☆___________「財界」日本経済を斬る!!! -469ページ目

「病院再建請負人」の武弘道氏が未来医療研究所長に就任

 「十五年間で八つの病院の経営を担った経験を生かして、各病院の将来計画の作成や経営改善のためのアドバイザリー的な役割を担っていきたい」


鹿児島市、埼玉県、川崎市の病院事業管理者として公立病院の再建を果たしてきた武弘道氏が未来医療研究所の所長に就任した。



 2007年度末で任期を一年残して川崎市病院事業管理者を退任した武氏だが、今後は民間機関として「日本の医療をまともな方向に向かうように、分析・研究・提言をしていく」。



 自治体病院は08年7月現在、全国で973病院あり、06年度決算では5100億円の繰入金(補助金)を自治体からもらったにもかかわらず、1997億円という赤字の状況だ。


 武氏によれば、その原因は

①へき地医療・救急医療をはじめとする不採算部門を担っていること

②経営の在り方が官僚的で、効率が悪いこと

③病院の整理・統廃合の時期にきているのに、それが一向に進んでいないこと、

が挙げられるという。


 武氏は郷里の鹿児島市立病院で1993年から8年間にわたって病院経営を担い、在任中の決算は黒字を出し続けた。



 その後、埼玉県知事からの要望を受けて2001年から05年まで県立四病院の経営を担う。看護師副院長の誕生や薬品の共同購入や業務委託の見直しなどを通じて経営改善に着手した結果、四年間で70億円の収支改善を果たした。



 05年4月から川崎市病院事業管理者に就任した武氏は、全国でも最高水準だった保健看護手当などの特殊勤務手当を見直し、井田病院では土曜日外来の開始、川崎病院では救急センターを設置した。


 04年度末で約174億円の累積赤字があった二病院を就任初年度で黒字に転じさせ、計14億円の利益を出した。


「病院医療崩壊の危機を目前にした今、すべての病院人が将来について真剣に考え、病院の近未来を検討することが必要だ」

と武氏は語り、全国の病院が検討する将来構想の策定を手伝う考えだ。

事業好転、通期黒字化が見えてきたライブドア

 「以前は『ヤフーに追いつけ追い越せ』であらゆるネットサービスを提供していたが、ヤフーとライブドアでは経営資源の大小もあり、それではうまくいかなかった。そこで、少人数でもできることからやろうということで、注力するサービスを特化し、今はブログ、ニュース、携帯サービスで、ユーザーの支持を獲得しています」(ライブドア社長・出澤剛氏)


 2007年3月、旧証券取引法違反で有罪となったライブドア(現・ライブドアホールディングス)。今年7月にも、堀江貴文社長時代の03年から06年9月期までの四年間で、約13億円の所得隠しがあったことを東京国税局に指摘されるなど、未だ負の遺産に苦しむ同社。


 07年4月以降は、事業部門を分社化し、金融事業など非中核事業の売却を進め、現在は、インターネット事業、通販事業を中核とする持株会社として、再生を図っている。


 特に、前述した通り、インターネット事業を展開する事業会社「ライブドア」の業績は堅調で、08年9月期は売上高50億円、営業利益3億1997万円の見通しと、通期黒字化が見えてきた。


 トップページで一面広告を展開したり、ヤフーとは異なる情報源によるニュースを掲載したり、動画検索では中国の検索大手「百度」と提携するなど、独自性で勝負し、他社との差別化を進め、ポータルサイトとしての価値を高めてきた。


 最近では、強みであるブログサービスを活用し、マーケティング会社ブルーカレント・ジャパンと提携して、人気ブロガーによる、口コミ広告なども展開している。


 だが、HDで見てみると、08年9月期は、通販事業は1億円の営業赤字、その他事業は3億円の営業赤字となる見込み。また、フジテレビジョンや個人投資家、機関投資家から1500億円を超える多額の損害賠償等を請求されているなど、問題は山積している。


 そのため、07年12月には、通産省(現・経産省)出身で、産業再生機構や経営コンサルティング会社などで企業再生を進めてきた石坂弘紀氏が社長に就任した。石坂氏は弁護士免許も持っており、事業の再建と同時に、訴訟問題の解決も進めている。

念願のビール三位を手中にしたサントリー

 「当社ビール事業の目標は、シェアアップではなく、あくまでも事業として自立し、酒類事業の柱となること。順位に一喜一憂することなく、総市場が減少しているなか、まずは年初計画を確実に達成していきたい。七、八月はビール類の最需要期であり、ここが計画通りに推移すれば今年の黒字化も視野に入ってくる。少しでも早く黒字化を実現させたいと考えている」(サントリー常務取締役・ビール事業部長・相場康則氏)


 2008年上半期のビール販売量で、サントリー(佐治信忠会長兼社長)がサッポロを抜き3位に浮上した。また、総市場が前年比95.8%と低迷するなか、サントリーは110.8%と販売量を大きく伸ばした。このサントリーの躍進には、同社の戦略的値上げが背景にある。


 07年10月、業界に先駆けて、キリンビールが08年2月からの値上げを発表。その一カ月後の07年11月、アサヒビールが08年3月からの値上げを発表。そして、サッポロは08年4月、サントリーも業務用のビン・樽のみ4月からの値上げを発表した。


 キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーと、値上げが一カ月ずれ込む形となったのだが、この値上げスタート時期の違いが、ビール業界の勢力図を変えた。


 08年4月に発表された販売数量で、キリンのシェアは35.9%、アサヒは37.7%となった。07年度はキリンとアサヒのシェアは0.1ポイントの差。それが、値上げにより、1.1ポイントまで拡大したのだ。そして、4月からの値上げとなるサッポロとサントリーの両社はシェアを伸ばした。


 また、アサヒ、キリン、サッポロの三社は前年度比で出荷量が減少したが、サントリーは唯一、出荷量を増やした。


 この結果を見て、サントリーは、缶ビールの値上げを九月から始めることを4月9日に発表。食料品の値上げラッシュで、消費者がより価格志向に流れる傾向のある昨今、そのニーズをうまく捉え、売り上げを伸ばしていった。



 ザ・プレミアム・モルツで味と技術力を見せ、勢いをつけたサントリー。さらに戦略的値上げで、45年目にして、悲願のビール事業黒字化の実現が見えてきた