☆___________「財界」日本経済を斬る!!! -2ページ目

V字回復のパナソニック 下方修正のソニーと明暗

両社とも真の復活には道半ばの状態



「事業構造の転換が想定以上に進んでいる」──。

 パナソニック社長の津賀一宏氏は、4月28日の決算発表の場でこのように語った。



パナソニックは2014年3月期の連結決算で、売上高7兆7365億円(前年同期比6%増)、本業の儲けを示す営業利益は3051億円(同3・9%増)となった。為替や固定費圧縮の効果に加え、車載向け電池などの販売が好調。リーマンショック前の08年3月期並みの利益水準となり、V字回復を果たした形だ。



ただ、今期は消費増税による駆け込み需要の反動減や為替効果が前期ほど見込めず、「液晶パネル事業は今年度も赤字が残る」(津賀氏)。いわば、真の復活にはまだ道半ばの状態だが、今後はテレビなどの「B to C(消費者向け)」ビジネスから、住宅関連や車載用機器を中心とする「B to B(企業間取引)」に軸足を移して、(100周年を迎える)18年度に売上高10兆円を目指す。



一方、ソニーは5月1日、前期(14年3月期)の連結決算を下方修正(決算発表は14日)。ソニーは昨年10月、今年2月にも従来予想を修正しており、今回で3度目の下方修正となる。



パソコン事業の販売が予想以上に落ち込んだことや、同事業の売却に伴い追加の構造改革費用が発生することなどから、営業利益が260億円(従来予想は800億円)に、最終損失は1300億円(同1100億円)と赤字幅が拡大。パナソニックとの明暗が分かれた。



ソニーのエレクトロニクス事業は前期まで3期連続で赤字の見通し。

「B to B」に転換し成果を出しつつあるパナソニックに対し、あくまでも消費者がワクワクする商品づくりにこだわるソニー。しかし、今のところ、魅力ある商品づくりに成功しているとはいえず、ソニーの苦悩が続いている。



強いブランド力の取り込みへ 買収戦略を加速させるセブン


ニッセンやバーニーズなど、昨年12月だけで4件目



セブン&アイ・ホールディングスがM&A戦略を加速させている。



2013年末、同社は雑貨専門店「Francfranc(フランフラン)」を運営するバルスとの資本業務提携を発表した。今年1月中にバルスが発行する第三者割当増資を引き受け、50%弱の株式を取得。取得額は50億円程度とみられる。バルスの売上高は約300億円。かつては上場していたが、12年1月にMBO(経営陣による買収)で非上場になっていた。


セブン&アイ・ホールディングス社長の村田紀敏氏は会見で「以前から興味があったブランド。お客さまが求めるものをどう提供していくのか、今後は顧客との接点を数多く持つことがより重要になる」と語った。



フランフランは2030代の女性を中心に、デザイン性の高い雑貨商品の開発・販売で人気の店。今後はセブン&アイ・グループの百貨店やショッピングセンターに出店。これまで手薄だった雑貨店の強化を図り、集客につなげたい考えだ。



13年の12月に入って、セブン&アイのM&Aが相次いでいる。バルスの他にも、通販のニッセンホールディングスや高級衣料品店のバーニーズジャパン、岡山が地盤のスーパー・天満屋ストアに相次ぎ出資。ただ出資額は約300億円だから、財務的にはまだ余裕がある。



「まさか短期間でここまで急激に仕掛けるとは……」(イオン関係者)。M&Aで規模の拡大を図るのはライバル・イオンの代名詞でもあったが、そんなライバルをも驚かせる急速な買収劇。



セブン&アイは目下、既存のイトーヨーカ堂やセブン─イレブンなどのリアル店舗網とネットの融合を図る「オムニチャネル化」を進めている。同社はコンビニ頼みの構図が長年続き、グループの総合スーパーや百貨店は低迷が続いている。それだけに高いブランド力を持った店舗と協業することで、集客増を狙う考えだ。



ネットとの共存、そして、4月の消費増税にどう備えるかは、全ての企業にとって最大の課題。M&Aで傘下にした企業のブランド力を取り込み、事業基盤の強化を図る同社である。



上半期の視聴率で4冠を達成 開局55周年に向け勢い増すテレビ朝日

今期最終年度の経営計画を1年前倒しで達成



「編成の責任者だった2005年にプライムで2位になった手応えがあったので、それを再現すればトップになれるのではと考えていました」(テレビ朝日社長・早河洋氏)



12年度の平均視聴率で、ゴールデン(1922時)、プライム(1923時)、プライム2(2325時)の3冠を達成したテレビ朝日。今年上半期は全日(6─24時)でもトップに浮上し、4冠を獲得。勢いを増している。



テレビ朝日を変えたものは何か──。「09年社長に就任して、翌年から1年近くかけてグループ経営のあり方を議論した。そのプロセスに社員がかかわったことが大きい」と早河氏は語る。



社長対話集会や若手社員との飲み会、「ちい散歩」と称して職場をまわるなど、社員との意見交換を重ねていった早河氏。



そうして策定した『デジタル5ビジョン〈経営計画2011─2013〉』は「日本でトップグループのコンテンツ総合企業」になるための基盤整備という位置づけ。中身は「視聴率でトップを獲る、広告収入を上げるなどシンプルな経営目標」(早河氏)だが、1年前倒しでほぼ達成。



同社トップは、親会社・朝日新聞出身者が務めてきた。早河氏は初の生え抜き社長で、プロデューサーとして『ニュースステーション』を成功に導くなど、現場を熟知した人物。「編成も営業も総務も経理も互いに敬意を払い、『サンキュー』といえる環境づくり」にも力を入れてきた。そうした活動を通じ、社内の意見を吸い上げ、一丸となれる組織をつくったと言える。



14年2月には開局55周年を迎えるテレビ朝日。「うちの局は常にチャレンジャー。チャンピオンではない」(早河氏)と慢心せず、さらに上を目指すよう、社員に発破をかけている。