※妄想のお話です。
ジャンルを小説に変えた方がいいとアドバイスいただいたので、変えてみました!
純粋なファンの中に紛れてるよりは創作分野に紛れてた方が確かにいいのかもしれない…。
ジャンルとかおすすめとか仕組みがいまいちよくわからないけど…(笑)
退院には、何と一週間もかかるとのことだった。
色々ついでに検査をされるのだと不服そうに大野さんが唇を尖らせたけど、
頭を打ったんだし熱もあったんだから念入りにしてもらわないと困る。
それに大野さんは入院中も仕事をし続けていて。
看護婦さんに何度も止められていたけど、大野さんは聞く耳持たずだった。
相変わらず頑固だ、とこっそり思う。
「はい、来月号の。」
笑顔で仕上がった原稿を渡してくれたのは、入院してわずか2日目の夜だった。
「なんか翔くん、更に悩んでない?」
「え?」
「何ていうか…死活問題でも発生したみたいな?(笑)」
松本が日本酒片手にクスッと笑う。
また庶民向けの居酒屋だ。
松本はこういう人が多くワイワイした場所が落ち着くらしい。
寺で育った割に騒がしいところが好きなのか。というセリフは辛うじて口には出していない。
Sakura先生が入院したなど個人情報は言えないから、今は忙しそうだからまだ提案をしていないと言い訳した。
松本は、初掲載に間に合わなくとも是非お願いしたいからいつまでも待つ、とのことだった。
その話の流れで飲みに行く話になったのだ。
告白まがいのことをされて警戒してないといえば嘘になるけど、誰でもいいから大野さんのことを相談に乗ってほしかったというのが本音だ。
(雅紀?話にならない。「そんな先のこと考えても仕方ないじゃーん★」とか言われそうで。←偏見)
「死活問題…か。」
まさにその通りだ。
大野さんへの気持ちを告げようと決めたのに
大野さんが死 ぬかもしれないと思った瞬間、振り出しに戻ってしまった。
暗闇からの脱出方法は未だ分からない。
なら俺はあきらめるべきなんだろうか。
それとも、目の前の幸せをつかむべきなんだろうか…。
「…例え話なんだけど。両想いなんだけど、そのままいけば二人ともその…死んじゃって。離れたら多分、生きてられる。みたいな時、どうしたらいいと思う?」
「え、何それ重ッ!?(笑)」
「だから、例えだって。」
…本当のことだけど。
「あはは、そりゃ悩むかもね(笑)でも…俺なら聞いちゃうなぁ。」
「…聞く?」
「そ。相手に委ねる。『俺は付き合いたいし抱 きたいんだけど、そしたら俺ら死ぬかもしれないんだって。どうする?』つって。」
抱 っ…
む、むせた。
ゲホゲホと咳き込むと松本があははっと笑う。
「何、そういうことじゃないの?成就って具体的に何なの?」
「…それ、は……」
「両想いなんでしょ?これ以上って、その一線を超えるって話じゃないの?」
…そりゃ、そうだけど…
実は
俺らはキスすらしたことない。
何故って、大野さんが毎回拒否るから。
それで突然そんな話になられても…頭がついていかないというか。
…成就って、確かにどういうことだろう?
好きだと言って、好きだと返してもらうことがゴールだと思ってた。
だけどむしろそれはスタートで。
俺の希望はしわくちゃのじいさん同士になっても手をつないでいられるような関係になること。
それまで何も…なんて、普通はない、のか?
そりゃそうか…子どものおままごとじゃねぇんだし…
…え…どういう…手順で…?
ていうか…俺、どっち…?
………一応、調べなければ。←
そんなことすら浮かばなかった。
それくらい、運命の渦に翻弄されて生きてきた。
これまでも。
そして多分、これからも……。
「と、とにかく、直接聞くんだな松本は。」
「そうだね~。だって分からないでしょ。相手の気持ちも、俺の気持ちもさ。伝えないと分かんなくね?それってすごい非効率っつーか。もったいないよ、折角お互い口ついてんのにさ。」
…確かに。
俺は自分のことばっか考えてたけど
大野さんに委ねるのもありかもしれない。
けど、大野さんが死 ぬのなんんて絶対に嫌だと至極当然の答えを言った時
果たして俺は…諦めきれるのだろうか…。
「ほんとさ、翔くんウジウジ考えすぎなんだって(笑)当たって砕けちゃえ!」
「砕けさすな(笑)それでも…松本に背中押してもらったよ。この前飲んだ時。」
「え、俺何か言ったっけ?」と不思議そうな松本。
「わかんないならいいよ(笑)」
可能性があれば後悔しないように行動する、って教えてくれたの、俺にとってはすごく大きな言葉だったけど
お前にとっては多分、当たり前のことなんだろうな。
「ま~あれだ。片想いの身としては応援の言葉は掛けたくないけど…」
松本はそう言いながら枝豆を口にして、軽く咀嚼して飲み込み、こう言った。
「人事を尽くして天命を待つなんて俺はまっぴらごめんだわ。天命は俺が作るって思ってるから。
だから、頑張れ!砕けても傷位残そうよ。まぁ、そうしないなら後悔しない位悩み抜いてそう決断しなよ。
…もし万が一失恋して俺のとこ来てくれても、こうやって先に励ましとかないと俺が後悔しそうだから言っとくわ(笑)」
ニッと笑われて、ちょっと感動する。
こいつ…ほんといい奴。
大野さんが居なかったら、ほだされてたかもしれない。
ま、大野さんが居ないなんて俺の数多の人生においては有り得ないんだけど。
「サンキュ。悩むよ、ちゃんと。後悔しないように。」
俺も、後悔しないような道を選びたい。
できれば…大野さんと、二人で。
退院する時は俺が付き添った。
二宮くんがそうするよう言ってくれたのだ。
大野さんは一人で帰れるとごねてたけど、俺が一歩も引かないので仕方なく受け入れてくれた。
いつも引かないのは彼の方だったけど
こればっかりは俺も譲るわけにはいかないから。
あなたの隣は俺がいい。
いくら幼馴染でも、あんな姿を見てしまったら…絶対嫌だ。
エゴイスト、ってやつだ。分かってる。
恋は深みにはまればはまるほど、身を引くときに辛くなる。
だけど
「…アリガト。」
「いえいえ、これくらい。大野さんのおかげて原稿も早めに片付いたんで仕事も余裕あるんですよ。」
「…そうじゃなくて…。原稿上がったのに、毎日お見舞い来てくれて。…うれしかった。」
照れたように小さく言うあなたの一言で、どれだけ悩んでてももう何でもいいやって思っちゃうんだよ。
「じゃぁ寝ててください。俺卵粥作るんで!」
「…退院したんだからおいら作れるよ?」
「ダメです!しばらくは安静って先生言ってたでしょう!」
「大げさなんだって。こんな元気なのに。ほら!」
大野さんがぴょんぴょんと跳ねたり、筋肉をアピールするようなポーズをとったりする。
何だよそれ、かわいいなぁくそっ。←口悪い
「こ~んなに元気なの、にっ…?!」
よろっ
と倒れそうになって、慌てて抱きかかえる。
「ご、ごめん、ありが…」
言いかけた大野さんがはたと気付く。
俺の顔との距離が、数センチなことに。
どくん、どくん。
高鳴る心音がどちらのものかわからない位、密着している。
…死んでほしくない。
あなたには、生きていてほしい。
どうしたらいい?
この運命から抜け出すには、俺はあなたに何を言えばいい……?