剣竿一如 -24ページ目
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先輩

 数年ぶりに役者モドキ時代の先輩に電話連絡をしたんだが、無沙汰を詫びつつお願い事をしてしまうと言う厚顔っぷりを発揮してしまった。まぁ、お願い事があるから電話したんだけどね(笑)。その先輩の名前(役名)を出せば、「あぁ~、知ってる。てか、見てた!」って30~40代は多いと思う。太陽戦隊サンバルカンのバルパンサー(バルカンスーツの中の人)です。

 近況を手短に話しつつ、お願い事を申し出ると……、「あぁ、いいよ。ウチの若いの連れて現場にも出てるし、若手を鍛えるのも俺等の仕事だもんな。ほら、ディケイドの本編さ、アレで久しぶりに怪人入っちゃったンだよ(笑)」っと快諾してくだすった。いや~よかった。

 ――って、現場に出てる……? ディケイドの本編(映画)で怪人役??? えっと~、先輩ってたしか、御年53歳じゃなかったっけ??? 

 「ええええッ! まだ現役で特撮の現場、出てるンですか?」

 「あぁ、出てるよ。若いのに場数踏ませてやらなきゃ育たないし」

 「てか、先輩が現役じゃ、若い衆の出る幕が無くなっちゃうッスよ……」

 「俺を越えりゃイイんだよ」

 「53歳でアクション、現役バリバリの師匠を越えるなんて無理!」

 「そうかぁ~? ま、俺はこれから伝説を作るからさ(笑)」

 「これから伝説って……」

 「うん。これから(笑)」

 「だからロフトで 『ラオウが来た』、って言われちゃうんですよ」

 「なにそれ?」

 「3年くらい前、ロフトのトークイベントに行ったでしょう?」

 「あぁ、ゲストって事で招待されて行ったっけ」

 「その時の出演者がですね、『50過ぎてあの身体はラオウだ!』って」

 「ひでェ(笑)。せめてトキにならんか?」

 「いや、リアルでラオウでしょう」

 「じゃ、ラオウでいいや。フハハ、真の伝説を作ってやろう(笑)」

 「本気で?」

 「うん、本気。で、なんで眠釣がそんな事知ってンだ?」

 「だってまだソッチ関係のお仕事もするし、人脈も生きてますモン」

 「そっか~。じゃぁ、俺の事言えないジャン」

 「センスも才能もない自分は、先輩みたいにバリバリじゃないッス」

 「ハッハッハ。まぁ、オマエもガンバレ」

 「あざーっす。で、例の件、よろしくお願いします」

 「ん、わかった。また面白い話があったら教えてくれな」

 ん~、自分のお願い事も "面白い話" になっちゃうんだ……。そりゃ現役バリバリならそうだよなぁ。その道を究めた人ってのは、いくつになっても志と気力は変わらないんですね、ってお話でした。

 先輩、マジ、ラオウだし。

夜電

 風邪ッぴきで少々弱り気味なので、今夜こそ早く就寝するぞ! と早めに入浴を済ませて布団に入ってウトウトし始めたら、若年のご同業から家電に電話……。おい~、午前1時過ぎてンじゃん。

 「あ~、もしもし。眠釣さん? 今、電話大丈夫ッスかね?」

 「大丈夫じゃねェよ……」

 「じゃ、手短に用件だけ」

 「何よ?」

 「あのさぁ、○○のアレなんだけど、自分も紹介してくれないッスか?」

 「紹介してやらない」

 「なんでヨォ~」

 「だってオマイさん、ジョーシキ無ぇモン」

 「え~ッ! そんな事ないッスよ」

 「無ェったら無ェんだよ」

 「なんでッ!」

 「オマイ、今、何時だと思ってンだよ」

 「え~っと、25時チョット?」

 「世間では深夜1時過ぎッつーンだよ!」

 「だって、まだ起きてるジャン」

 「オマイの電話で起きたんだよ! バカタレ!」(ガチャ切り)

 ったく、非常識にもほどがある。商売柄、深夜に電話連絡を取り合う事も少なくないが、そんな時には携帯にメールを送って、電話しても良いかどうかを確認するのが、同業間のしきたりになってます。メールにレスポンスがなければ就寝中って事だからね。

 結局、この電話のおかげで腹が立って目が醒めてしまい、寝付けなくなってしまった。年若の同業者には、業界のしきたりを教えておかないと、自分もヒドイ目に遭いますよってお話でした。

感染

 自分の様なフリーの企画屋兼売文屋は、文字通り 「身体が資本」 であって、健康と知識と知恵が商売道具なワケです。大病を患ったり、大ケガなんかしちまったら、即オマンマの食い上げ。転ばぬ先の杖で、日頃の手洗いやうがいはもちろんの事、毎年健康診断を受け、インフルエンザの予防ワクチンを射っているんだが、風邪の感染だけはどうにも避けようのない場合がある。

 それは、お仕事の打ち合わせや商談。この時期、新年度の研修会や講習会、レジュメの作成、各種資料類の編纂など、クライアントの担当者と応接室などで顔を付き合わせて話をするんだが、担当さんが風邪を引いていたりするとヤバイ。新型インフルエンザで世間が大騒ぎしていた頃は、みんなマスクを着用していたし、微熱でも出社を見合わせる会社が多かったんだが、景気がさらに悪化し、決算の近い今時では、そんな悠長な事を言っている会社はありません。で、先日18日の打ち合わせの時、担当さんがグスグスと鼻を鳴らし、コホコホやっていた。

 「おや、お風邪を召されましたか?」 と声を掛けたんだが、「あ、いやいや。大したことないです。鼻風邪ってヤツですよ。熱もないし、大丈夫、大丈夫」ってな暢気な返事が返ってきたんだが、コッチは 「ヤダなぁ。うつされたらタマランぜ」 などと考えていたわけです。なにしろ応接室という閉鎖空間で、2時間も差し向かいなんだから。担当さんを無神経とまでは言わないが、サラリーマンと自営業では、健康管理の意識やあり方に雲泥の差がある。打ち合わせ終了後、スグにトイレで手洗い、うがい、洗面までして、帰宅後には着ていた服も着替え、病原菌を持ち込まない様に気を付けていたんだが、とうとう発症してしまった。

 昨日から喉と鼻の境目辺りがむず痒く、心なしかだるい。まぁ、病は気からと言うから、朝食をいつもより多目に摂り、ビタミン剤を飲んでおいたのだが、ムニャムニャのお稽古に行ってみたら、どうにも身体が重い。今日は通しのお稽古なので抜けるわけにも行かず、なんとか頑張ってきたんだが、帰り際には水ッ鼻は垂れてくるわ、寒気はするわ、頭はボンヤリするわ。先ほど熱を測ってみたら、37.6度の微熱……。この37度台ってのが一番手に負えないね。休むほどじゃないが、だるいし集中力が落ちる。

 今週は取材もあるし、寝込んでいる場合じゃないってェのに、困った状況に追い込まれてしまいましたよ、ってお話です。明日はお医者に診てもらおう……。

鬼籍

 「八丁堀の旦那ぁ、今頃の三途の川の水ぁ、冷べてぇだろう。
  冥土にゃぁ、どうかゆっくりとおいでなせぇよ。
  旦那が来るにゃぁ、まンだ早ぇと思ってたんだがな。
  音羽屋の元締めも、寅の元締めも、天神の小六親分も、
  チィとばかり早過ぎるって怒ってなさるぜ。
  俺かい? 俺ぁ、梅安って鍼医者だ……」

 「おぅよ。俺も八丁堀なんぞに来てもらいたかぁねェよ。
  なんだってぇ、こんな時期に涅槃へ旅なんざするかね?
  梅安先生が来た時も、まだ早ぇと追い返そうとしたんだ。
  俺か? 俺は棺桶の錠、ある時は市松ってンだ。覚えときな」

 「梅安先生も、錠もひでぇ言い様だな。
  八丁堀の旦那、迎えの鶴を飛ばしてやるから、
  迷わずにこっちへ来るがいいさ。
  俺を忘れてるッて事ァ無ぇよな?
  人呼んで、夜鶴の銀平さ」

【必殺シリーズ主要キャスト物故者】
梅安先生=仕掛人・藤枝梅安 (緒方拳さん)
棺桶の錠=必殺仕置人 (沖雅也さん)
市松   =必殺仕置屋稼業 (沖雅也さん)
音羽の元締め=必殺仕掛人 (山村聰さん)
天神の小六=必殺仕置人 (高松英郎さん)
寅の会元締め=新・必殺仕置人 (藤村富美男さん)
夜鶴の銀平=必殺仕事人V・旋風編 (出門英さん)
中村主水=必殺シリーズ各編 (藤田まことさん)

名優

 打ち合わせから帰ってきて、オリンピックの結果を見ようとPCを立ち上げ、ニュースサイトを開いたら、俳優の藤田まことさん死去の報せ。あぁ、名優がまた一人、この世を去った。

 てなもんや三度笠のあんかけの時次郎、必殺シリーズの中村主水、剣客商売の秋山小兵衛、はぐれ刑事の安浦吉之助刑事、と、代表作は昭和中期から平成に渡る名優中の名優。必殺仕事人2009の制作発表だったかなぁ、「以前なら立ち回りでカラミ(斬られ役)の人に、『もそっとこう、早う掛かってきてくれ』 と言うてたのに、今は殺陣師さんに 『藤田さん、もうちょっと早く』 と言われるようになってしもうた……」 と寂しげに話していたのが印象に残っている。食道ガンを乗り越えて、復帰したばかりの頃だ。

 つい先日放映された剣客商売 「道場破り」 は、裏番組が 「崖の上のポニョ」 という強力なコンテンツだったにも関わらず、視聴率14%を叩き出していた。春には続巻(新作)の撮影が予定されており、それに向けて養生されていた矢先のご逝去。藤田主水、藤田小兵衛の新作は二度と見られなくなってしまった……。

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 {ミl    lr::::ソ::::::::::::::::::::::::::::::::::,..}      押し込み強盗 高利貸し 賄賂をもらう偉ェ人
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      /  '" -‐  /:::ソ::::::::::::::::::::::::  陰膳据えて…… 待っておりやす

 藤田まことさんのご逝去を悼み、心からご冥福をお祈りいたします。
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