ラッシュ プライドと友情/強烈なプライドと深いリスペクト | 調布シネマガジン

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ラッシュ プライドと友情
ニキ・ラウダとジェームス・ハントの70年台F1ライバル物語を描いた作品。監督はロン・ハワードだ。『フロスト×ニクソン』でもそうだったが、ドキュメンタリーフィクションとでも言うべきこの作品は、歴史に名を残す偉大なF1レーサー2人の人生を見事に描き出していた。クリス・ヘムズワース演じるハントと、ダニエル・ブリュー演じるラウダの容姿はとても良く似ていているのだが、それだけじゃなく、全てに正反対の2人がお互いを否定しながらも高め合うという部分で素晴らしいなりきりぶりを見せてくれる。

中嶋やアイルトンでF1に魅せられた俺は、富士スピードウェイで開催された日本グランプリはもちろん観たことはないし、この2人の走りも観たことがない。しかしF1レーサー、それもチャンピオンになる人間の特異性には素直に納得できる部分が多かった。つまり現在も含めて彼等というのはそういう人間たちなんだと。しかも今よりももっと命がけで走る当時のF1レーサーたちの姿は、古代ローマのコロッセオで命を掛けた戦いに重なり、そこに熱狂する一般市民の姿も全く同じように映る。

ラッシュ プライドと友情1

コンピューターと呼ばれたラウダの恐ろしく精密な走りその後登場するプロフェッサー・アラン・プロストに、そして多少乱暴ながらも異次元の速さを見せるハントの走りはアイルトン・セナに通じるが、結局F1と言うのはこういった戦いが人気の源なのかもしれない。つまりそれぞれの走りはそれぞれの人生、人間性そのもので、彼等はサーキット場で己のアイデンティティを掛けた戦いを繰り広げているんだ。強烈なプライドのぶつかり合いとリスペクト、一見矛盾とも思えるこの関係には無条件に惹かれてしまう。

ラウダが事故で大やけどを負った治療中、ハントがレースで勝ち続ける姿がテレビに映る。焼けただれた顔、苦しい息の中、ラウダの目は恐ろしいまでの意志の力が宿っていた。そして僅か6週間でレースに復帰した彼はハントに言う。「俺が(病院のベッドの上で)命がけの闘いをしている時にお前の勝利を観たよ。それが俺をここ(レース)に戻してくれたんだ。」と。雨の中のレースを強行するように主張したハントのせいでラウダは瀕死の重傷を負った。しかし、その相手のおかげで自分はまたこうして戻ってこれた―。

ラッシュ プライドと友情2

なんとまあ濃い関係なのだろう。外から観ているだけでは決して窺い知れないこういった人間関係の深い部分、微妙な心の交わりがしっかり描かれているワンシーンだと思う。最近のF1は自動車メーカーがその技術力を終結したエンジンや、様々な電子制御機器、風洞実験によるマシン制作と、人間より技術が前面に出ている気がするけれど、やはり原点はこういうところにあるんだと実感した。

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ストーリー:性格もレーススタイルも相反するF1レーサー、ニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)とジェームス・ハント(クリス・ヘムズワース)が激しい首位争いを繰り広げていた1976年。ランキング1位だったラウダはドイツ大会で大事故に遭遇し、深いけがを負う。復活は無理だと思われたがわずか6週間でレースに復帰し、日本の富士スピードウェイでのシリーズ最後のレースに臨む。(シネマトゥデイ)