☆___________「財界」日本経済を斬る!!! -3ページ目

東芝やパナソニックが白物家電の国内増産を検討

背景には昨今の円安進行で日本向け輸出の採算が悪化



東芝やパナソニックといった電機大手が白物家電の国内生産増強を検討している。



東芝は現在、タイ工場で生産する電子レンジや電気ポットなどの調理家電の一部を国内生産することを検討中。6月25日に就任した東芝社長の田中久雄氏が新聞社向けのインタビューで答えたもので、昨今の円安進行で日本向け輸出の採算が悪化しているからだ。



同社は2009年に愛知工場(瀬戸市)で製造していた洗濯乾燥機やIHクッキングヒーターの生産を中国に移管するなど、2拠点ある国内製造拠点を1拠点に、3拠点ある国内開発拠点を2拠点に集約していた。


また、同社関係者は「来年の消費税率引き上げ前に駆け込み需要が見込まれるが、消費税が5%に引き上げられたときには冷蔵庫やエアコンなどの高価格品が売れた。今回も同様の動きになる」とも見ているようだ。



パナソニックでも白物家電の国内生産増強が検討されている。同社では、急速に円高が進んだ1990年代以降、白物の海外生産を増やしてきた。



社内カンパニーであるアプライアンス社が担当する洗濯機や冷蔵庫などの白物家電は、海外生産比率が約7割で、円安は減益要因。「1円の円安で年10億円強の減益。1ドル=105円を超える状況が安定すれば、国内、海外比率を同等にしなければならない」(同社関係者)。



パナソニックが国内生産比率を高める方向に動けば、白物としては二十数年ぶりとなる。



価格下落が激しい薄型テレビやDVDレコーダーなどのデジタル家電(黒物家電)に比べ、白物家電は値崩れがしにくい。そのため、各社とも近年、白物家電事業を強化。電子情報技術産業協会(JEITA)の調査によると、2012年の国内家電市場は、白物家電の出荷額が黒物家電を10年ぶりに上回り、〝白黒逆転〟などと言われた。



とはいえ、各社とも「長期的には、どんな商品も(消費地で作って消費地で売る)地産地消が理想」(電機業界関係者)。高付加価値の商品は日本で作ろうとも、低価格の商品は海外に生産を移管するという流れは変わりそうもない。



購買動向に変化の兆し「ちょっといいもの」を求める消費者

「料金が少し高くても他とは一味違う商品を」


流通や外食の売り場で値下げに頼らぬ価格戦略が出てきた。



その筆頭がコンビニエンスストアのPB(プライベートブランド=自主企画)商品だ。



例えば、セブン─イレブンが4月から発売を開始した『セブンゴールド 金の食パン』。1斤6枚入りで250円と、通常のNB(ナショナルブランド)の食パンより100円ほど高い。それでも発売から約2カ月半で720万食、当初計画の5割増しのペースで売れている。



また、札幌や博多の有名ラーメン店とタイアップして作ったカップラーメンも268円と、通常のNBに比べて100円ほど高いが、これも人気だ。



セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文氏は「安さに飽きたと言っては変だけれども、お客様は安さだけでは反応しなくなってきた。やはり、質のいいものも欲しいということで、PB商品は質を追求しているのです」と語る。



こうした傾向は外食業界でも同様だ。



「全皿105円」を謳っていた回転ずしチェーン大手の「あきんどスシロー」は従来より高い1皿189円のメニューをスタート。冷凍されていない国内産の新鮮なネタを使った商品を投入し、シャリを残す高齢者や2人で1皿2貫のすしを1貫ずつ食べる消費者に対応することで選択肢を増やす狙いだ。



また、300円をきる価格が主流だった牛丼業界でも𠮷野家が米国産牛の大判スライス肉を6枚使用する「牛カルビ丼」や1頭から約6㌔しか取れない希少な部位の肉を使う「ねぎ塩ロース豚丼」を販売開始する。


ある外食関係者は「低価格で販売されている商品の質に消費者が飽きたのではないか」と指摘。「料金が少し高くても他とは一味違う商品を求める傾向が出てきた」と話す。



現在、アベノミクスの効用か、景気回復に期待感は高まっているが、まだまだ賃上げは一部の企業に限られ、来年には消費税率引き上げも控えており、消費者の生活防衛意識はまだ高い。



それでも、普段の日常生活の中で「ちょっといいもの」を求めようとする消費者の意識が伝わってくる。



日本郵政社長に元東芝社長の西室氏「政府出資」で手足を縛られての船出


低収益体質で成長シナリオ描けず



日本郵政グループの新経営体制が6月20日発足、持ち株会社・日本郵政社長に就いた西室泰三氏(元東芝会長)は会見で「2015年秋をメドとする(日本郵政の)株式上場計画をできる限り前倒ししたい」と表明。



西室氏は傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命上場も「今年度中に道筋を付けたい意向」(関係筋)といい、停滞した郵政改革の再加速に強い意欲を見せる。



しかし、仮に安倍・自民党が参院選で大勝したとしても、政治に翻弄されてきた郵政改革がすんなり進む保証はない。政府出資の枠を外れ、新規分野への進出を確保するとしても、西室郵政が民営化を急げば、自民党内の政局に巻き込まれる恐れさえある。



とにかく、今の郵政は「低収益体質で成長シナリオが描けない」(大手証券幹部)。日本郵政の13年3月期の連結純利益は5627億円と民営化以降で最高だったが、傘下の各社の業績を詳細に見れば成長性の無さは歴然。日本郵便は郵便物取扱数減少に歯止めがかからず、稼ぎ頭とされる金融2社も低収益体質が鮮明だ。これも、元金融相の亀井静香氏らが「弱者救済」の名の下に、正社員化を進めてしまったが故の「負の遺産」。



ゆうちょ銀は三菱東京UFJ銀行の1・5倍以上の資金量を持つが、純利益は6割程度。かんぽ生命も日本生命保険の約1・7倍の総資産がありながら、純利益に当たる剰余金は半分以下。資金運用を低金利の国債に依存しているのが主因で、日本郵政は融資業務や保険新商品参入で現状打破を目指している。



しかし、金融2社の新規業務参入には、環太平洋経済連携協定(TPP)に絡んで米政府が「政府出資の日本郵政の業務拡大は、民業を圧迫する」と反対。金融庁も解禁に慎重姿勢だ。



さらに、日銀の異次元緩和で長期金利が上昇傾向にある中、金融2社が新規業務拡大で国債運用を減らせば「長期金利上昇リスクがある」(財務省筋)。



東芝社長・会長や東京証券取引所社長を務め、日米財界人会議議長など財界要職も歴任した西室氏の手腕が注目されるが、「旧郵政族」「米政府」「国債管理政策」と立ちはだかる壁は厚い。