☆___________「財界」日本経済を斬る!!! -5ページ目

スプリント買収に米当局が承認も素直に喜べないソフトバンク


当初は割安な中国メーカー機器で米国内での普及を狙ったが…



ソフトバンクによる米携帯電話3位スプリント・ネクステルの買収が確実になった。



中国・人民解放軍出身の創業者が起業した中国華為技術(ファーウェイ)など中国製の通信機器を排除したことでソフトバンクによる買収は、安全保障上の問題はないと米当局がお墨付きを与えた形だ。



米衛星放送大手のディッシュ・ネットワークはスプリントに対して、ソフトバンクを上回る金額での買収を提案したが、資金調達の目処が立たず、衛星放送と携帯電話のシナジー効果を明確には提示できなかった。


ただ、今回は米当局の介入によりソフトバンクが当初描いていた米国事業のシナリオの変更が余儀なくされた。ソフトバンクは、NECや富士通といった日の丸メーカーではなく、ファーウェイなどの安い基地局などを使ってコスト削減を進めた日本での成功体験を米国にも持ち込もうとしていたからだ。



そこで米当局は米国内で中国製機器を導入すれば米国の安全保障が脅かされるとして、阻止する動きに出たわけだ。



孫正義社長は米国でもLTEの本格展開に意欲を見せるが、スプリントが日米欧で一般的なFDDLTEを採用するのに対し、スプリントが完全子会社化を目指している米無線通信大手のクリアワイヤはTDLTEと通信規格はばらばら。



ソフトバンクは日本で「両方のノウハウを持つ」とはいえ、投資の分散は避けたい。中国移動通信(チャイナ・モバイル)や英ボーダフォンなどと共に普及を進めるTDLTEに集中したいのが本音だろうが、これも中国政府の後押しであることが気になるところ。



さらに、ソフトバンクの「生殺与奪の権」を握る米アップルの「iPhone」の新機種がTDLTEを採用するかどうかも不透明なままだ。



課題が多いソフトバンクの米事業だが、最大の懸念はスプリントを率いるダン・ヘッセ最高経営責任者(CEO)の存在。剛腕経営者で、どん底のスプリントを救った立役者だけにヘッセ氏の意向は無視できない。


孫社長の手綱さばきによっては対立の芽も出てきそうだ。



値上げの明治安田、値下げの第一・朝日 価格対応分かれる生保各社

貯蓄性商品は各社値上げの動き



4月からの「標準利率」引き下げで、生命保険各社の商品戦略に違いが出てきた。



標準利率は、10年国債の利回りを元に決められ、保険商品の運用利回り(予定利率)の目安となっている。標準利率が下がると、各社は保険金支払いに備えるための「責任準備金」を積み増すことが定められており、この原資を確保するためには保険料の値上げも必要になる。



明治安田生命は、「公平性の観点から、広く薄くご負担をいただく」(同社関係者)という方針で、貯蓄性商品を値上げ。



日本生命も「貯蓄性商品は市中金利と連動するので、今無理をすると、後で厳しくなる」(同社関係者)という方針で、商品のうち1割を値上げした。



だが、会社によっては、主力商品を値下げする動きもある。



第一生命も貯蓄性商品の値上げを行っているが、主力商品である「順風ライフ」という定期付き終身保険で20代から30代という若い世代を対象に値下げした。「これから保険に加入されるのは若い世代。月々の保険料の負担は重い」(同社関係者)というのが理由。



逆に高齢世代を対象に値下げするのが朝日生命。同社は介護保険など、シニア層向けの保険に注力しているが、「保険王プラスあんしん介護」という商品で、組み合わせ次第で60歳以上の新規契約者が値下げになる。



生保の業界環境を見ると、料金政策の重要性は増している。ネット生保や損害保険系生保などが台頭し、競争は激しい。さらに、運用の主力である国債は日銀の量的金融緩和で、さらに金利の低下が見込まれている。



これまでの「横並び」ではなく、他社との違いを鮮明にしなければ、競争に勝てない時代になっている。



営業利益4割減の武田薬品 大型買収が負担に

「過去の成功体験を過信」



武田薬品工業の前期営業利益が、近年にない低水準に落ち込んだ。スイスの製薬企業ナイコメッド買収(買収金額約1兆円)にかかわる費用やのれん償却費の増加に加え、グローバル製品の特許切れが打撃となった。一方で開発投資に見合う新薬の創製や国内営業体制の強化も課題として浮上、収益性の改善が経営上の最大テーマになっている。



予想される営業利益は、11年度の4割減となる1600億円。過去10年で最低となることが確実だ。ピークだった06年度の4585億円から見て、およそ3分の1のレベルにとどまる。売上高は1兆5500億円の見込みで、営業利益率も10・3%に低迷。他産業との比較ではまだ高いものの、高収益を誇る製薬産業の国内トップとしては、いかにも物足りない数字である。



その最大ともいえる要因は企業買収に伴う費用だが、もう一つは世界展開する大型品の減収だ。米国で昨年8月、糖尿病治療薬「アクトス」の特許が満了し後発品が参入。国内市場での不振も手伝って、前期売上高は11年度2962億円の5割程度に減少する。他の大型品も軒並み減収を余儀なくされている。



こうした状況を打開するには、新たな成長ドライバーが必要だ。しかし、国内の研究開発から生み出される新薬には、まだ高血圧や高脂血症といった生活習慣病関連が残る。世界規模の製薬企業には、がん領域をはじめとして医療上の満たされないニーズに応える新薬開発が求められるが、完全にはその軌道に乗りきれていない。これまで生活習慣病のコア領域で業績を牽引してきた武田だが、これら製品の収益性は、今後低下すると指摘されている。



「過去の成功体験からの脱却」「成功体験を過信していた」──。社長の長谷川閑史氏は、こうした発言を繰り返す。



国内市場では販売計画未達の主力品が目立つ。強力といわれてきた営業体制にもテコ入れが必要になりそうだ。中期経営計画では前期を営業利益のボトムとしているが、その後の上昇予測は緩やか。当面の目標は営業利益率20%台の確保。そこに向けてクリアすべき課題は少なくない。