風のかたちⅡ -26ページ目
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これが「再チャレンジできる国」?直感的な意見

○ 最低賃金制引上げは賃金に見合う生産性を発揮できない労働者を失業させる


○ 労働者保護の色彩が強い労働法制は企業の正社員雇用を敬遠させる


○ 女性の権利を過度に強化すると雇用の手控えなどの副作用がある・・・


21日に明らかになった規制改革会議の「再チャレンジWG」の意見書の内容。

「全ての人々にやり直しの機会と希望を与え」という意見書冒頭の表現とは裏腹に、書かれていることは、小うるさい規制など廃止または縮小して、厳しい国際競争の中で企業が繁栄する条件整備をしましょう、と言っているだけと思える。


これを書いたであろう学者先生は、アメリカで身につけた経済理論のナイフを振り回してご満悦かもしれませんが、こういう言説(内橋克人さんは、権力を背景にした言説という意味で権説と仰っていました)がまかり通った後の日本社会の姿はどうなっているのだろうか。


経験的な直感で言わせてもらえば、「再チャレンジ」というWGのネーミングとは逆に、決して浮かばれない低収入の、何の保護もない勤労者群と繁栄する企業(特に大企業)という結果を生むのではないか。

繁栄するのは企業であって人ではない。大企業群の中に雇用を得た限られた人たちも、多くは死ぬほどに働いて雇用と生活を守ることに追われ、「ワークライフバランス」などとはほど遠い毎日をおくるのでしょう。

規制改革会議の意見書について 続きの続き

○ 女性の権利を過度に強化すると雇用の手控えなどの副作用がある・・・


今の日本の労働法制で「女性」に限った保護とか権利で、雇用の手控えにつながる恐れのあるものが残っているのか、不明な私には分からない。立派な研究者や行政機関がついている規制改革会議はその辺に抜かりは亡いはずだ。しかし、


「生理休暇」は残っているかもしれないが、これを強化したいという話は寡聞にして聞かない。「女性」であるゆえの深夜業等の労働時間に関する規制は「雇用」への影響がより大きいと思えるが、そうした規制は既に廃止されている。出産に係る産前産後の休暇は、厳密に言えば「女性」ではなく「母性」保護の規定だが、これを強化しようという話も聞かない。


とすると、現状では多くは女性が使っている権利、育児休業のようなことを指している、さらにいえば、ワークライフバランス施策という名で企業が工夫している様々の就労の方法(短時間勤務や時差出勤など)まで含めて「女性の権利を強化する」方策とみている、としか解しようがない。わんわん


少子化対策としてのワークライフバランス、仕事と生活の両立支援が政府方針として打ち出されているさなかに、真っ向から反対するとは、最低賃金引き上げを内容とする法案に反対する以上におかしな話だ。政府の中で両論を言わせてバランスを取ろうというのだろうか。それとも、福井某教授の独り爆発爆弾なのだろうか。それとも・・・。

規制改革会議の意見書について 続き

最低賃金を引き上げると、生産性が低い労働者が失業する、という規制改革会議の意見書に、少しだけ理屈を言いたくなる。目


現在の最低賃金では、生活保護給付に届かない地域が出ていることは既にかなり報道されているが、最賃引き上げに反対する「意見書」の主張は、生活保護との逆転現象をそのままにしておけ、額に汗して働くよりは国のお世話になって生きる方がいいと勧めているようなものだ。


こういう大胆なことをいうのだから、どの程度の最賃引上げがあると失業率がどう上昇するのかとか、真面目な推計をベースにした発言なのだろうと思いきや、意見書のどこを見てもその陰もない。


また、意見書の主張は、様々な勤労者グループの就業率の引き上げを、首相直結の成長力底上げ戦略構想会議が提起していることとも矛盾することになる。


わが国は、「生活保護」スティグマが欧米に比べて極めて強く、生活保護水準に達しない低賃金就労にもかかわらず、保護を申請しない人が少なくないと聞く。「意見書」はこうした「美風」も改革して、生活保護を受けることを勧めたいのだろうか。


確かに、最低賃金が企業にとって受入可能な水準であることは、実効性を確保するうえで大切だ(「研修生」という名の「労働者」に頼らなくては存続できないような企業まで含めるのかは疑問に思うが)。しかし、日本の企業や労働市場についての実証なしに、経済学のテキストの理屈をそのまま引いて最賃引上げに反対するとしたら乱暴なことだ。「意見書」の背後にいる福井氏が最近書き散らしている「学術的」装いをとった「権説」をみるにつけ、そういう乱暴をしてはいないかと不安になる。


ことは、国民の生活に関わる問題なのだから、経済学のテキストレベルの発想で論じられるくらい迷惑なことはない。

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