どうしてあなたが死ななきゃいけないんだ。
運命だから?
ふざけんな。
だけど俺は、この強すぎる運命への抗い方を、知らない。
死なせたくない。
…あなたは、絶対死なせない。
…それでも…
俺は今度こそ、大野さんとの恋を実らせたい。。
ハッピーエンドは、どっちなんだろう。
俺は
恋を実らせて絶対的な死の恐怖に一緒に立ち向かうのか
それとも大野さんの隣にいることを諦めて、大野さんが生き続けることを選ぶのか──
どっちにすべきなんだろう。
どちらが、あなたを救うことになるんだろう。
「…とにかく、早く元気になってください。じゃないと俺…心配で胃に穴が開いちゃいますから。」
苦笑すると、大野さんは「ごめんね」と眉を下げて笑った。