それでも僕はまた君に恋をする15 | 1年だけ先輩。(基本お山)

1年だけ先輩。(基本お山)

やま。いちご。そうぶせん。

理解した方だけしか読まないでください(笑)
ごにんに心奪われ続け、眠る身体も起き出す状態です。

脳内妄想を吐き出す場として利用しようかなと思ってます。
ご気分害されたらごめんなさい。
※主軸は21です!

※妄想のお話です。


ネタばらしが近づくと

楽しくなってくる♡(それまでは?笑)
















──あと1年位しか生きられないの。



 

そんな衝撃的なことを聞かされて、俺はひどく動揺してしまった。


特効薬のない病気で、延命治療は副作用の関係で今はしていないとのこと。


釣りに行けないのも病気が原因だった。


未知のウィルスだとか、ガンだとか…誰もが知る病気じゃなくて


「生まれつきなんだって。やっと寿命が出て、ちょっとスッキリしたくらいだよ。」


ただゆっくり、なすすべなく体を蝕んでいったその病。


結局決まってたんだ。


運命は、最初から。



バスに乗ると言ってくれた大野さんと、何とか抗えたら。


そう思えたのも束の間。


大野さんは、とっくに死の恐怖に立ち向かわされていたんだ。



もうタイムリミットは見えていて。


あと一年。


…彼と過ごせる時間は、もう数える程しかない。


しかも病気は進行する可能性もある。



『来年のオリンピック開会式には…』


ふらつく足でたどり着いた家のテレビから流れているのは、1年後のそれ。


「もう少しなのねぇ。本当に開催出来るのかしら。」


おふくろが興味無さそうに独り言を呟いている。


情勢が情勢だけに、楽しみにしている人は少ないのかもしれない。


だけど…。


大野さんは諦めてるんだ。


だから大野さんは一年後のオリンピックですら情報を入れてなかったんだ。


入院中も作品を残すことだけに集中してたのは、死が迫っていたから何か形に残したかったのかもしれない。


自分が生きた証を。



…何も言えなかった。


それが運命?


もう、始まってしまっているのか…?


なら、俺ができることは何だ?


諦めて受け入れること?


一日でも長く生きられるよう死力を尽くすこと?


それとも他に何か──。


どれだけ考えてもその答えは出ず


二日が経って、大野さんから会社に電話が入った。



『あ、桜井さん~?先日はどうも!もう元気だからね~。ありがと!』


「お…Sakura先生!すみません、俺…あのまま帰って…」


『全然!だから元気だってば(笑)んでさ、この前の、と…何だっけ?とるとーが?の件。いつでもいいって言っといてくれる?』


「あ…はい、わかりました…。」


『じゃぁお願いしまぁす。…この前は急に暗い話してごめんね。忘れて!じゃぁねぇ~。』


「っ…」


気の利いた一言が言えればいいのに


俺はまた、何も言えなかった。



 

松本と大野さんの顔合わせ当日。


場所は大野さんの行きつけ、喫茶シオンとなった。


松本も知らなかったらしく、電話で軽く場所を説明した。


『俺この辺結構詳しい方だと思ってたけど…知らなかったわぁ。』


松本はSakura先生の行きつけって嬉しいわと嬉しそうに笑っていた。


 

先に来ていた松本さんと二宮くんが座る席に、大野さんと俺で遅れて行った。


二宮くんが入り口向きに座っているため、先によっと手を上げたのを見て大野さんが「あれ?」と驚く。


「和…何で?」


「あれ、聞いてませんでした?tortugaの企画、二宮くんがカメラマンですよ。」


「あ~そうか、聞いたことあると思ったら和の新しい職場か。」


小さく呟きながらその席へと進む。


tortugaに聞き覚えがあると言っていたのは、二宮くんから聞いていたからか、と今更ながら納得する。


「お待たせしました松本さん。」


「あ、いやいや…」


言いかけて松本さんが立ち上がり、大野さんを見て絶句した。


「…?」


そして


「あ…お……。」


「え?」


…青?と聞く前に、


「うっ…うえっ…!」


松本さんは、その場に崩れこみ、嘔吐した。

 


 

「救急車っ…」


「あ、はぁぃ?」


店主に慌てて電話を借りようとすると、店主が慌ててガコンッと何かを落とした。


「いぃっつぅ~~~…」


古びた木箱のようなそれは、店主の額をクリティカルヒット。


その額からは血が滲んでいる。


…救急車、二台必要かも…。


「げほっ…、ちょっ…と、まって…」


松本がよたよたとカウンターに近付き、箱を指さす。


「箱…げほっ…あの箱、多分、俺の…。」


…意味が分からない。


初めて来たはずの喫茶店。


何故か突然吐いたばかりの絶不調の松本潤。


それでもその言葉は妙に信ぴょう性があった。


「ねぇ、とりあえずトイレ。行くよ社長。救急車は一旦待と。ただ胃腸風邪かもしれないし。」


二宮くんは大野さんの時に救急車を呼ぼうとしておおごとにしてしまったと反省しているからかそう言って、介抱へと向かった。


大野さんは気付けば後片付けをしてくれていた。



俺は店主に救急箱で傷の手当をし、「この箱、あいつに渡しても?」と聞いた。


「僕のじゃないからねぇ?どうぞぉ?」


僕のじゃない、って。自分の店から出てきたのにか?


苦笑しながら「ありがとう」と受け取った。


サッカーボールのような模様の入った木箱。


中には…紙がいくつも入ってる感じだろうか?


傾ける度にごそりと動いていた。

 

 

数分後、松本が白い顔で戻ってきて木箱をもらえるかと聞いた。


預かっていた箱を渡し、松本はしばらく見つめた後ぎゅっと抱きしめた。


「…ごめんなさい。Sakura先生、日を改めてもいいですか?」


「そりゃ、勿論ですよ!お大事に。」


大野さんが慌てて答える。


「潤くん、大丈夫?送ってこうか?」


「いや…いいよ。ありがと。ごめん、一人で考えさせて。」


考えるって何を──


そう思ったけど聞ける雰囲気でもなく


松本は多めに支払をし、店主と俺らに二度頭を下げてよろよろと帰っていった。


少し迷って二宮くんは後を追いかけて


俺と大野さんは首を傾げる他なかった。



 

松本からまた連絡が入ったのはそれから9日後だった。


また集まりたいというのだ。


今度は、なぜか雅紀も込みで。


大野さんが詰め込んだ仕事の合間を縫ってOKしてくれたから、それが可能となった。


そして松本は木箱を持って現れた。

 


「今から言うこと、信じられないと思うけど。…よく聞いてほしい。」


松本は思いつめた顔をして、俺ら4人に向かって信じられない一言を口にした。

 





 

「皆の前世についての話だよ。」